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第九章~西国での動き~
西日本大騒動3
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友作の回りくどい言い方に少しイラつきを覚えながら
「あぁ、その通りだ。」
と元春が答えた。
「その兵、四国へ向けるのをお止めになるべきにございます。」
そう友作は三人の顔を見て言った。
その言葉に元春が腹を立てた。
「貴様、何を申すか!!河野を見殺しにせよと申すか!!」
「そのようなこと申しておりませぬ。ですが、その援軍を出せば、毛利家は滅びますぞ。」
その言葉に三人とも驚きの顔をした。
その中で隆景が一番早く声を出した。
「使者殿、それはどういうことだ。なぜに河野へ援軍を出すと毛利が滅びるのだ。」
「では、本題に入らせていただきます。皆様方は長宗我部が単独で河野への侵攻を行うと思っておるのですか?」
その友作の問いに元春が答えた。
「長宗我部に揺さぶられた河野の家臣が反旗を翻すとでも言うのか。」
「その可能性もなきにしもあらず。」
「ならば余計に援軍を急ぐべきであろう。」
「吉川殿、我らが殿がその程度のことで使者を毛利に出すわけがございませんよ。」
「なに?」
「確かに恵瓊ほどの男を丸め込めるほどの才覚を持った神威殿がわざわざそのようなことだけを我らに知らせるために使者を出すとは思えん。」
刹那との文のやり取りでどのような人物であるかをある程度把握している隆景が友作の言葉に同意した。
「では、なにようでお主の主は我らに使者を出したのだ。」
輝元が友作に遠回しに本分を述べるように言ってきた。
それを聞いた友作は小さく笑みを浮かべた後、
「長宗我部の河野侵攻と共に、羽柴、大友が毛利領へ侵攻を開始する情報を当家が掴み、それを輝元公に伝えるために我が殿、神威刹那は私をここへ参らせたのでございます。」
そう、いい放った。
それを聞いた三人はあまりのことに驚きの表情を隠せなかった。
「どっ、どういうことだ。長宗我部だけではなく東の羽柴、西の大友までが動くと言うのかっ!」
「殿、この事が誠であればこれは河野へ援軍を差し出すのは早急に取り止めねばなりませんぞ。」
一人沈黙している輝元に友作は刹那から渡された文を差し出した。
「我が主より輝元公宛の文にございます。」
輝元がその文を受け取り中身を開けると刹那直筆の文ともうひとつ別の文も入っていた。
その両方を呼んだ輝元は
「河野への援軍は取り止め。兵を分割し、西は元春、東を隆景が総大将として大友、羽柴からの侵攻に備える。」
と言葉を発した。
それを受けた隆景が輝元の持っている書状をもらい読んだ。
「なるほど。これは動かぬ証拠よ。」
そう言いながら書状を元春に渡した。
「こっ、これはっ。」
刹那は密書と一緒にこれから起こるであろう、羽柴と大友の動きを予想した書状をお届けさせたのである。
そこに書いていることは密書のことからも疑うことなく信じられるもので、それを見た三人は河野への援軍を取り止めるしかなかったのである。
「使者殿、神威殿に輝元が礼を申しておったと伝えてくれ。」
「はっ。承知いたしました。」
「それと、毛利家当主から神威刹那殿に頼みがある。それを書状に認める故、それを届けてほしい。」
「承知いたしました。」
輝元はその場で一枚の書状を認めるとそれを友作に渡した。
「確かにお預かりしました。」
「よしなに頼む。」
それから友作はすぐに吉田郡山城を後にした。
友作が出た後の部屋では二人が輝元に話を聞いていた。
「輝元、あの書状は何を書いたのだ?」
「あの書状には神威領側の羽柴家との領土境へ兵を出して欲しいと言うことが書いてあります。」
「ほう、輝元も当主らしくなってきたではないか。」
隆景が満足そうな反応を示した。
「どうゆうことだ。」
その反応に元春が疑問の声を上げた。
「今回の件で毛利は神威家に多くの恩を受けることになりました。情報だけであればそこまででなかったにしろ、あの使者。相当の曲者でした。話の持っていき方一つで我らの恩をより高めて、しかも河野から手を引かせたわけです。」
「だが、情報だけでも我らが河野から手を引くことは明白ではないか?」
「確かにそうでしょう。しかし、我らが河野から手を引くと言うことをあの場ですぐに決断したでしょうか?」
「少なくとも精査する時間が必要だろう。あの密書がどうかなのかも含めてな。」
「その通りです。しかし、あの使者は話の持ち方でそれをあの場で決めさせた。それが曲者である証拠です。さすがは徳川家を日の本一の大名まで押し上げた男。家臣まで優れている。」
