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心の底から
文化の差
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「ふむ、やはり温かい」
まるで大切な宝物を慈しむように、俺の手を包んでいる。なんとなくだけど未亡人感のあるリーさんの優しい笑みにしばらく、それこそ話しかけられるまで見惚れていた。俺の手がそんなに気に入ったのか、手を握ったままなのは少し恥ずかしい。
「そういえば、お父様……いえ父上は、異世界から打倒魔王のために勇者を召喚したのでしたね。失礼ですが、職業を伺ってもよろしいでしょうか?」
「はい。踊り子で……あ」
口押さえたがもうアフターフェスティバル後の祭りってやつだ。今思っても昔考えても魔王倒す勇者が踊り子って、シンプルにふざけていると思う。相手は最低最悪の魔物なのに、とりあえず職業は運だから、貴方の父親のせいではないとなんとかベルトルトさんのために弁解を試みようとした。しかしとうのリーさんは優しく笑うばかりで、驚きもせずに引くこともなかった。
「なるほど。このような可愛い青年が踊り子なんて、お相手する魔王は幸福ですね」
口説き文句はこの世界における帝王学での必修科目なのかと疑った。俺の身体が沸騰しそうなほど熱くなった、風呂がぬるいと感じてしまうほどに。左手で手を握り、右手で頰に触れられる、顔面偏差値が高すぎて少女漫画のワンシーンの完全再現みたいになっている。まあ相手は飾りみたいな筋肉しかない全身ツルツルの野郎だけど。
可愛いと言われるのは悪くない、そう思うのは多分高松のせいだ。リーさんは俺より背は高くて、鼻筋も通っていて、しかも堀が深い。堀が浅いそして日本人顔の俺の方が確かに可愛いのかも。
「心が綺麗で、私に怯まない。おまけにこんなにも可愛らしい……貴方のような伴侶が居てくれれば、どれだけ幸せだったのでしょう」
流れに身を任せていたら、聞き捨てならない発言が鼓膜を揺らした。伴侶、はんりょ? 伴侶ってあれだろ、その、妻的な意味だろ?いやいや俺男だし、リーさんも揶揄っているのだろうな。勝手に納得していると、忘れていた情報が降るように舞い戻ってきた。
『この異世界に女性と呼ばれる種族は存在しない』
背筋が凍った。熱くなったら寒くなったり風邪ひくわ。というよりあの時はもう希望の手伝いすることで一杯一杯だったけれど、いざ考えてみると意味分からなさすぎる。子供とかどうやって産んでんの?ひょっとして自然発生するんか? それは神秘が過ぎるだろ。
「……どうしました?」
一人で百面相が如く顔色をコロコロと変えていた俺が面白かったらしい。優しく笑っていた。そうだ、ここ現地の人が居るじゃないか。この世界の常識を聞いたら失礼かもしれないが、俺の世界についてたくさん聞いてくれたし、話してくれるだろう。多分。
「あの、、この世界って男しか居ないんですよね……?」
好奇心30%、遠慮70%で聞いてみた。思いのほかあっさり教えてくれるもんだから、少し拍子抜けだった。ほら、この世界は男しか居ないのが常識だから、女性とか他の性別とか言われてもピンとこないもんかと。どうやらこの異世界の性別の偏りは知っていたようで、何もかも詳しく教えてくれた。
この世界ではベルトルトさんの言った通り女の人はいない。しかし生殖に関しては何も問題はないようだ。男の人同士が恋愛をして、結婚し、子供を産むときに教会へ行く。どちらが子供を産むかを事前に決めて、祭司に儀式を施してもらう。子供を産む方は、この儀式によって一度だけ子供を産める使い捨ての子宮のようなものを授かる。2人目が欲しいときは再びその儀式を受ける……と、元の世界に住んでいた俺としてはなかなかショッキングな情報だった。
「な、なるほど……」
