上 下
12 / 39

ゾンビは既に死んでいる。よって女だらけの修道院に行ってもエロイ事にはならない

しおりを挟む
 オレは修道院とやらに来ていた。

 場所の特定は地図を見るまでもない。

 村から延びる街道の反対側の道を辿ればオレの足でも3日ほどで到着するのだから。

 その修道院は小さな山の谷側に存在した。

 煉瓦の塀に囲われて堅牢に思えるが、何の問題もない。

 このファンタジー世界の建築技術では地中は固定せず、土の上にそのまま塀を建ててるので、地中に穴を掘れば簡単に侵入出来るのだから。





 オレがこの修道院まで足を伸ばしたのはとの情報を得たからだ。

 エロ目的ではない。

 そもそもゾンビなので出来ないしな。

 オレが言う『』とは防衛力がゼロという意味だ。

 少し離れた村に兵士を駐在させてるくらいだからな。

 そう、村だ。

 あの村では虎に邪魔されて全然喰えなかった。

 修道院では喰いまくるぜ。

 その為にオレは修道院まで足を運んでいた。





 修道院はボーナスタイムの一言に尽きた。

 夜を待つまでもない。

 修道院内の扉の開いた礼拝堂で礼拝をしてるところを突入だ。

 20人程が礼拝をしていたのだが、全員眼を閉じて礼拝してる。

 射程範囲5メートルの闇の手を使えばゆっくりだが根こそぎだ。

 全員を闇の手で落とした後、1人ずつ首筋を噛んで全員にトドメを刺してから、美味しくいただいていたのだが、

 7人を美味しくいただいた頃、

「キャアア、ゾンビっ!」

 まだ居たのか開いた礼拝堂のドアの横で修道女が悲鳴を上げて逃げていった。

 射程範囲の5メートルよりも離れた。

 どうせ、ゾンビの足では追い付けない。

 オレは逃げた修道女に構う事なく美味しくいただいていたのだが、

 しばらくして武器を持った修道女10人程が勇ましく、

「ゾンビめっ! 退治してくれるっ!」

 挑んできた。

 握る武器は槍やメイス。

 聖水の小瓶を握ってる修道女も居た。

 闇の手を使うまでもない。

 爪攻撃や噛みつき攻撃で、

「ヒィ、ギャアアアア」

「キャアァア」

 4人を倒したら、残りは逃げていった。

 おっと、1人が逃げ遅れた。

 恐怖で腰を抜かしたのか。尻餅をついて失禁してる。

「こ、来ないで」

 やはりファンタジーの住人は知能指数が低いのか?

 この状況で見逃して貰えると思ってるのだから。

 オレは構わずその修道女の首筋に噛みついて、

「キャアアア」

 その修道女も絶命させたのだった。





 こうして、オレは修道女24人を美味しくいただいて、兵士達の増援の到着前に庭の穴から逃げたのだった。





 ◇





 農夫1人で追っ手が放たれたのだ。

 修道院であれだけ喰えば、当然、追っ手が放たれる。

 追っ手は当然、あの村に居た兵士達だ。

 修道院のある山から逃げてたオレだが、オレはゾンビだ。

 歩くのが遅い。

 もはや、これは致命的な弱点だ。

 24時間ずっと歩いたオレは、1日後には徒歩で追撃してきた兵士10人に追い付かれた。

 数が10人なのは虎系の魔物退治で数が減ったからか。

 それとも他の兵士達は別の方向を捜索しているのか。

 ともかくオレに挑んできた。

 それもお笑いな事に、剣を抜いての接近戦でだ。

 何故ならばこの兵士達は弓矢や槍を装備していなかったのだ。

 重量になって追跡の邪魔だから置いてきた?

 知能指数が低いんじゃないのか?