「では、輝元が当主らしくなってきたとはどういうことだ。」
「あぁ、その通りだ。」
と元春が答えた。
「その兵、四国へ向けるのをお止めになるべきにございます。」
そう友作は三人の顔を見て言った。
その言葉に元春が腹を立てた。
「貴様、何を申すか!!河野を見殺しにせよと申すか!!」
「そのようなこと申しておりませぬ。ですが、その援軍を出せば、毛利家は滅びますぞ。」
その言葉に三人とも驚きの顔をした。
その中で隆景が一番早く声を出した。
「使者殿、それはどういうことだ。なぜに河野へ援軍を出すと毛利が滅びるのだ。」
「では、本題に入らせていただきます。皆様方は長宗我部が単独で河野への侵攻を行うと思っておるのですか?」
その友作の問いに元春が答えた。
「長宗我部に揺さぶられた河野の家臣が反旗を翻すとでも言うのか。」
「その可能性もなきにしもあらず。」
「ならば余計に援軍を急ぐべきであろう。」
「吉川殿、我らが殿がその程度のことで使者を毛利に出すわけがございませんよ。」
「なに?」
「確かに恵瓊ほどの男を丸め込めるほどの才覚を持った神威殿がわざわざそのようなことだけを我らに知らせるために使者を出すとは思えん。」
刹那との文のやり取りでどのような人物であるかをある程度把握している隆景が友作の言葉に同意した。
「では、なにようでお主の主は我らに使者を出したのだ。」
輝元が友作に遠回しに本分を述べるように言ってきた。
それを聞いた友作は小さく笑みを浮かべた後、
「長宗我部の河野侵攻と共に、羽柴、大友が毛利領へ侵攻を開始する情報を当家が掴み、それを輝元公に伝えるために我が殿、神威刹那は私をここへ参らせたのでございます。」
そう、いい放った。
それを聞いた三人はあまりのことに驚きの表情を隠せなかった。
「どっ、どういうことだ。長宗我部だけではなく東の羽柴、西の大友までが動くと言うのかっ!」
「殿、この事が誠であればこれは河野へ援軍を差し出すのは早急に取り止めねばなりませんぞ。」
一人沈黙している輝元に友作は刹那から渡された文を差し出した。
「我が主より輝元公宛の文にございます。」
輝元がその文を受け取り中身を開けると刹那直筆の文ともうひとつ別の文も入っていた。
その両方を呼んだ輝元は
「河野への援軍は取り止め。兵を分割し、西は元春、東を隆景が総大将として大友、羽柴からの侵攻に備える。」
と言葉を発した。
それを受けた隆景が輝元の持っている書状をもらい読んだ。
「なるほど。これは動かぬ証拠よ。」
そう言いながら書状を元春に渡した。
「こっ、これはっ。」
刹那は密書と一緒にこれから起こるであろう、羽柴と大友の動きを予想した書状をお届けさせたのである。
そこに書いていることは密書のことからも疑うことなく信じられるもので、それを見た三人は河野への援軍を取り止めるしかなかったのである。
「使者殿、神威殿に輝元が礼を申しておったと伝えてくれ。」
「はっ。承知いたしました。」
「それと、毛利家当主から神威刹那殿に頼みがある。それを書状に認める故、それを届けてほしい。」
「承知いたしました。」
輝元はその場で一枚の書状を認めるとそれを友作に渡した。
「確かにお預かりしました。」
「よしなに頼む。」
それから友作はすぐに吉田郡山城を後にした。
友作が出た後の部屋では二人が輝元に話を聞いていた。
「輝元、あの書状は何を書いたのだ?」
「あの書状には神威領側の羽柴家との領土境へ兵を出して欲しいと言うことが書いてあります。」
「ほう、輝元も当主らしくなってきたではないか。」
隆景が満足そうな反応を示した。
「どうゆうことだ。」
その反応に元春が疑問の声を上げた。
「今回の件で毛利は神威家に多くの恩を受けることになりました。情報だけであればそこまででなかったにしろ、あの使者。相当の曲者でした。話の持っていき方一つで我らの恩をより高めて、しかも河野から手を引かせたわけです。」
「だが、情報だけでも我らが河野から手を引くことは明白ではないか?」
「確かにそうでしょう。しかし、我らが河野から手を引くと言うことをあの場ですぐに決断したでしょうか?」
「少なくとも精査する時間が必要だろう。あの密書がどうかなのかも含めてな。」
「その通りです。しかし、あの使者は話の持ち方でそれをあの場で決めさせた。それが曲者である証拠です。さすがは徳川家を日の本一の大名まで押し上げた男。家臣まで優れている。」
「では、輝元が当主らしくなってきたとはどういうことだ。」
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