妹のプレーしてた乙女ゲームの攻略対象に転生してしまった俺。

１６

「・・・オスカー様」

「ん？」

BBQの野菜を切っていた俺はルノアに声をかけられて、手を止める。

「あの、ナイ様は、起こさないほうが・・・・」

「ナイ！！！！起きるにゃん！！！！！」

ルノアの声をかき消すように、ネロさんがうっつぷせて寝ていたナイの耳元で叫ぶ。

「・・・うっせええ！！！！！」

おまえもうるせえわ。

それとは違い、ルノアはきょとんとする。

「ネロさん、寝かせておいた方がよかったのでは・・・？」

ネロさんは豪快に笑う。

「まさか！なーんにも準備してない奴は、ご飯抜きにゃん！」

奴って・・・

思わぬ度胸に、少し感心する。

ナイは、むっとした表情を作った。

「誰か、ニンニク持ってこい。猫はニンニク嫌いだ」

詳しいなおまえ。

「ネロは、猫じゃないもんねー」

そんな会話を聞きつつ、俺はとっとと野菜を切る。

ナイの分も切ったから、大変だ。

殿下は隣で火の準備をしていて、ノアさんは、肝試しの準備に行った。

班で一人、行かなくちゃならない。

本人は嫌がっていたけど、じゃんけんで負けてしまったのだ。お気の毒に。

隣にノアさんがいない殿下は、それはそれはさびしそうに・・・・見えない。

「オスカー様。手伝います」

「あ、さんきゅー」

ルノアは隣に来て俺の前に置いてある野菜を切り始める。

「オスカー様、家事ができるなんてすごいですね」

俺は、あーと口ごもる。

前世では、親が遅いとき、彩菜と二人で料理はしてた。

途中から彩菜に任せっきりで、切るぐらいしかできないが。

「まあ、切るだけだし？」

適当に言うと、ルノアはくすっと笑う。

やけに笑顔がまぶしかった。

「野菜、切り終わったかな？」

殿下に聞かれ、俺とルノアはうなずく。

「じゃ、焼いていこうか」

俺たちは火の回りを、椅子で囲み、BBQの開始だ。



「殿下・・・！遅くなってしまって申し訳ありませんっ」

何が申し訳ないのかわからないが、ノアさんが走りながらこちらへ駆け寄ってきた。

開いてる椅子を殿下の隣に引っ張って、嬉しそうにしている。

どこまで、殿下が好きなんだ、この人。

それにはお構いなしでこっちはこっちで楽しめばいい。

俺は炭火の前でお肉を焼く。

ルノアが慌てたように駆け寄ってきた。

「オスカー様、すみません。焼くの手伝います」

俺はやんわりと断らせてもらった。

「いや熱いし座ってなよ。あ、これ焼けたし食べてみる？」

割りばしで着られた肉をつまんでルノアの前に差し出す。

「へっ」

するとルノアは少し赤くなった。

やっぱり火の前は熱いらしい。

少しためらってたが、ルノアはパクっと食べる。

そして笑みを浮かべた。

「とっても美味しいです！私、これ持って行きますね」

手伝わなくていいのにと言っても聞かずに、お肉をお皿に乗せて机に運ぶ。

どこまでもいい子だなぁと思って焼いていたら、後ろからぬっとネロが現れた。

「うわびっくりしたー」

ネロはくすくす笑う。

「もーオスカーったら女たらしだにゃん。あーんなんてしちゃって」

そしてバチンとウィンクしてルノアのところへ行き、お肉を食べ始める。

それ伝えるためだけに来たのか。

呆れつつネロの言葉を思い出す。

あーんって・・・あ、やべぇ。これか。ルノアが躊躇してた理由は。

・・・たしかに恋人でもない男女でするのはおかしいか・・・。

「ナイ」

俺ははふはふと食べているナイを呼ぶ。

「はんはお。いははへへるほひ（なんだよ。今食べてるのに）」

俺はとんぐとはさみを押し付けてやった。

「はんだよ突然？まあいいけど」

俺は振り向かずに答えた。

「熱くて」

「食べたいとかじゃなくて？相変わらず変だなオスカー」

後ろでなにやらほざいてることなんて気にせず、熱を冷まそうと炭火から離れる。

なかなか冷めなかったけど。