「実は、一つの性別しかない世界はとても珍しいのです。実際ここと兄弟関係にあるあずささんの世界ですら、男性と女性といった形で分けられているのですから」
そうかなるほど、色々わかった。この世界については魔王以外の知識がほぼないなか、これはいい情報だ。リーさんに聞いて正解だった。
ベルトルトさんは俺がクラスメイト全員から尻を狙われていても、何も言うことはなかった。それはこの世界の文化だからだろう。もっと言えば、城下町の人達も男の俺があんな服とは呼べない代物を着ていても、気持ち悪いということはなく、むしろ可愛いとか言っていた。それはこの異世界の、女性がいない中では当然の文化だからだ。ん?つまり……
「すいませんあずささん。少し、わがままを言ってもよろしいでしょうか?」
リーさんはカッコいい声で俺の名前を呼ぶ。しかし声色に欲があるのを感じた、俺の手を握る力がどんどん強くなっている。俺は考えた。この世界では男の人同士が恋愛をするのは文化であり、何にもおかしいことはない。それはこのリーさんも同じ認識だろう。女の人がいないのだから当然だ。つまり現地の人々にとって、男への口説きはかなりの高確率どころか、ほとんど本気ということになるのでは……
「な、なんでしょうか?」
震える声で答えた。悟られないように、平常心のように見えますようにと騙すために。握る手をいきなり外したと思うと、そのままの流れで太腿に触れられた。変わり方がいやらしい、胸が高まっていくのを感じた。俺の頬に触れていた右手はいつのまにか俺の背中に回り込んでいて、裸同士で抱き寄せられる形となっている。逃げ場は、ない。
10歳以上歳の差がある男の人に、俺は何を期待してしまっているのだろうか。
「少しだけ、恋人ごっこをしては頂けませんか?」
優しい優しい、声だった。綺麗な浴場、いい匂い、全てがこのイケメンと釣り合っている。ぶっちゃけ俺が唯一の汚点。しかしそんな事気にするもんかと、リーさんの綺麗な腕は、手は、俺への欲求を深めていた。
まるで大切な宝物を慈しむように、俺の手を包んでいる。なんとなくだけど未亡人感のあるリーさんの優しい笑みにしばらく、それこそ話しかけられるまで見惚れていた。俺の手がそんなに気に入ったのか、手を握ったままなのは少し恥ずかしい。
「そういえば、お父様……いえ父上は、異世界から打倒魔王のために勇者を召喚したのでしたね。失礼ですが、職業を伺ってもよろしいでしょうか?」
「はい。踊り子で……あ」
口押さえたがもうアフターフェスティバル後の祭りってやつだ。今思っても昔考えても魔王倒す勇者が踊り子って、シンプルにふざけていると思う。相手は最低最悪の魔物なのに、とりあえず職業は運だから、貴方の父親のせいではないとなんとかベルトルトさんのために弁解を試みようとした。しかしとうのリーさんは優しく笑うばかりで、驚きもせずに引くこともなかった。
「なるほど。このような可愛い青年が踊り子なんて、お相手する魔王は幸福ですね」
口説き文句はこの世界における帝王学での必修科目なのかと疑った。俺の身体が沸騰しそうなほど熱くなった、風呂がぬるいと感じてしまうほどに。左手で手を握り、右手で頰に触れられる、顔面偏差値が高すぎて少女漫画のワンシーンの完全再現みたいになっている。まあ相手は飾りみたいな筋肉しかない全身ツルツルの野郎だけど。
可愛いと言われるのは悪くない、そう思うのは多分高松のせいだ。リーさんは俺より背は高くて、鼻筋も通っていて、しかも堀が深い。堀が浅いそして日本人顔の俺の方が確かに可愛いのかも。
「心が綺麗で、私に怯まない。おまけにこんなにも可愛らしい……貴方のような伴侶が居てくれれば、どれだけ幸せだったのでしょう」
流れに身を任せていたら、聞き捨てならない発言が鼓膜を揺らした。伴侶、はんりょ? 伴侶ってあれだろ、その、妻的な意味だろ?いやいや俺男だし、リーさんも揶揄っているのだろうな。勝手に納得していると、忘れていた情報が降るように舞い戻ってきた。
