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3章 群雄割拠

張魯vs劉璋

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 漢中に劉璋軍の大軍が侵攻した。関所の防衛を任されたのは、張魯の弟であり将軍でもある武担当の張衛。そして、劉璋の兄である劉範・劉誕兄弟。申耽シンタン申儀シンギの兄弟。楊任ヨウジン楊昂ヨウコウの兄弟。袁約エンヤク杜濩トコ朴胡フコ板楯蛮ばんじゅんばんと呼ばれる五斗米道の信奉者である異民族たち。漢中の豪族で狩猟と薬草取りをしていた劉雄鳴リュウユウメイ。知恵袋である李伏リフク李休リキュウの兄弟。五斗米道を金儲けの道具として私腹を肥やす楊松ヨウショウ楊白ヨウハクの兄弟である。
 張魯「母上、一つ聞きたいのですが、どうして楊松と楊白の兄弟を最前線に?」
 張姜子「この機に五斗米道で私腹を肥やした馬鹿どもを処理しようかなってね」
 張玉蘭「母上、怖いです」
 張姜子「散々、私腹を肥やしたんだから最前線で、戦わせないと割に合わないじゃない」
 張魯「母上には、決して逆らいません」
 張姜子「フフフ」
 前線を任された楊松・楊白、楊松は、金にがめつく。楊白は、人を貶めることに長けていた。彼らの肥やしのために排除された人間は、数知れない。しかし、決定的な証拠という尻尾を出さない2人に張姜子は、頭を悩ませていたのだ。そんな時に劉璋軍の侵攻である。馬鹿な2人を平地で迎撃させて、門を固く閉ざして帰れなくする。寝返ったら寝返ったで、息子の張衛に殺すように命じている周到さであった。そんなこととは、露知らず楊松と楊白は、平地にて大軍である劉璋軍の迎撃を命じられて、困惑していた。
 楊白「兄上、もしや張姜子にバレたのでは?」
 楊松「あれだけ周到に隠蔽しているのだ。バレたとは思えん。まだまだ金を稼ぐためにここは言われた通りに迎撃するしかあるまい」
 楊白「いっそのこと劉璋軍に寝返って、門を開ける手伝いをした方が地位も手に入るかと」
 楊松「流石、ワシの弟だなぁ。悪い顔をしておる。そうするとしよう」
 劉璋君の大軍を捉えると2人は戦うことなく降伏し、門を開く約束をする。
 張任「待て、あれは使者だ」
 楊松「張魯軍の楊松と申します。敵対する意思はございません。このような大軍に勝てるわけもありません。降伏致します。この先を守る関は堅牢。我々が撤退を装うので、その隙に内部へと入り、落とすのが良いかと」
 張任「成程、それは良い考えだ。採用しよう」
 楊松「ありがとうございます」
 楊松と楊白との距離をあけ進軍を再開する劉璋軍。やがて関所へと辿り着く。
 楊松「劉璋君の勢い凄まじく、この通り撤退して参った。開けてくれぬか?」
 張衛「ハッハッハ、楊松よ。本当に母上が何も知らぬと思っていたのか?裏切り者を射殺せよ」
 劉雄鳴「お任せを」
 狩猟を生業としていた弓の名手である劉雄鳴の弓により、楊松と楊白は、討ち取られた。
 楊松「馬鹿な!逃げるのだ。ガハッ」
 楊白「兄上、アイツは劉雄鳴!クソッとても逃げきれん。ギャァ」
 劉雄鳴「フン。口ほどにもない。敵将楊松・楊白、劉雄鳴が討ち取ったり~」
 張衛「反乱分子の始末は、完了した。次は、侵略者の劉璋軍を追い払うぞ」
 張魯軍兵士「張魯様のために。巫女様のために。五斗米道の明日のために。うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 楊松や楊白が一向に帰ってこないので、痺れを切らし進軍した劉璋軍の前に楊松と楊白の死体と彼らの私兵の死体が転がっていた。
 張衛「遅かったなぁ侵略者ども。母上がかけた恩を忘れ進軍する賊ども。我ら五斗米道の贄となれ」
 張任「煩い、狂信者ども。劉焉様から受けた恩を忘れ、あまつさえ劉備などという逆賊に付く反逆者ども。成敗してくれるわ」
 劉範「勝手なこというじゃねぇか張任!」
 張任「劉範様?何故そこに?」
 劉誕「我ら兄弟がここにいる理由?知りたいなら教えてやる。者共、侵略者どもに矢を射かけよ」
 張任「どうなっているのだ!何故劉範様と劉誕様が我らに矢を射かける。皆の者、盾を高く掲げ矢から身を守り後退りで下がるのだ」
 劉範「流石、戦上手の張任だな。簡単には、いかねぇか」
 劉誕「おい、どうした。テメェらの中にも五斗米道の信者がいるだろ?良いのか我らが巫女様に牙を剥いて、今ここで武器を捨て、領地へと逃げるのなら罪には問わんぞ」
 劉誕の声を受け、一部の五斗米道を密かに信奉している兵士たちが我先にと離脱する。
 張任「えぇい。逃げるな逃げるでない」
 劉範「劉璋軍の兵よ。聞け。我が父、劉焉様は、巫女様から恩を受け、それに報いる形で、漢中の自治をお認めになったのだ。それをあまつさえ、我が愚弟の諫言に乗り、益州制覇などと恥を知れ。今引かぬのなら次は、確実に仕留めるぞ」
 劉範の言葉を受け、士気の下がった劉璋軍兵士の一部が逃げ出した。
 厳顔「やはり、こうなったか。劉焉様は、和を持って接していた。こんな強引なやり方で、攻め取れるはずもなかったのじゃ。張任よ。ここは引くしかあるまい」
 張任「ジジイが泣き言言ってんじゃねぇ。帰りたいならお前も帰るが良い」
 厳顔「聞かんか若造。もう知らん。ワシは帰るぞ」
 厳顔は、郷里へと帰った。
 張任「日和ったジジイが。我らの殿は劉璋様。劉範と劉誕が張魯軍に寝返ったのなら討ち取るまで」
 劉璋軍兵士「本当に劉範様や劉誕様と戦うのか。俺は嫌だぜ」
 張任「よもやここまで士気が低下していようとは。少し下がり睨み合いをするしかあるまい」
 関での睨み合いが1年経った頃、劉備と曹操が和睦したとの情報が益州にも届き。劉璋軍は、何の成果も得られず引くこととなる。
 張任「クソ狂信者どもめ。どうやって劉範と劉誕を誑かしたかわからぬが次は、張魯の首を取ってやる。全軍撤退だ」
 張衛「皆の者、みよ。大軍が五斗米道に畏れを抱いて逃げていくぞ。者共、我らの勝ちだ」
 漢中の守護神と称される張衛の圧勝であった。しかし、此度貢献が高かったのは、劉璋の兄である劉範・劉誕兄弟の尽力であろう。私腹を肥やすゴミも掃除した。張魯は、楊松と楊白が蓄えていた財を押収するとそれを国民に還元する。ますます、五斗米道の信奉者が増えることとなった。
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