死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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 この不思議な世界に来て少し分かった事がある。

「自然エネルギーを使って生活してる上に人間なんかよりも力も体力も速さも桁違い······」

「人間って脆弱なんだね」

 妖力も神力も使えない人間は妖との共存が出来るのだろうかと疑問に思う。


 機械なんてない生活。
 街の街灯は灯蟲と言う光る虫をカゴの中で飼って光らせている。

 昼間に見る灯蟲は大きなてんとう虫の見た目で夜には羽が光る。

「便利な虫がいたもんだぁ····」

 自分よりも役に立っている虫に結は項垂れる。

「結にもできる仕事あるよ」
「あるある!」

 座敷童子達が自信満々に言ってくる。
 自分にも出来ることがあるなら是非とも知りたいと結が興味を示せば

「「長との閨事!」」

「····ねやごと?」

 閨事の意味を知らない結は首を傾げる。

「長の相手をする事だよ」
「きっと結も長の事好きになるよ」

「ふぅん·····」

 お酌の相手をする事だろうか?
 理解をしていない結にムギは言っていいものだろうかと苦笑いだった。







 ------






「出来そうなものはあったか?」

 長の部屋に呼び出されて仕事場に結があう場所はあるのかと聞かれた。

 はっきり言ってどの雑用も自分では役不足でむしろ邪魔をしているだけだった。


「仕事がねぇんじゃ給料すらやれねぇぞ」

 働かざるもの食うべからず。
 現実的なその言葉が結の首を絞める。

「····あ、でもさっき座敷童子さん達から私にも出来る仕事があるって····」

「ほぅ。どんな仕事だ?」

 座敷童子からの助言。
 こんなか弱き生き物に合う仕事があるのなら是非とも聞いてみたいと繋は耳を傾けた。


「何か〝閨事〟って長さんの相手をする仕事なら出来るって····」

 結のその言葉に思わず繋は吹き出し激しく咳き込んだ。

「大丈夫ですか?」

「···ぉま····閨事の意味知ってて言ってんのか?」

「····お酌したり話し相手になったりって事ですよね?」




 違う。



「閨事って言うのはだな····」



 繋は閨事についてどう言う事なのかを説明した。
 すると、結の顔がみるみる赤くなり


「エッチ!助平!!変態!!!」


 大声で怒鳴って逃げるように部屋から出ていった。



「············俺···悪くなくね?」




 一人取り残された繋の声だけが虚しく部屋の中で聞こえた。



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