29 / 83
一人暮らし先
第二十九話
しおりを挟む
小鳥遊とちょっとしたすれ違いが起こったあの金曜日から一週間後。
俺は約一カ月ぶりに小鳥遊の一人暮らし先を訪れた。
リビングに足を踏み入れた俺は、「あれ?」と鼻をひくつかせる。
「タバコのにおい……しない」
前回訪れたときには、喫煙所のようなこびりついたヤニの匂いが漂っていたはずだが。
今はその代わりに淡いアロマの香りが部屋を包んでいる。
「おい。なんかすげー良い匂いすんだけど」
「先週買ったんだ。良いアロマ」
「アロマもだけど……。なんでタバコのにおいしねえの?」
「ああ、まあ……」
小鳥遊はなぜかムスッとした表情で、早口で言った。
「お前がタバコ臭嫌がってたから」
「ん?」
「タバコのにおいを取るのに一カ月かかった」
そう言い捨て、小鳥遊は逃げるようにベランダに出た。外でタバコを吸いはじめる。
俺もベランダに出て、小鳥遊の隣に立った。
「お前、この前まで部屋の中でタバコ吸ってなかった?」
「そうしたらまた部屋のタバコ臭取れないだろう」
「……もしかして、一人のときも外で吸ってたの?」
「そうしないと取れないからな、タバコ臭」
「……」
なにこの人。
俺が一言「タバコくさい」って言ったからって、ここまでしてタバコ臭取ろうとするの?
自分の部屋なのに、吸いたいときにタバコ吸えないなんて嫌じゃなかったのか?
お前、なんでそこまで――
「~~……っ。おいっ、やめろよそういうのっ……!」
「ん。なんだ急に大声上げて。近所迷惑だからやめろ」
「お前バッ……、俺の気も知らずに、バッ……!!」
「うるさいな……」
こいつ俺のことどうしたいの!?
ねえ、俺はどうしたらいいんですか!?
こっ、こんなことされてっ、惚れないヤツいる!?
しかも部屋の中にはまた作りすぎた料理の山がテーブルに並んでいるんですが!?
「おっ……」
「お?」
「俺をっ……これ以上甘やかすのをやめろっ……!!」
「別に甘やかしているつもりは……」
「おっ、俺っ、帰る!!」
「は? どうしてだ。タバコ臭まだ残ってたか?」
「残ってないからだよっ!!」
「アロマの香りが気に入らなかったか」
「とても好みの香りだよバカッ!!」
だからそのホッとして柔らかい表情になるのをやめろ!!
「だったら帰る必要ないだろう。ほら、さっさとメシ食ってベッドで暴れるぞ」
「くそっ……!! 至れり尽くせりしやがって……!!」
「どうして怒られなきゃいけないんだ。素直に感謝しろ」
食事をしている最中に、給湯器から電子音声が鳴った。
《お風呂がわきました》
俺は思わず給湯器の方向に目をやった。
「え? 風呂溜めたの?」
「ああ」
「めずらし。いつもシャワーなのに」
「逆だ。いつも湯船に浸かっているけど、お前がいるときだけシャワーで我慢していたんだよ」
「そうだったんだ。そういえば俺、全然湯船に浸かってないな……」
小鳥遊の目じりが下がる。
「一緒に入るか?」
「ふぇっ……」
「せっかく溜めたんだ」
小鳥遊と、一緒に、風呂?
「嫌か? だったら俺はゆっくり一人で浸かるから、お前は隣でシャワーでも浴びてろ」
「は、入るっ」
「そうか」
小鳥遊ってあんがい表情に感情出るよな。嬉しそうな顔してさ。そんなに俺と風呂入りたかった?