『この異世界に女性と呼ばれる種族は存在しない』
背筋が凍った。熱くなったら寒くなったり風邪ひくわ。というよりあの時はもう希望の手伝いすることで一杯一杯だったけれど、いざ考えてみると意味分からなさすぎる。子供とかどうやって産んでんの?ひょっとして自然発生するんか? それは神秘が過ぎるだろ。
「……どうしました?」
一人で百面相が如く顔色をコロコロと変えていた俺が面白かったらしい。優しく笑っていた。そうだ、ここ現地の人が居るじゃないか。この世界の常識を聞いたら失礼かもしれないが、俺の世界についてたくさん聞いてくれたし、話してくれるだろう。多分。
「あの、、この世界って男しか居ないんですよね……?」
好奇心30%、遠慮70%で聞いてみた。思いのほかあっさり教えてくれるもんだから、少し拍子抜けだった。ほら、この世界は男しか居ないのが常識だから、女性とか他の性別とか言われてもピンとこないもんかと。どうやらこの異世界の性別の偏りは知っていたようで、何もかも詳しく教えてくれた。
この世界ではベルトルトさんの言った通り女の人はいない。しかし生殖に関しては何も問題はないようだ。男の人同士が恋愛をして、結婚し、子供を産むときに教会へ行く。どちらが子供を産むかを事前に決めて、祭司に儀式を施してもらう。子供を産む方は、この儀式によって一度だけ子供を産める使い捨ての子宮のようなものを授かる。2人目が欲しいときは再びその儀式を受ける……と、元の世界に住んでいた俺としてはなかなかショッキングな情報だった。
「な、なるほど……」
「実は、一つの性別しかない世界はとても珍しいのです。実際ここと兄弟関係にあるあずささんの世界ですら、男性と女性といった形で分けられているのですから」
そうかなるほど、色々わかった。この世界については魔王以外の知識がほぼないなか、これはいい情報だ。リーさんに聞いて正解だった。
ベルトルトさんは俺がクラスメイト全員から尻を狙われていても、何も言うことはなかった。それはこの世界の文化だからだろう。もっと言えば、城下町の人達も男の俺があんな服とは呼べない代物を着ていても、気持ち悪いということはなく、むしろ可愛いとか言っていた。それはこの異世界の、女性がいない中では当然の文化だからだ。ん?つまり……
「すいませんあずささん。少し、わがままを言ってもよろしいでしょうか?」
リーさんはカッコいい声で俺の名前を呼ぶ。しかし声色に欲があるのを感じた、俺の手を握る力がどんどん強くなっている。俺は考えた。この世界では男の人同士が恋愛をするのは文化であり、何にもおかしいことはない。それはこのリーさんも同じ認識だろう。女の人がいないのだから当然だ。つまり現地の人々にとって、男への口説きはかなりの高確率どころか、ほとんど本気ということになるのでは……
「な、なんでしょうか?」
震える声で答えた。悟られないように、平常心のように見えますようにと騙すために。握る手をいきなり外したと思うと、そのままの流れで太腿に触れられた。変わり方がいやらしい、胸が高まっていくのを感じた。俺の頬に触れていた右手はいつのまにか俺の背中に回り込んでいて、裸同士で抱き寄せられる形となっている。逃げ場は、ない。
10歳以上歳の差がある男の人に、俺は何を期待してしまっているのだろうか。
「少しだけ、恋人ごっこをしては頂けませんか?」
優しい優しい、声だった。綺麗な浴場、いい匂い、全てがこのイケメンと釣り合っている。ぶっちゃけ俺が唯一の汚点。しかしそんな事気にするもんかと、リーさんの綺麗な腕は、手は、俺への欲求を深めていた。
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