死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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 灯蟲が僅かな明かりを照らす仄暗い地下の座敷牢。

 そこで姫雛は自分の処罰を待っていた。


「姫雛さん」

「·················」


 姫雛と話す為に結は繋に頼んで地下牢まで連れてきてもらった。

 姫雛はチラリと結達を見ただけでふぃっと顔を背けた。


「·····ごめんけど姫雛さんと二人きりで話してもいい?」

「ダメに決まってるだろ」

 お前に何かあったらどうするんだ?と、繋が心配するが

「大丈夫だよ」

 この座敷牢は特殊な札を貼られていて妖気を使う事が出来ないから。

「お願い」

 何かあればすぐに呼ぶから。


「···········わかった」


 直ぐ近くで待機していると繋は言い、その場から離れて行った。




 さて、何処から話せばいいか。

 決まっている。



「はっきり言うね」



 自分は繋に恋心を抱いている。
 自分の気持ちに正直になった事を姫雛に伝えた。


「·····お前に····っ!」


 お前にその資格は無い。
 想い人と繋を重ねて繋を利用して寂しさを紛らわしているだけだと姫雛は結に言う。

 姫雛も繋の事をずっと慕っていた。


 だからこそ突然ぽっと出の結の事を認められないだけでなく繋を利用している事が何よりも許せなかった。


「····初めは」


 姫雛の言う通りどうしても縁と繋を重ねてしまう時があった。

 繋の方が大人びているが、顔も声も時折見せる仕草も表情もあまりにも似ていて戸惑う事もあった。

 一緒にしてはならない何度も思った。

 繋に惹かれているのは縁に似ているからだと。
 自分の勘違いだと何とも言い聞かせていた。


 けれど

「繋は繋。縁は縁····」


 いつしか二人は別物だと思う様になっていた。
 きっかけはなんだったのかは分からない。

 縁を想いながら繋を好きになる事は二人に申し訳ないと思った事もある。

 けれど





「私がその人なら結の幸せを一番に考えるよ」




 ムギのその言葉に救われた。



 本当に縁がそう思ってくれるかは分からない。
 ただ、己が縁の立場ならムギと同じ事を思うと結は思った

 だから、自分の気持ちに正直になろうと思った。


「アンタは···っ!」

 妖と違って寿命も短いし何より元の世界に帰りたがっている。
 今もその方法を探しているのに繋に恋をした。

 その矛盾した心のまま繋を振り回そうとするなと、姫雛は叫ぶ。


「仕方ないじゃない!繋の事好きになっちゃったんだから!!」

 若さゆえなのか矛盾していてもその気持ちを抑えられる心をまだ結は持ち合わせていない。




 好き。



 ただ、その気持ちに正直になるくらい個人の自由である。



 その気持ちを相手に伝えるかどうかはまた別の話だ。
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