何度も裸を晒してきたはずなのに、今日は服を脱ぐのが少し恥ずかしかった。
浴槽にはすでに小鳥遊が気持ちよさそうに浸かっている。浴室のドアから顔を覗かせている俺に気付いた小鳥遊は、「早く来い」とでも言いたげに手招きをした。
「……」
俺はゆっくりと湯船に体を沈め、小鳥遊の胸を背もたれにして座った。
「っ……」
うしろからそっと抱きしめられる。うなじに唇が落とされ、俺の体がピクッと反応した。
「……なんかこれ、やばい……」
「そうか? いつももっとやばいことをしていると思うが」
「こっちのほうがやばい……」
これはキスと同じで、性欲処理では片づけられないことだ。
こんなことをしたら、また俺の気持ちが不本意にも膨れ上がってしまうだろう。
「んっ」
小鳥遊の指がツンと俺のペニスに触れた。
「ちょっと勃ってるな」
「う、うるさいな。お前だってガチガチなの気付いてんだからな……」
「そりゃお前。一緒に風呂入るだけでそんな緊張されたら興奮もする」
まるで処女みたいじゃん、と小鳥遊が俺の耳元で囁いた。
小鳥遊は俺のペニスを弄びながら尋ねる。
「誰かと一緒に風呂入ったことないの?」
「……」
……あるよ。あのときは毎日一緒に入っていた。
俺は質問に答えず、振り向いて小鳥遊の首に腕を回す。
「そんなこと、どうでもよくない?」
「……そうだな」
小鳥遊が俺のあごの下に指を添え、そっとキスをした。
湯のあたたかのせいだろうか。いつもよりすぐに鼓動が速くなり、頭がぼんやりしてくる。
「っ!」
スリ……と小鳥遊のペニスが俺のペニスを擦った。
小鳥遊は二人分のペニスを手のひらにおさめ、ゆっくりと動かし始める。
「んっ……小鳥遊……っ」
「ん?」
「それっ……ちょっと……」
「なんだ」
「興奮するからやめて……っ」
「興奮するならやめない」
ペニスを擦られながら、口の中を掻き回される。
「あっ……っ、んっ……、んんっ……」
「いつもより甘い声出てる」
「もっ……だめ、出そう……っ」
「早。興奮しすぎ」
「止めて……っ、お湯汚れるっ……」
「いいだろう別に」
「あっ、だめだってっ……、あ、あっ……んんっ……!!」
やってしまった。湯船の中で射精なんて……!
俺は飛び上がり、慌てて浴槽から出た。
「う、うわああ……!! おいっ、早く出ろっ、汚いぞ!!」
しかし小鳥遊はどこ吹く風で、まったり湯船に浸かったままだ。(ペニスも勃起させたままだ)
「月見里の精液風呂。肌によさそうだ」
「気持ち悪いこと言うんじゃねえよ!! さっさと出ろぉ!!」
俺がどれだけ騒いでも、小鳥遊は湯船から出ようとしなかった。
俺は約一カ月ぶりに小鳥遊の一人暮らし先を訪れた。
リビングに足を踏み入れた俺は、「あれ?」と鼻をひくつかせる。
「タバコのにおい……しない」
前回訪れたときには、喫煙所のようなこびりついたヤニの匂いが漂っていたはずだが。
今はその代わりに淡いアロマの香りが部屋を包んでいる。
「おい。なんかすげー良い匂いすんだけど」
「先週買ったんだ。良いアロマ」
「アロマもだけど……。なんでタバコのにおいしねえの?」
「ああ、まあ……」
小鳥遊はなぜかムスッとした表情で、早口で言った。
「お前がタバコ臭嫌がってたから」
「ん?」
「タバコのにおいを取るのに一カ月かかった」
そう言い捨て、小鳥遊は逃げるようにベランダに出た。外でタバコを吸いはじめる。
俺もベランダに出て、小鳥遊の隣に立った。
「お前、この前まで部屋の中でタバコ吸ってなかった?」
「そうしたらまた部屋のタバコ臭取れないだろう」
「……もしかして、一人のときも外で吸ってたの?」
「そうしないと取れないからな、タバコ臭」
「……」
なにこの人。
俺が一言「タバコくさい」って言ったからって、ここまでしてタバコ臭取ろうとするの?
自分の部屋なのに、吸いたいときにタバコ吸えないなんて嫌じゃなかったのか?
お前、なんでそこまで――
「~~……っ。おいっ、やめろよそういうのっ……!」
「ん。なんだ急に大声上げて。近所迷惑だからやめろ」
「お前バッ……、俺の気も知らずに、バッ……!!」
「うるさいな……」
こいつ俺のことどうしたいの!?
ねえ、俺はどうしたらいいんですか!?
こっ、こんなことされてっ、惚れないヤツいる!?
しかも部屋の中にはまた作りすぎた料理の山がテーブルに並んでいるんですが!?
