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心の底から
絶世の美男子
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風呂場はさすが王宮というだけあって、とにかくデカイ。羨ましい、近所にあった大浴場よりずっとずっと大きい。もう脱衣所の時点で装飾とかのレベルが違う。こういったものに全然知識がないけれど照明に使われてるシャンデリアも高級品っぽい。浴場はどうなっているのだろうか。
せっせと服を脱いだ。腕も脚も、へそ回りも露出している割には手間がかかる。手足に付いている鈴も錆びてしまうから取ろう。歩くたびにチリンチリンとなるのは流石に慣れたけど、一度意識してしまうと耳から離れない。
「失礼しまーす……」
バスタオル一枚を防御品にいざ侵入。まあ失礼しますと一声かけたけれど。浴場は想像通りものすごい大きかった。中央に大きな大浴場、周りには薬湯や寝転んで入れる湯船、さらには岩盤浴?なんかもあった。露天やサウナも常備されていて、風呂入るだけで1日潰せるぐらいの天国だ。
そしてもう1つ、めっちゃいい匂い。そうなんだ、いいお風呂って大きいだけじゃダメなんだ、いい匂いも必要かのか。甘くてそれでいてしつこくない、その空間にいる全ての人間を落ち着かせる上品の究極体系みたいな匂いだ。
「……だれだ、使用人ではなさそうだな」
水を打ったように静かになった。辺りがではない、俺の心がだ。浴場はあいも変わらずにお湯が揺らめいたり、流れている音が聞こえるだけだ。でも、それでも俺の心は真っ白になった。
大きな大浴場の隅で1人の男の人がいた。身長こそは俺よりちょびっと大きい程度で、多分ずっと年上、恐らく30代は下がらない。しなやかな筋肉、透き通るような白い肌。風呂場だからか高くに結んでいる長い髪も肌と同じぐらいに真っ白だ。眉間に皺がよっていて少し怖かったが、それを覆せるほどの美形だ、まさに絶世の美男子。同じ男ながらドキドキしてしまうほどの美貌の持ち主と、目が合ってしまった。
「誰だと聞いているのだが……」
質問をされてハッとした。さっきと比べて声が全く変わっていないことが逆に怖くて、少し力んだ。声までがかっこいいとかシンプルにずるいと心の中だけで思うことにした。
「えっと、、巳陽梓です。あ、怪しいものではなくて、ベルトルトさんの召喚魔法で異世界から来ました」
とりあえず情報を隠すことなく全て教える。別に隠す必要もないから本当に洗いざらいだ。ついでに深くお辞儀もしておいた。ここまで美形で、しかも怒っているとなるとメチャクチャ怖い。
「ベルトルト……ああ、お父様のことか」
「はい!そのお父様の……へ?」
お父様、ん? ベルトルトさんが父親?そうなの? いいやごめんなさい。つい敬語が乱れてしまいました。
「ええ大丈夫ですよ。そうですか、あずささんですか……ここら辺では珍しい発音ですね。異世界では、よくある訛りなのです?」
「はい。訛りというか、だいたい俺の住んでいる国の人間はみんなこんな名前というか」
その後もしどろもどろながら質疑応答は続いた。少しづつ声も優しくなるのが少し嬉しいと思う。俺の元いた世界に興味を持ってくれたのも嬉しかっだ。ベルトルトさん以外の現地の人々と、こんなに話した事はない。どうせならもう少し話をしたい。
「ほら、体が冷めて寒いでしょう。湯船に入ってはいかがでしょう。あなたがよろしければ、ぜひ隣に」
そう言われて体が冷えていることに気がついた、そんなに話に夢中になっていたようだ。ありがとうございますと一例を入れて、隣に座らせていただくことにした。こんなに美しい見た目の人とお風呂なんて入ったことがないが、緊張を悟られないように徹底した。熱すぎず、緩すぎないいい暖かさのお湯が俺の体を温める。ふーと一息ついた。
「あの、お父様というのは……」
聞きたかったことを質問した。俺の住んでいた世界について十分知れて満足したのか、彼は快く教えてくれた。
「申し遅れました、私の名前はリー・アダマント・グルーデン、宮廷画家をしております。ベルトルト様は私の父上です。王国史上最高の王が父親、そのような生まれを誇りに思いますが……」
まるで自分のことのようにベルトルトさん、自分の父親の自慢話をしていたが、急に雲行きが怪しくなった。
「私には魔術や錬金術、召喚術の才能が一切としてありませんでした。生まれながらに魔力がほぼゼロなのですよ。我が国では、王は国で1番の魔術を使うものですので、私は生まれながらに王の素質がなかったのです」
なかなかに辛い過去を持っていた。もっと聞けば、王族で魔術の才能がないものは前代未聞だそうで、呪われた第一王子なんて呼ばれているらしい。こんなんでろくに婚約者がいるわけもなく、三十路でまだ独身とのことだ。
