【完結】【R18BL】男泣かせの名器くん、犬猿の仲に泣かされる

ちゃっぷす

文字の大きさ
20 / 83
トラブル

第二十話

しおりを挟む
「ん……はっ! えっ、今何時!?」

 うっかり小鳥遊の腕の中で眠ってしまったようだ。
 俺は目が覚めるなり飛び起きた。時計は午前二時を指している。

「うわー……。ごめん小鳥遊……俺放って帰ってよかったのに」

 小鳥遊から返事がない。目をやると、小鳥遊は渋い顔でスマホを眺めていた。

「あれ……。ちょっと待て。それ、俺の私用スマホ……」
「……通知がうるさかったから電源を切ろうとしたんだ。だが……」

 小鳥遊はスマホ画面をこちらに向けた。
 ロックは解除されていないが、通知画面にDMの内容が一部表示されている。

 《ツキさん。返事ください》
 《会いたいです》
 《この前のドタキャン分埋め合わせてくださいよ》
 《ツキさん。俺楽しみにしてたんですよ》
 《ねえ、ツキさん返事ください》

 小鳥遊は「なんだこれは」と低い声で唸った。

「あー……。ほら、先週の金曜、急に出張が入っただろ? それでドタキャンしたんだけどさ。相手が怒っちゃって、それからずっとこんなDMが来るんだよ」
「放っておいていいのか?」
「そうだな……。ドタキャンした俺が悪いし、その埋め合わせはしたほうがいいかなとは思ってる」

 小鳥遊は「は?」と目を見開き、俺を睨みつける。

「こいつに抱かれに行く気か?」
「そうだな。今週の金曜日にでも行こうかな」
「お前なっ……」

 小鳥遊は何かを言いかけて、すぐに口を噤んだ。

「……っ。……危険だ、そんな男」
「まあ……怖いよな、普通に。でも俺にも非があるしな……」
「こんなことにまで責任を感じるな」
「そうは言っても、これだって人間関係だし」

 小鳥遊はムスッとしたまま呻くように言った。

「……俺も行く」
「え? 3Pはさすがに……」
「違う。ホテルの近くで待機するだけだ」
「なんで?」
「お前の身に何かあったとき、すぐ助けに行けるだろう」
「なっ……」

 俺は顔を真っ赤にして、小鳥遊から顔を逸らす。

「はっ? えっ、なに。なんだよそれ」
「なんだ。なにかおかしいか」
「おかしいだろっ。そんなのまるで……」

 まるで、彼氏みたいじゃないか。

 小鳥遊もそれに気づいたのか、耳を赤くして弁解した。

「ちっ、違う! これは……そう、お前が俺の上司だからだっ! 上司がゲイ向けマッチングアプリで出会った男とトラブルに遭ったら、会社に迷惑がかかるからな! そうっ、そういう理由だっ!」
「なっ、なるほどなっ!(?)」

 理由がどうであれ、正直一人で行くのは怖いと思っていたんだ。小鳥遊がそばにいてくれるというなら少しは安心できる。

「……悪いな、こんなことにまで付き合わせて」
「全くだ。できたらこんなこと、二度としてほしくないな」
「そうだな……。もうあのアプリ消すか……」
「そうしろ」
「お前も消せば?」
「もう消したさ」

 ん? どうして俺は、小鳥遊があのアプリを消したことに安堵しているんだ?


 ◇◇◇


 金曜の夜、俺はマッチングアプリで出会う最後の男性――タチバナさんとの待ち合わせ場所に向かった。
 小鳥遊からは、数分前に近くのカフェに入ったとの連絡があった。

 《なにかあったらすぐに連絡しろよ》
 《ホテルの部屋番絶対に教えろよ》

 などのメッセージも一緒に飛んできた。案外心配性なヤツだな。

「あのっ……ツキさんっ!」
「あ、タチバナさん――」

 振り返った俺は、声をかけてきた人を二度見した。
 初めて見る顔じゃない。この人は――

「……ヤヨイさん、ですよね」
「えっ。僕の顔覚えててくれたのっ? 嬉しいなあ!」

 この人とは以前関係を持ったことがある、四度目でヘタッた三十五歳の人だ。

「どうしてです? 俺、タチバナさんって人と待ち合わせしてたはずなんですけど」
「えへへ。実はツキさんとどうしてももう一度したくて、アカウントを作り直したんだよね。だってほら、ツキさんってリピートNGでしょ?」
「はい。だから今日もダメです。同じ人とはしないって決めてるんで。それじゃ、失礼します」

 その場を去ろうとしたが、ヤヨイさんに腕をつかまれる。

「ひどいよっ! 二回もドタキャンするつもり!?」
「一度目のことは謝りますが、二度目はあなたが反則したからですよ。離してください」
「いやだぁっ! こんな遠いところまで来たんだよっ! 何もせずになんて帰れない!」
「……」

 困ったな。このまま帰ると逆恨みして後を尾けられそうだ。
 どうする、小鳥遊を呼ぶか……? いや、俺に特定の男がいるなんて勘違いされたら、火に油を注ぐだけだ。被害が小鳥遊まで及びかねないし。

 今日はこのまま抱かせて満足させるのが一番安全な気がする。
 マッチングアプリのアカウントは今日で消すし、今日を凌げばこいつと縁を切れるはずだ。

「……分かりました。じゃあ、ホテル入りましょうか」
「! やったぁ! ほら、ツキさん行こ行こっ」

 ふとカフェに目をやると、カウンター席で目をがん開きにしている小鳥遊と目が合った。
 無表情なのがまた怖い。っていうか紙製のタンブラー握りつぶしているし。あいつこわ。

 俺は小鳥遊に「大丈夫。行ってくる」的なメッセージを身振りで伝えてから、ヤヨイさんと共にホテルに入った。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

バーベキュー合コンに雑用係で呼ばれた平凡が一番人気のイケメンにお持ち帰りされる話

ゆなな
BL
Xに掲載していたものに加筆修正したものになります。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

処理中です...