「おっ……」
「お?」
「俺をっ……これ以上甘やかすのをやめろっ……!!」
「別に甘やかしているつもりは……」
「おっ、俺っ、帰る!!」
「は? どうしてだ。タバコ臭まだ残ってたか?」
「残ってないからだよっ!!」
「アロマの香りが気に入らなかったか」
「とても好みの香りだよバカッ!!」
だからそのホッとして柔らかい表情になるのをやめろ!!
「だったら帰る必要ないだろう。ほら、さっさとメシ食ってベッドで暴れるぞ」
「くそっ……!! 至れり尽くせりしやがって……!!」
「どうして怒られなきゃいけないんだ。素直に感謝しろ」
食事をしている最中に、給湯器から電子音声が鳴った。
《お風呂がわきました》
俺は思わず給湯器の方向に目をやった。
「え? 風呂溜めたの?」
「ああ」
「めずらし。いつもシャワーなのに」
「逆だ。いつも湯船に浸かっているけど、お前がいるときだけシャワーで我慢していたんだよ」
「そうだったんだ。そういえば俺、全然湯船に浸かってないな……」
小鳥遊の目じりが下がる。
「一緒に入るか?」
「ふぇっ……」
「せっかく溜めたんだ」
小鳥遊と、一緒に、風呂?
「嫌か? だったら俺はゆっくり一人で浸かるから、お前は隣でシャワーでも浴びてろ」
「は、入るっ」
「そうか」
小鳥遊ってあんがい表情に感情出るよな。嬉しそうな顔してさ。そんなに俺と風呂入りたかった?
何度も裸を晒してきたはずなのに、今日は服を脱ぐのが少し恥ずかしかった。
浴槽にはすでに小鳥遊が気持ちよさそうに浸かっている。浴室のドアから顔を覗かせている俺に気付いた小鳥遊は、「早く来い」とでも言いたげに手招きをした。
「……」
俺はゆっくりと湯船に体を沈め、小鳥遊の胸を背もたれにして座った。
「っ……」
うしろからそっと抱きしめられる。うなじに唇が落とされ、俺の体がピクッと反応した。
「……なんかこれ、やばい……」
「そうか? いつももっとやばいことをしていると思うが」
「こっちのほうがやばい……」
これはキスと同じで、性欲処理では片づけられないことだ。
こんなことをしたら、また俺の気持ちが不本意にも膨れ上がってしまうだろう。
「んっ」
小鳥遊の指がツンと俺のペニスに触れた。
「ちょっと勃ってるな」
「う、うるさいな。お前だってガチガチなの気付いてんだからな……」
「そりゃお前。一緒に風呂入るだけでそんな緊張されたら興奮もする」
まるで処女みたいじゃん、と小鳥遊が俺の耳元で囁いた。
小鳥遊は俺のペニスを弄びながら尋ねる。
「誰かと一緒に風呂入ったことないの?」
「……」
……あるよ。あのときは毎日一緒に入っていた。
俺は質問に答えず、振り向いて小鳥遊の首に腕を回す。
「そんなこと、どうでもよくない?」
「……そうだな」
小鳥遊が俺のあごの下に指を添え、そっとキスをした。
湯のあたたかのせいだろうか。いつもよりすぐに鼓動が速くなり、頭がぼんやりしてくる。
「っ!」
スリ……と小鳥遊のペニスが俺のペニスを擦った。
小鳥遊は二人分のペニスを手のひらにおさめ、ゆっくりと動かし始める。
「んっ……小鳥遊……っ」
「ん?」
「それっ……ちょっと……」
「なんだ」
「興奮するからやめて……っ」
「興奮するならやめない」
ペニスを擦られながら、口の中を掻き回される。
「あっ……っ、んっ……、んんっ……」
「いつもより甘い声出てる」
「もっ……だめ、出そう……っ」
「早。興奮しすぎ」
「止めて……っ、お湯汚れるっ……」
「いいだろう別に」
「あっ、だめだってっ……、あ、あっ……んんっ……!!」
やってしまった。湯船の中で射精なんて……!
俺は飛び上がり、慌てて浴槽から出た。
「う、うわああ……!! おいっ、早く出ろっ、汚いぞ!!」
しかし小鳥遊はどこ吹く風で、まったり湯船に浸かったままだ。(ペニスも勃起させたままだ)
「月見里の精液風呂。肌によさそうだ」
「気持ち悪いこと言うんじゃねえよ!! さっさと出ろぉ!!」
俺がどれだけ騒いでも、小鳥遊は湯船から出ようとしなかった。
473
あなたにおすすめの小説
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる