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4章 三国鼎立

1年で情勢は大きく変化していた

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 義賢は、襄陽城の入り口で止められる。
 襄陽兵「怪しい奴め、名を名乗られよ」
 義賢「劉玄徳が弟、劉義賢が参ったと兄上に伝えてくれないか?」
 襄陽兵長「劉丁様!これは部下が失礼しました」
 義賢「気にしないでくれ。それに今の俺は民だ。お前たち国を守る兵に頭を下げさせて申し訳ない。兄上にお会いする事はできるか?」
 襄陽兵長「この一年で大きく変わりました。あの時、入ったばかりの俺がもう守備兵長です。劉備様は、劉丁様のことをいつも心配しておられるようでした。此度の来訪、さぞ喜ばれることでしょう。是非、お会いになってください。案内いたします」
 義賢「そうか。ありがとう」
 襄陽城内では、諸葛孔明と荀彧と劉備が議論を交わしていた。
 諸葛亮「関羽殿たちが華北に向かって一年と少しですか。未だ袁尚軍は耐えています。この機に、士燮が亡くなり孫堅を受け入れる事に反対をしていた士燮の子供たちが反乱を起こし、滞在していた孫堅たちの暗殺を画策。実行に移し、孫堅殿たちが殿を頼って、こちらに来られたのが先日のこと」
 荀彧「臥竜殿、私は元々、あなたの提唱する天下三分には反対しています。私は劉丁殿と天下二分を推していたので、ですが袁尚が耐えている現状を見て考えは変わりました。交州を得るために進軍するのが良いのは明白。それはわかっているのですが」
 劉備「孔明・文若の言いたい事はよくわかる。孫策殿のことだな」
 諸葛亮「えぇ。許貢と申す者が暗殺を図り、寝たきりになったという噂は聞いています。ですが、これは恐らく周瑜の策。孫策が傷を負って動けなくなったと吹聴することで、我らの出陣を促している」
 荀彧「士燮の子供たちと戦い疲弊した背後を突くつもりなのでしょう」
 劉備「全く、頭が痛い話だ。丁のしでかした事は大きく兵の回復に時間を要した。だが、得たものもあったのは事実だ」
 諸葛亮「えぇ。槃瓠族の王、槃李杏と魏延の婚姻を殿が取り持つ事で、取り込む事に成功したのは、今からちょうど半年前のこと」
 荀彧「まさか、臥竜殿の申すとおり、向こうから使者が来るとは思いませんでしたが」
 劉備「しかも丁が怒りを抱いた兵を全て受け持ってくれていたことも大きかった。全く孔明、お前は何手先を見通しているんだ?」
 諸葛亮「さぁ。どうでしょう。劉丁殿が上手いことやってくださったお陰で、成った策と言えるでしょう。それよりも今交州に関して、どうするかです」
 劉備「無論、頼ってきてくれた孫堅殿を無碍にすることなどできん。出陣はするつもりだ」
 諸葛亮「ですが、そうなると荊州の守りが薄くなるのも事実」
 荀彧「こんな時、関羽殿がいてくだされば、荊州を任せることができたのですが」
 劉備「仕方がない。雲長も今華北において、我らのために曹操軍の援軍として戦ってくれているのだからな。翼徳に任せるしかないか?」
 諸葛亮「張飛殿では周瑜にしてやられるかと」
 荀彧「えぇ、その事に関しては、私も臥竜殿に賛成です」
 劉備「こんな時、丁が居てくれれば翼徳と共に荊州の守りを任せたのだが」
 諸葛亮「劉丁殿は、軍規に基づき民へと降格処分としました。こちらから戻ってきてくださいでは、兵や将たちに示しがつきません。今はもう一度、劉丁殿が立ち直るのも待つしかないでしょう」
 荀彧「もう一年ですか。欠かさず行っていたヨシカタ塾にも顔を出さなくなり、引き篭もっているのでしたね」
 劉備「丁は、気負うところがある。愛馬である黝廉・桂陽兵・零陵兵ら蛮族に怨念を持つ兵5万を死なせた事で、心を壊してしまったのだ。左慈方士にも頼んだが、無理であった。だが、私はいつまでも丁を待つつもりだ。兄としてな」
 2人が頷いた静寂の刹那に扉を叩かれる音がする。
 劉備「誰だ?」
 襄陽兵長「劉備様にお会いしたいと申す方が参られております。如何致しますか?」
 劉備「今は議論の最中、少し外で待っててくれるように頼めるか?」
 襄陽兵長「了解しました」
 諸葛亮「いえ、すぐに通してください」
 劉備「孔明!?」
 諸葛亮「どうやら、我らにとって吉報のようですから」
 荀彧「まさか!?」
 劉備「!?すぐに通すのだ」
 襄陽兵長「はい」
 襄陽兵長に案内される形で、劉備にとって実に1年ぶりの再会となる愛しい弟である。
 劉備「丁!もう、身体は大丈夫か?」
 義賢「兄上、御無沙汰してしまい申し訳ありません。此度は勝手なお願いがあり、ここに参りました」
 劉備「どうした?まさかまだ」
 義賢「士仁・麋芳・張達・范疆の4人を俺に預けてください」
 劉備「どういう事だ?」
 諸葛亮「何を考えているのです劉丁殿?」
 荀彧「我が軍は今ギリギリの現状、4人の将を貸すなど。とても」
 義賢「俺は気付いたのです。今まで、身の丈に合わないことをしていた。軍師など俺には到底無理だった。ですが兄上を支えたい気持ちに今も変わりはなく、その気持ちに偽りは無い。だから俺は今度は一武将として、兄上の役に立つことを決めました。そのため、民から新たに始める俺の伍の面々に、彼らが欲しいのです」
 劉備「何を言っている丁?戻ってきてくれるのならお前の身分は、武将だ」
 義賢「それはダメです。俺は問題を起こして、民に降格された身分。身内だからと庇っては、それこそ兄上に仕える兵や将らに示しがつきません。俺は、1からもう一度始めたいのです」
 諸葛亮「殿、劉丁殿、いえ劉丁の申し出は最も。想いを汲むのが良いかと」
 荀彧「劉丁殿、いえ劉丁の申す事は正しい。殿がここですぐに武将に取り立てれば、周りのものは軍規に従わなくなります。今一度、挽回の機会を与えたという事にしましょう」
 劉備「致し方ない、か。では、丁よ。今一度、お前に挽回の機会を与える。そのものたちと共に兵士として、励むのだ」
 義賢「はっ。有難き幸せ。では、これにて」
 義賢は、劉備が許可を出すと直ぐに襄陽城を出て、董白たちが身を寄せている劉宏寺へと向かうのだった。
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