上 下
112 / 157
第九章~西国での動き~

西日本大騒動2

しおりを挟む
丹波から書状を受け取った刹那が中身を確認すると

「直虎、これならば問題あるまい?」

そう言いながら直虎へとそれを渡した。

直虎はそれを読み終えるとそれを皆に渡した。
全員が書状を読み終えると

「なるほどのぉ、まさかこのようなものを手に入れるとはさすがは伊賀の忍び。」

「殿に言われたことをうちの若いのがこなしただけじゃがな。」

「丹波、これを行ったのは藤林長門守か?」

「その通りじゃ。殿、よく覚えておられたな。」

「お前が推したほどの者を忘れるわけがなかろう。神威家の長として、有能な者は皆覚えておるさ。家臣の家臣だろうとな。」

刹那のその姿勢に感銘を受け、自分も刹那のような当主にならねばと改めて思う直虎であった。

「さて、毛利を動かす情報が手に入ったから、この情報を毛利に送り恩を売ろうと思うが、さて、誰を使者に立てるべきか。」

「わしはもう年じゃからのぅ。のぉ、幸隆。」

「そうでございますな、海玄様。」

「そもそも行かせるつもりはないわ。海玄になにかあったら松や菊に叱られてしまうからな。」

「では、どの者に。」

「左近、一人試したい者がおる。その者に行かせようかと思ってな。」

「ほう。殿がそう言うのでしたら間違いないでしょうな。」

「あぁ。新田友作に行かせる。」

刹那がそうゆうとすぐに友作がその場に呼ばれた。

「殿、俺になにか御用ですか?」

「あぁ。ぜひお前にやってもらいたいことがある。」

「殿のためならこの新田友作、どんなことでもいたしやしょう。」

「ふっ、頼もしいな。」

刹那は友作にこれまでの経緯や、任務についての話を一通りした。

「なるほど、つまりは毛利に恩を売れってことですね。」

「さすが、察しがいいな。その通りだ。大きな恩になるか、小さな恩になるかはお前次第だぞ。」

「なるほど、それは面白い。お任せください。」

友作はそう言うと部屋を後にした。

友作が去った後、

「どうだ、直虎。面白いやつだっただろう。」

「ええ、これだけの重臣達を前にしても物怖じせず、むしろ自信満々に出ていきました。」

「あいつは使える男だ。だが、癖が強い。手懐けられるかはお前の力量次第だ。」

「はいっ。」

友作は自分の部屋で出かける準備を整えるとすぐに刹那の元へ戻り出る挨拶を済ませると毛利の本拠地である吉田郡山城へと向かったのであった。

友作を送り出した刹那は左近を部屋へ呼んだ。

「殿、お呼びですか。」

「あぁ。丹波に長宗我部の動きを、半蔵に大友の動きを調べさせている。そこが動き次第我らも動く。そのための兵力を用意してといて欲しい。」

「どのくらい用意いたしましょうか。」

「長宗我部の兵力は1万5千ほどだったか。」

「はい。一両具足と呼ばれる農民の兵力がその8割を占めているそうです。」

「そうか。では、こちらは4万の兵を用意しよう。一両具足は油断ならない兵力だ。こちらも精鋭だけで挑む。」

「承知いたしました。」

「後、羽柴との領土境にもある程度の兵を出しておけ。攻めては来ないだろうが、油断は禁物だからな。」

「義重殿にも声をおかけしますか?」

「そうだな。兵を出してもらうことはなくていいが、兵を通ることを配慮しておいてもらったほうが良いだろう。」

「はっ。」

左近が出ていくと刹那はすぐに家康宛と直親宛の書状を書いて届けさせた。

友作が霧山御所を出てから15日余りが過ぎた頃、友作は吉田郡山城へと到着していた。

神威家からの使者であることを説明するとその日のうちに毛利家当主の毛利輝元とその叔父である吉川元春、小早川隆景と会うことが叶った。

先に平伏して待つ友作に輝元が声をかけた。

「神威家からの使者とやら、面をあげよ。」

「お初にお目にかかります。神威刹那が家臣、新田友作と申します。」

「うむ。して、徳川家の筆頭家老である神威殿が毛利家にどのような用件であろうか。」

「まずはお人払いをお願い致します。」

友作がそう言うと輝元は隆景のほうへ目線をやり、隆景もそれに小さく頷いた。

「隆景、元春以外の者は外へ出よ。」

輝元はほかの者が出たのを確認すると

「この二人は構わぬな?」

一応の確認を取った。

「はっ。」

「では、神威殿からの言伝を承ろう。」

隆景がそう言った。

「まず、毛利家では長宗我部の不審な動きをご存知でしょうか?」

その友作の問いに元春が

「ふっ、そのようなことわざわざ徳川から知らせられなくとも知っておるわ。」

「では、長宗我部がどこを攻めるかも?」

「我らと誼を通じておる河野家だ。故に我らは河野への援軍を手配している最中だ。」

「では村上水軍を使い瀬戸内海を渡り四国に兵をお出しになるのですね?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...