二十年間レベル1のおっさん、恋人を寝取られた上にギルドを追放される〜ハズレスキル「ちからをためる」で溜め続けた力、今こそ解放します〜完全版

アキ・スマイリー

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第26話 兄妹喧嘩。

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「なぁシュミラ、その指輪をどこで手に入れたんだ?」

「あっ、お兄ちゃんおかえり。あのね、えっと、これはね」

 シュミラはモジモジと指輪をいじり始めた。きっと俺が帰って来る前には外すつもりだったのだろう。だが、どうやら中々抜けないようだ。

「それ、連帯の指輪だよな。俺とダフネ、キーラ、それにミストしか持っていない筈のものだ。爺ちゃんからもらった貴重な魔術機構だからな」

「あ、はは、そう、だよね......」

 何故シュミラが連帯の指輪を持っているのか。答えはもう出ていた。だけど俺は、問い詰めずにはいられなかった。

「それに、俺は今ミストと念話していた。だけどシュミラ、お前にただいまと言った途端、奴が『お兄ちゃん、おかえり』って言ったんだ」

「......うん。そうだね。知ってるよ」

 シュミラはそう言って、薄く微笑んだ。

「ミストは慌ててた。俺がこんなに早く家に帰るとは思わなかったんだろう。だから指輪をはずすのが遅れた。そして俺の顔を見て、声に出して言うはずの言葉を思わず念話で言ってしまった。そうなんだろ、シュミラ」

「......うん、正解。そうだよお兄ちゃん。私がミスト。狩猟ギルドに所属しているAランク冒険者、ミスト」

 静かに応えるシュミラ。それとは対照的に、俺はパニックになりかけていた。シュミラを危険な目に合わせちゃいけないって、爺ちゃんと約束してたのに......! 俺はそんな約束、とっくに破ってしまっていたんだ。ミストを......シュミラを、俺は何度も危険な場所へと同行させていた。戦わせた。

「ティムさん、事情はわかりませんが、どうか落ち着いて」

 ケイトはそう言いながら、俺の横でドアを閉めた。

「ケイトごめん。とても落ち着いてなんかいられない。俺は、この子を守る立場にいたのに、逆に守られていたんだ。なぁ、シュミラ......! お前、爺ちゃんの言葉を忘れたのか!? 危ない事はしちゃいけないって、そうキツく言われていただろう! それなのに、狩猟ギルドに登録したのか!? 正体を隠してまで!」

「狩猟ギルドのマスターは、私の正体を知ってるよ。他のメンバーは知らないけど」

「そう言う話じゃない! なんで爺ちゃんの言いつけに背いてまで、そんな危険な事をしてたんだって、そう聞いてるんだ! 俺の事も、ずっと騙してたじゃないか!」

 気づいた時には叫んでいた。とても抑えられなかった。激しい怒り。

 だけどシュミラに対する怒りじゃない事は確かだ。この怒りは、妹に守られてしまった、情けない自分自身へ対する怒りだ。

「騙してたのはごめんなさい。だけど私、どうしてもお兄ちゃんの力になりたかったの。お兄ちゃんが、すごく落ち込んでたから。冒険者を始めてしばらく経った頃だった。どう頑張ってもレベルが上がらないし、誰もパーティーを組んでくれないんだって。そう嘆いてたから。だから、私......ごめんなさい」

 そうか。やっぱり原因は俺にあったんだ。シュミラは自分の為に、危険に身を晒した訳じゃない。全部、俺の為だ。

 わかっていた。そんな事は。だけど、それでも。それを許しちゃいけない気がした。

 本当はありがとうって、言いたいのに。どうしても素直になれなかった。

「お前に何かあったら、俺は生きて行けない! これからはちゃんと家にいるんだぞ! その指輪も返すんだ!」

 俺は右手をシュミラに差し出した。

「私だって......」

 シュミラは小さな声で、そう返す。声には涙が混じっていた。

「私だって、お兄ちゃんに何かあったら、もう生きてなんて行けないよ! 私がお兄ちゃんを心配して、何が悪いの!? どうしてお兄ちゃんが危険な事をしてもいいのに、私はダメなの!? 力になりたいだけなのに! 私のスキルは超直感! これまで何度も、お兄ちゃんを助けて来たよ! シュミラの時も、ミストの時も、お兄ちゃんに降りかかる不幸を予知して、助言してた! 狩猟ギルドで一生懸命努力して、短剣と弓、罠の技術も身につけた! 全部お兄ちゃんの力になりたいから! 今更何もしないなんて、そんなの無理! 私はお兄ちゃんの相棒を辞める気なんて、サラサラないんだから! 指輪は絶対に返さない!」

 シュミラは叫んだ。初めての反抗だった。

「どうしても私を家に閉じ込めたいなら、私を捕まえて!」
 
 シュミラはそう言うが早いか、俺の横を素早く通り抜けてドアを開け、外へ飛び出す。

「シュミラ! 待て!」

 俺も慌てて外へ飛び出す。だがシュミラは建物の屋根へと跳躍し、屋根から屋根へと飛び移っていく。

 確かにあの動き、ミストだ。などと関心している場合じゃない。

「ケイト、ちょっとここで待っててくれ! 連れ戻して来る!」

「待ってくださいティムさん!」

 走り出そうとする俺の腕を、ケイトがグイッと掴む。意外にも力が強く、驚いた。

「離してくれ、急いでるんだ」

「待ってくださいと言ってるんです!」

 ケイトの声と表情は真剣だった。俺は思わずドキリとする。

「このままシュミラさんを追って、捕まえる事が出来たとしましょう。それであなた方は、元の関係に戻れますか? 戻れませんよね。ギクシャクと気まずい関係になる。もしかしたら、仲違いして二度と会えなくなるかも知れない」

「そ、それは......」

 確かにケイトの言う通りだった。

「だから僕が、素直になれる魔術を使ってあげます。見習いの僕でも使える、簡単な魔術です」

 そう言って微笑むケイト。彼の笑顔は、人を安心させる力があるようだ。

「......わかった。それ、やってくれるかい?」

「ええ、お任せ下さい」

 ケイトはニコニコしながら、俺の胸に人差し指を押し当てた。そして短く呪文を唱える。

「はい、これで大丈夫です。さぁ、追って下さいティムさん。今のあなたならきっとシュミラさんを引き留め、仲直りが出来る筈です」

「ああ! ありがとうケイト!」

 俺はケイトと握手を交わすと、シュミラの行方を追って走り出した。
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