少女は淑女で最強不死者

きーぱー

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北ダンジョン編

16話 アサシン

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 魔法陣で飛ばされた先は、三角形の形をした異様なフロアーだった。奥に行くほど狭まる構造になり、壁や床の至る所に魔法陣が描かれている。
 何より驚かされたのは、空中を上下移動している石が1つ。フロアーから高さ15mのところを同じ軌道で動いていた。
 
 俺達は、乗ってきた魔法陣から出ると8層を抜けた場所から、ここに着くまでのマッピングを完成させる。続けてゼスは、このフロアーの各魔法陣を正確に書き写していく。少し、時間が掛かりそうだ…
 
 ゼスは、俺達に魔法陣を踏まないように注意を促す。
 
 「かざねさん たくや 魔法陣は触らないでくれ トラップの可能性が大だ。もう少しなんで待っててくれ」
 「うむ… 」
 「了解」

 「もういいかのう… 少しは時間があるようだし」

 風音は、そういうと腕を変化させ後方に伸ばすと何かを噛みつかせている。

 「ぐっ… 」

 僅かな声がすると、薄っすらと人の形をしたシルエットのようなものが浮き出てきた。それは、少しずつ色付いていった…

 「ぐっ… くそ 動けない」
 
 4層にいた、黒いローブパーティーと同じ物を被ってた。

 「しかし、お主は優秀じゃのう わしでなかったら気付くことさえできんかったろうに しかし、今回は相手が悪かったのう クックク」
 「何時からいたんだ… 風音は判っていたの? 」
 「4層から透明化していたわ おい 目的はなんじゃ? 」

 風音の質問が始まる。ここでゼスが、異変に気付き声を荒げる。

 「おいおい! なんてこった… どうして黒ローブがこんなところにいるんだよ! かざねさん どういうことだ!? なっ!? 何だその腕は… 」
 「ゼス 落ち着け 4層から、わしらを付けてきただけじゃ 透明になってな わしの腕の事はいい 気にするな 後でちゃんと説明する」
 「な… アサシンか!? 何故、俺達を… 」
 「お前はそっちに集中しろ 今聞き出すところじゃ 早く続けろ」
 「わかった… すぐ終わらすよ」
 
 ゼスは作業に戻り、風音の質問が再開された。黒ローブのアサシンは、風音の痺れ薬だろうか… 床に崩れ落ちている。

 「もう一度聞くぞ 目的はなんじゃ? 答えないようなら片足を潰す 脅しかどうかは自分の身体で確かめよ」

 風音は、黒ローブの首から蛇の口を離すと縮めて元の腕に戻す。

 「化け… 化け物め」

 痺れて動けないアサシンは、風音に向かって毒づいた。次の瞬間、風音は腕を上げて指を鳴らそうとする。俺は、後ろから風音の腕を掴んで止めに入いる。

 「ちょっ ちょっと風音!? 駄目だよ、いきなり足とか吹き飛ばしたら」
 「邪魔するでない すぐに答えない、こやつが悪かろう」
 「攻撃してきてないんだから もうちょっと待ってあげようよ あなたも素直に答えれば殺されたりしないと思うから 多分だけど… 」

 すると、渋々だがアサシンは風音の質問に答えはじめる。

 普段は、4層にいた仲間と裏家業と呼ばれる仕事を生業としているのだが、今回は髭親父の依頼でダンジョン内で一組のパーティーを処分して欲しいと言われたらしい。他は一切聞かされていないという。

 「ほほう で、お前の仲間もアサシンなのか? 」
 「アサシンは、わたしだけだ… 」
 「あの髭親父は何者なんじゃ? 」
 「ドリボラを拠点に活動してるバーデンという糞野郎さ 表向きは冒険者だが、裏家業も目立たぬようやっている」
 「お前の名は? 」
 「… 」
 「わしの名は風音じゃ もう一度、聞こう お前の名は? 」
 「カリナ… 」

 風音は、何時もの様に煙管を取り出し吹かしはじめるとカリナに言う。

 「カリナ 命は惜しいか? 」
 「当たり前だ! 死にたくないから… 生きるために何でもやってきた! 」
 「ふむ… なら、わしと勝負せんか? 勝てたら見逃してやる」
 「本当だろうな? 」
 「嘘は言わん この手の嘘は、わしも嫌いじゃ わしらを殺しに来たお前ら全員見逃してやる 絶対じゃ」
 「わかった… 受けるよ その勝負 で、私が負けたら? 」
 「わしの部下になれ」
 「部下? 何の為にだ!? 殺しに来た相手を部下にして どうする気だ? 」
 「んー どうしようかのう まあ 終わってから考えるかのう クック」
 
 風音は一体、何を考えているんだか… 

 風音の提案で勝負することになった、カリナは両脇に挿した、形の変わった刀を抜き構える。
 
「なんじゃその武器は 見た事ないのう なんというんじゃ? 」

 風音は、はじめて見る武器にカリナに質問するとカリナは答えた。

 「これは我らアサシンの武器 カタールだ」
 「ほほう で、それは毒じゃな クックク よかろう かかってこい」

 カリナは、風音にそう言われた瞬間に動いた。早い… しかも、足音すらしなかった。そして、会話から察するとカタールの刃には毒が塗られている。

 腰を低くし、風音の間合いに入るカリナ。左のカタールで風音の顔に切りかかる。

 スッ!

 風音の左頬からツツッーと血が流れるのを見たカリナは、ニヤリとすると両足を大きく開脚させて体勢を低くすると、風音の左足を右手に握ったカタールで切りつけた。

 ビシャッ

 足の傷は左頬よりも深く切り裂いたようだ。血の量で判る… 

 「おおっ カリナは身体が柔らかいのう 素早さも合格じゃ」

 何のテストをしてるんだか… 風音は楽しそうに評する。片や、カリナの表情はギョッとしていた。

 「でも、毒に頼りすぎじゃな 切り込みが甘いわ」

 すでに、風音が切り裂かれた左の頬と左足の傷は塞がっていた。

 「な… 毒が効かないのか!? 傷口も塞がっているだと!? 」

 カリナは、素早く立ち上がり間合いを取り直す。

 「まあ そういうことじゃ どれどれ こっちも少しは動くかのう」

 そう言うと、風音は高速移動でカリナの後ろを取る。肩めがけて手刀を撃ち込もうとする風音に、カリナは反応するものの間に合わない。手刀は首筋を捕らえるとカリナは、そのまま気絶してしまった。

 ▽▽▽

 …… …

 どれくらい経ったのだろう… カリナはハッキリしない感覚で身体を起こすと頭と肩に激しい痛みを感じた。

 「くっ… いたたた… 」

 痛みで目が覚めると横から声がする。

 「うん 起きたか カリナ お前さんの負けじゃな クックク」

 煙管を銜える風音の姿がそこにあった。

 ズドーン!!

 次の瞬間、けたたましい音がした。フロアーの中央で、今まで見た事もない大きさの巨大蛇が2匹、戦闘中であった。

 カリナはその場で、立ち上がり身構えた。

 「何してる まだ横になっとれ」

 ぷかぁー と、煙を吐きながら風音が言う。託也とゼスも、フロアーに胡坐をかいて巨大蛇が戦っているのを眺めていた…
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