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第七話 ギリオチーナへの罰
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放課後の教室で私の“白薔薇”に飽きたと話していたら、それを聞いたかのようにボリスが学園に来なくなった。
とっくの昔に飽きていたからアレのことはどうでも良いのだけど。
でもあの伯爵家の小娘はもっと苦しめてやりたかったわ。
ボリスがあの小娘と婚約してから、毎日楽し気に過ごしているのが気に食わなかった。
私に選ばれなかったのだから、絶望の底に沈んで自害でもすれば良かったのに。
王家の血も引かない、私の“白薔薇”のように美しくもないボリスなんて必要としてはいないけれど、私がいなくても幸せそうにしているのは腹が立ったのよね。
とりあえずあの小娘のせいでボリスが登校しなくなったのだと噂をばら撒かせたわ。
マイケロフ公爵家の娘で従妹のポリーナに莫迦なことをするなとうるさく言われたけれど、お父様の妹の子で王家の血を引いていても家臣の娘に過ぎないあの子に文句を言われる筋合いはないわ。
文句を言われたときにその場を去るのは戦略的撤退というヤツね。ふたつも年下の家臣の娘ごときに怯えているわけではないのよ。
どんなに噂をばら撒いても、ポリーナやミハイロフ侯爵家の小僧が火消しするからなかなか広がらないのよね。
登校してこないボリスへの生徒達の関心も薄いみたいだし。
あの伯爵家の小娘を痛めつける良い方法はないかしら。ポリーナはあの小娘を気に入っているみたいだから、小娘が傷つけば自分も苦しむでしょうし。
特に良い方法を思いつかないまま、退屈な日々が過ぎていく。
ああ、もういっそ隣国に嫁ぎたいわ。
そして“白薔薇”とふたりっきりで過ごすの。ボリスとあの小娘なんかより、ずっとずっと幸せになれるはずよ。大公の子息は高貴な血筋の私と結婚するだけで満足して、文句なんて言わないと思うの。
そんなことを考えていたら、国王であるお父様と王太子のお兄様に呼び出された。
なんのご用かしら。
お話があるのなら夕食の際にでも言ってくだされば良いのに。あ、もしかして公式行事に関すること? 隣国に嫁ぐのが早まったというのなら嬉しいわ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「“白薔薇”を私の護衛から外すと言うの?」
愛しい“白薔薇”にエスコートされてお父様の執務室へ辿り着くと、椅子を勧められることもなく思ってもみなかった言葉を投げかけられた。
お兄様が憎々し気な視線を私に寄越す。
お母様が私を産み落としてお亡くなりになったことを私のせいだと思っているのね。
「本当は隣国の大公家との婚約が決まった時点でそうするべきだったのですよ、父上」
「そんな酷いわ! 学園で危険な目に遭ったらどうするの?」
「ギリオチーナ。お前はもう学園に行く必要はない。卒業まで王宮で過ごせ」
「お兄様には言っていないわ! お父様! お兄様をお叱りになって!」
お父様は私から視線を逸らし、お兄様を見つめた。
お兄様はお父様を睨みつける。
睨みつけられたお父様は俯いた。
「母を亡くした哀れな娘だと、父上が甘やかして育てたのがこの結果です。王家の血を引くものにしか嫁ぎたくないと駄々を捏ねた末、せっかく結ばれた隣国の大公家との縁を無下にして男と遊び回り、あまつさえ恥でしかないそれを取り巻きに噂させるなどと!」
「ボリスは向こうから近づいてきたのよ」
「黙れ! 彼が婚約者と仲睦まじくしているのに嫉妬して自分からすり寄って行ったことはわかっているんだ」
「嫉妬なんかしてないわ。ボリスなんかいらないもの!」
お兄様は溜息をついて、今度は私を睨みつけた。
とっくの昔に飽きていたからアレのことはどうでも良いのだけど。
でもあの伯爵家の小娘はもっと苦しめてやりたかったわ。
ボリスがあの小娘と婚約してから、毎日楽し気に過ごしているのが気に食わなかった。
私に選ばれなかったのだから、絶望の底に沈んで自害でもすれば良かったのに。
王家の血も引かない、私の“白薔薇”のように美しくもないボリスなんて必要としてはいないけれど、私がいなくても幸せそうにしているのは腹が立ったのよね。
とりあえずあの小娘のせいでボリスが登校しなくなったのだと噂をばら撒かせたわ。
マイケロフ公爵家の娘で従妹のポリーナに莫迦なことをするなとうるさく言われたけれど、お父様の妹の子で王家の血を引いていても家臣の娘に過ぎないあの子に文句を言われる筋合いはないわ。
文句を言われたときにその場を去るのは戦略的撤退というヤツね。ふたつも年下の家臣の娘ごときに怯えているわけではないのよ。
どんなに噂をばら撒いても、ポリーナやミハイロフ侯爵家の小僧が火消しするからなかなか広がらないのよね。
登校してこないボリスへの生徒達の関心も薄いみたいだし。
あの伯爵家の小娘を痛めつける良い方法はないかしら。ポリーナはあの小娘を気に入っているみたいだから、小娘が傷つけば自分も苦しむでしょうし。
特に良い方法を思いつかないまま、退屈な日々が過ぎていく。
ああ、もういっそ隣国に嫁ぎたいわ。
そして“白薔薇”とふたりっきりで過ごすの。ボリスとあの小娘なんかより、ずっとずっと幸せになれるはずよ。大公の子息は高貴な血筋の私と結婚するだけで満足して、文句なんて言わないと思うの。
そんなことを考えていたら、国王であるお父様と王太子のお兄様に呼び出された。
なんのご用かしら。
お話があるのなら夕食の際にでも言ってくだされば良いのに。あ、もしかして公式行事に関すること? 隣国に嫁ぐのが早まったというのなら嬉しいわ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「“白薔薇”を私の護衛から外すと言うの?」
愛しい“白薔薇”にエスコートされてお父様の執務室へ辿り着くと、椅子を勧められることもなく思ってもみなかった言葉を投げかけられた。
お兄様が憎々し気な視線を私に寄越す。
お母様が私を産み落としてお亡くなりになったことを私のせいだと思っているのね。
「本当は隣国の大公家との婚約が決まった時点でそうするべきだったのですよ、父上」
「そんな酷いわ! 学園で危険な目に遭ったらどうするの?」
「ギリオチーナ。お前はもう学園に行く必要はない。卒業まで王宮で過ごせ」
「お兄様には言っていないわ! お父様! お兄様をお叱りになって!」
お父様は私から視線を逸らし、お兄様を見つめた。
お兄様はお父様を睨みつける。
睨みつけられたお父様は俯いた。
「母を亡くした哀れな娘だと、父上が甘やかして育てたのがこの結果です。王家の血を引くものにしか嫁ぎたくないと駄々を捏ねた末、せっかく結ばれた隣国の大公家との縁を無下にして男と遊び回り、あまつさえ恥でしかないそれを取り巻きに噂させるなどと!」
「ボリスは向こうから近づいてきたのよ」
「黙れ! 彼が婚約者と仲睦まじくしているのに嫉妬して自分からすり寄って行ったことはわかっているんだ」
「嫉妬なんかしてないわ。ボリスなんかいらないもの!」
お兄様は溜息をついて、今度は私を睨みつけた。
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