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四
十
しおりを挟む「じゃあ、あの娘好きな様にしちゃって」
結を閉じ込め鍵を目の前の西洋妖怪に渡した姫雛はさっさと帰ろうとする。
怪我でもして襲われたふりをして屋敷に帰って繋に事情を説明。
結とは会っていない事を伝える。
実際に自分一人が飛んでいく姿を町の住人の誰かは目撃しているだろう。
三番町は他の番地と比べれば人気が少なくて目撃者もいない。
「姫雛さんよぉ····あんた、何言ってんだ?」
西洋妖怪のトカゲの姿をした男がニタリと笑う。
「あの娘だけで俺らが満足すると思ってんのか?」
「は?」
人間だからと言ってあんな小娘一人で満足するわけがないだろう。
「····冗談でしょ?」
「冗談に見えるか?」
姫雛の周りにいつの間にか影に隠れていた男達が囲む。
「·········チッ」
多勢に無勢。姫雛は分が悪いと翼を広げて空を舞う。
「逃がすかよ!」
蝙蝠の羽を持つ男が飛び姫雛を追う。
「っ!着いてくるな!!」
姫雛は自分の羽の一部を鋭利な刃物に変えて後ろを着いてくる男に向かって飛ばすが
男は難なくそれを避け····
「つ~かまえたァ~」
姫雛の首を掴んでそのまま落下した。
--------
「どこに行ったのかなァ?」
「追いかけっこの次は隠れんぼか?」
ケタケタ笑う不気味な声。
急いで逃げ込んだ部屋の棚の中に静かに身を潜めて男達が通り過ぎるのを待つ。
此処を通り過ぎて、窓のある場所からどうにか脱出して、せめて人が居る場所まで逃げなければ捕まる。
「どぉこぉおだァァ?」
「見つけたヤツから好きなところに突っ込もうぜ」
「俺はまずあの肉を味見してぇなぁ~···」
腕から食うか、柔らかな胸もいいな。
排水溝の水が流れるような声で話す三人が近くに来た事で結の震えは止まらない。
早く此処を通り過ぎて。
気付かないで早くどこかに行って。
お願いだからと神に祈るように結はギュッと目を瞑り両手を握り締めた。
-----ガラッ
「そんな狭い所に隠れて逃げられるの??」
「·····き·····」
療養所の一室から廊下にかけて結の叫び声と男の楽しそうな笑い声が響き渡った。
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