死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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 陸に降ろされた結は手がかりすら失い茫然自失となっていた。

「出来るだけ火ノ神様々に謁見出来るようにたんでみるから」

 そうは言ってもいつになるか分からない。この世界の食べ物を口にした上でここに来た時の神社すら見当たらない。

 帰る保証なんて何処にもない。

「まぁ、でもこの世界も悪くないと思うよ?」

 人間を喰らう妖怪もいるのにか?


「私達が護るから大丈夫だよ」

 これでも妖怪の中では強い方だからとムギは言う。

「町には俺の屋敷のもんだから手を出すなって御触れも出しておく」

 一人で町の外にさえでなければ危険はない。出てしまえば保証は出来ない。


「温泉と飯しか自慢出来るもんがねぇ町だが住むには悪かねぇと思うぞ」

 どんなに絶望しても帰ることは出来ないのだから帰る手がかりが見つかるまでは此処での生活を強いられる。

 それにしてもだ。


 この二人は人間である自分にどうしてこうも親切にしてくれるのだろうか。

 繋に関してはセクハラ的な事はされたが、それでも人間である結に親切にしてくれる。

「困ってる人がいたら種族関係なく助けるのが町の長の勤めでしょ?」

 結の疑問にムギが笑顔で答えた。

「後、長好みの可愛い娘だと尚更」

「ムギ?一言多いぞ?」

 この町の長は女たらしなんだろうなと結の繋に対する印象は此処で決まった。









 -------








 町に戻りこれからの結の生活について話し合う。


 とりあえずは働かざる者食うべからずという言葉の通り、生活をするにあたって結には繋の屋敷で働いて貰うことになるのだが····。



「何ができんだ?」

 料理は母の手伝い程度。
 裁縫は得意ではない。
 掃除は·····


「掃除機とかあれば···?」

「掃除機?」


 掃除機って何だ?と、聞かれた。
 この世界には掃除道具は雑巾と箒やハタキしかないらしい。

 風呂もシャンプーやトリートメントなどはなく粉石鹸のようなものだった。
 ただ、驚く程に髪は滑らかになったのには感動した。

「マジで何ができんだ?」

「まぁ、一度やってみれば分かるんじゃない?」

 ムギの言う通り、一通りの雑用をやらせてみようと洗濯をさせてみたのだが·····


 世界の住民の仕事の仕方は人間には難しい。

 洗い物は全て手洗い。それは問題ない。

 ただ、妖気を使って河童が泡洗いをして手で絞り干す。
 そのスピード感と握力が人間には無理だった。

「片手で絞ってる·····」


 両手で絞っても脱水出来なかった結はただ仕事の邪魔になっただけだった。
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