 槍が5本もあれば、余裕でゾンビなんて倒せたはずなのに。

 そんな訳で剣を握った兵士10人だ。

 闇の手を使うまでもない。

 普通に戦った。

 オレはゾンビだ。

 なので、相手の方が敏捷性は上だ。

 肩を斬られて、爪攻撃で1人始末。

 剣で腹を突かれても首筋に噛みつき攻撃で1人を倒す。

 背後から斬られたが、腕を振った時には避けられた。

 また背後からだ。

 こすい真似を。

 いや、『さすがは人間だ。知恵がある』と褒めるべきか。

 安全圏の背後からの攻撃。

 理に適ってる。

 それに、さすがは兵士だ。

 集団戦闘にも長けてる。

 斬った奴が横に走り抜けるので邪魔にならず、次の奴が攻撃しやすい。

 背後から4度、斬られて、

「アアアァァァァ(鬱陶しい)」

 イラッとした以上に『このままじゃ負ける』と危機感を覚えたオレは闇の手を解禁した。

 初見だ。

 兵士も回避出来ず、2人を倒す。

「何だ、これ?」

「魔法? ゾンビなのに?」

 驚いてる隙に更に闇の手で更に2人を落とす。

 これで残るは4人。

 出し惜しみした甲斐があり、射程距離もまだバレてない。

 全員、射程範囲内だ。

「おい、どうする? 一先ず逃げるか?」

「逃げれるか。貴族が子女が死んでるんだぞ」

 あらら、さすがはファンタジーの修道院。

 貴族の子女なんてのが居たのか。

 ってか、戦闘中のそれも射程範囲内で足を止めて口を動かすなんて危機意識が低いんじゃないのか?

 オレは更に闇の手を使う。

 1人が小賢しくも横に避けたが、5メートルまでならオレの意思で自在に追尾は可能なのだよ。

 2人を倒し、残るは2人。

「一抜けた」

 1人が背を向けたが、決断が遅いんだよ。

 闇の手を放って結局は10人全員を落としたのだった。





 その後、全員の首筋を噛んでとどめを刺してから美味しくいただいて損傷箇所を修復したのだった。





 ◇





 修道院襲撃から3日目の夜。

 夜でもオレが歩いてると暗闇の中に明かりが見えた。

 小さな林の脇でだ。

 何だ?

 警戒しながら近付けば兵士達が夜営をしていた。

 先回りされただと?

 どういう事だ?

 よくよく観察すれば蜥蜴車が傍にあった。

 なるほど、それで先回り可能という訳か。

 兵士の数は20人。

 但し、起きて見張りをしてるのは、

「明日はゾンビ狩りか」

「本当に、この辺に居るのか?」

「そのはずだ。こっちに向かってるらしいから」

「何だってこんな場所を? もしかして聖郭せいかくを目指してるのか?」

「さあな」

 起きて喋ってるのは3人だった。

 微妙な数だ。

 2人なら余裕だったのだが。

 とりあえず焚き火の明かりが届かない位置まで接近だ。

 見張りの連中が真面目に見張りをせずに喋ってる隙に、

 射程範囲5メートルを駆使して、遠巻きに地面で寝てる連中を闇で落としていった。

 地味な作業だが、それを繰り返す。

 地面に落ちてる木の枝を踏んでパキッと鳴った時にはギクリッとしたが。

 見張りの錬度が低いお陰で、まだ喋ってて、その音に気付く事はなかった。

 寝てる全員を闇で落とした後、オレは焚き火の外側から射程範囲5メートルに居る2人を闇の手で落とした。

「おい、どうした?」

 残る兵士1人が喋ってた仲間が急に気絶した事に驚く。

 そして気絶した兵士達の身体を揺さぶるだけだ。

 そんな無駄な行動で最後の持ち時間を終了させた兵士をオレは闇の手を使って落としたのだった。

 これで20人を完全制圧。

 ったく、見張りの兵士2人を闇で落とした後に、残った1人が『寝てる兵士達を起こす』という行動を予想して地味な作業を繰り返したオレが馬鹿みたいだな。

 オレは呆れつつも、兵士20人全員の首筋に噛み付いて絶命させて、

 その後、兵士達を美味しくいただいたのだった。





 ◇





 そして、『蜥蜴が引く輸送車が使えれば移動距離が格段に伸びるはず』と何とか試みたが、ゾンビは長時間、座れない事が判明。

 座れないのなら腹這いになるのみだ。

 20人の兵士を美味しくいただいた事で、夜は明け、太陽が昇ってる。

 それでも車に腹這いになって蜥蜴車の走行を試みた。

 周囲から見れば無人の輸送車が走ってる風に見えるだろう。

 それよりも問題はオレが腹這いな事だ。

 お陰で視界が低く、車を引く蜥蜴が邪魔で前方が見えない。

 それでも何とか草原を走ったが、2時間程で蜥蜴車が窪地に嵌まった。

 車が横転する程の大事故だった。

 蜥蜴には見えてたはずだろ?

 死んだ兵士達に義理立てして故意に嵌まったのか?

 それとも蜥蜴が予想以上に頭が悪くて車を引いてた事を忘れていた?

 ともかくオレも勢い良く外の草原に投げ出された。

 ゾンビなので痛覚は最初からない。

 痛覚がない分、こんな時、損傷個所が分からず不便だ。

 蜥蜴車移動はこの事故で潔く諦めた。

 蜥蜴も当然、美味しくいただいて損傷個所を修復に充てた。

 その後、オレはノロノロと自分の足で歩き始めたのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」 前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。 軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。 しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!? 雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける! 登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。 旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...