「使用人ですら怖がってしまうのに、貴方はお優しいのですね……少し手を握っても良いですか?」
哀愁のある表情に綺麗な手、息を呑んだ。俺は気がつけば、差し出された手を握り返していた。
せっせと服を脱いだ。腕も脚も、へそ回りも露出している割には手間がかかる。手足に付いている鈴も錆びてしまうから取ろう。歩くたびにチリンチリンとなるのは流石に慣れたけど、一度意識してしまうと耳から離れない。
「失礼しまーす……」
バスタオル一枚を防御品にいざ侵入。まあ失礼しますと一声かけたけれど。浴場は想像通りものすごい大きかった。中央に大きな大浴場、周りには薬湯や寝転んで入れる湯船、さらには岩盤浴?なんかもあった。露天やサウナも常備されていて、風呂入るだけで1日潰せるぐらいの天国だ。
そしてもう1つ、めっちゃいい匂い。そうなんだ、いいお風呂って大きいだけじゃダメなんだ、いい匂いも必要かのか。甘くてそれでいてしつこくない、その空間にいる全ての人間を落ち着かせる上品の究極体系みたいな匂いだ。
「……だれだ、使用人ではなさそうだな」
水を打ったように静かになった。辺りがではない、俺の心がだ。浴場はあいも変わらずにお湯が揺らめいたり、流れている音が聞こえるだけだ。でも、それでも俺の心は真っ白になった。
大きな大浴場の隅で1人の男の人がいた。身長こそは俺よりちょびっと大きい程度で、多分ずっと年上、恐らく30代は下がらない。しなやかな筋肉、透き通るような白い肌。風呂場だからか高くに結んでいる長い髪も肌と同じぐらいに真っ白だ。眉間に皺がよっていて少し怖かったが、それを覆せるほどの美形だ、まさに絶世の美男子。同じ男ながらドキドキしてしまうほどの美貌の持ち主と、目が合ってしまった。
「誰だと聞いているのだが……」
質問をされてハッとした。さっきと比べて声が全く変わっていないことが逆に怖くて、少し力んだ。声までがかっこいいとかシンプルにずるいと心の中だけで思うことにした。
「えっと、、巳陽梓です。あ、怪しいものではなくて、ベルトルトさんの召喚魔法で異世界から来ました」
とりあえず情報を隠すことなく全て教える。別に隠す必要もないから本当に洗いざらいだ。ついでに深くお辞儀もしておいた。ここまで美形で、しかも怒っているとなるとメチャクチャ怖い。
「ベルトルト……ああ、お父様のことか」
「はい!そのお父様の……へ?」
お父様、ん? ベルトルトさんが父親?そうなの? いいやごめんなさい。つい敬語が乱れてしまいました。
「ええ大丈夫ですよ。そうですか、あずささんですか……ここら辺では珍しい発音ですね。異世界では、よくある訛りなのです?」
「はい。訛りというか、だいたい俺の住んでいる国の人間はみんなこんな名前というか」
その後もしどろもどろながら質疑応答は続いた。少しづつ声も優しくなるのが少し嬉しいと思う。俺の元いた世界に興味を持ってくれたのも嬉しかっだ。ベルトルトさん以外の現地の人々と、こんなに話した事はない。どうせならもう少し話をしたい。
「ほら、体が冷めて寒いでしょう。湯船に入ってはいかがでしょう。あなたがよろしければ、ぜひ隣に」
そう言われて体が冷えていることに気がついた、そんなに話に夢中になっていたようだ。ありがとうございますと一例を入れて、隣に座らせていただくことにした。こんなに美しい見た目の人とお風呂なんて入ったことがないが、緊張を悟られないように徹底した。熱すぎず、緩すぎないいい暖かさのお湯が俺の体を温める。ふーと一息ついた。
「あの、お父様というのは……」
聞きたかったことを質問した。俺の住んでいた世界について十分知れて満足したのか、彼は快く教えてくれた。
「申し遅れました、私の名前はリー・アダマント・グルーデン、宮廷画家をしております。ベルトルト様は私の父上です。王国史上最高の王が父親、そのような生まれを誇りに思いますが……」
まるで自分のことのようにベルトルトさん、自分の父親の自慢話をしていたが、急に雲行きが怪しくなった。
「私には魔術や錬金術、召喚術の才能が一切としてありませんでした。生まれながらに魔力がほぼゼロなのですよ。我が国では、王は国で1番の魔術を使うものですので、私は生まれながらに王の素質がなかったのです」
なかなかに辛い過去を持っていた。もっと聞けば、王族で魔術の才能がないものは前代未聞だそうで、呪われた第一王子なんて呼ばれているらしい。こんなんでろくに婚約者がいるわけもなく、三十路でまだ独身とのことだ。
「使用人ですら怖がってしまうのに、貴方はお優しいのですね……少し手を握っても良いですか?」
哀愁のある表情に綺麗な手、息を呑んだ。俺は気がつけば、差し出された手を握り返していた。
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