3 / 8
第三話 男爵令嬢②
しおりを挟む
王家の影は男爵令嬢に憐れむような視線を向ける。
「身分の差を否定する発言から、あの男は身分制度を破壊して国を害しようとしている思想犯だと思われていました。敵国や反政府組織とのつながりを探るために泳がされていたのですが、実際はただのロクデナシでしかありませんでした」
「先生はロクデナシなんかじゃないっ!」
「高位貴族に劣等感を持つ低位貴族を煽てて心を掴み、ものにした令嬢達に順列をつけて競い合わせるような男はロクデナシでしかありませんよ。貴女が王太子殿下に近づいたのだって、彼の命令だったからでしょう?」
「そうよ! アタシは一番美人で可愛かったから未来の国母に選ばれたのよ! ほかの女達は学園長みたいなヒヒ爺に売られてたけどね!」
男爵令嬢が自慢げに語る言葉を聞いて、王太子は教室を見回した。
青い顔で俯いている令嬢と、目を丸くして固まっている令嬢がいる。青い顔をしているのは担任教師と仲が良かった令嬢で、目を丸くしているのは担任教師を囲む輪には入っていなかった令嬢だ。
どちらの令嬢も王太子と男爵令嬢の関係を応援し、公爵令嬢に冷たく当たっていた。
「王太子殿下と男爵令嬢の関係をきちんと非難していた公爵令嬢以外の人間は、あの男とともに王家簒奪を企んでいた容疑がかかっています」
「そんなっ!」
だれかの悲痛な叫びが教室に響き渡った。
担任教師が逮捕されて拷問されていると聞いた衝撃で興奮していたらしい男爵令嬢も自分の置かれている状況にようやく気づいたのか、血の気の抜けた顔で椅子に座る。
「まだ学園を卒業する前ということですぐに逮捕はされませんが、明日以降皆さんには近衛騎士による尋問があります。それと……貴女は確実に共犯者ですよね? どうして捕まっていないのだと思います? 王太子殿下に真実を見せるためですよ」
王家の影が合図をすると、教室の外から近衛騎士が数人入ってきて男爵令嬢のところへ向かった。
「子どもに罪はありませんので、貴女の拷問と処刑は出産が終わってからです。それまでは神殿で軟禁され監視されることになっています」
「ちょ! なんなのよ、触らないでっ! 王子っ! 助けてよ、王子っ! アタシを愛しているんでしょう?」
近衛騎士に両腕を掴まれた男爵令嬢が王太子に助けを求める。先ほど『穢れた王家の血なんてどうなってもいい』と叫んだのと同じ口で、だ。
王太子は男爵令嬢から顔を背けた。
彼女が喚き立てながら連行されていった後で、べつの近衛騎士達が入ってきて例の子爵令息を捕縛した。罪状は公爵令嬢に対する殺人未遂だ。これまで逮捕されなかったのは担任教師や男爵令嬢を油断させるためだったという。
「学園長もすでに逮捕済みです。あの男に女を支給されて王太子殿下と男爵令嬢の関係を見て見ぬふりをしていた教師達も尋問中なので、今日からしばらくは私が授業を受け持ちます。……教科書を開いてください」
王家の影の言葉に教科書を開いたものはわずかだった。
教室にいるほとんどの生徒が魂が抜けたような顔で呆けている。
王太子は教科書こそ開いたものの、王家の影が始めた授業の内容が頭に入ってくることはなかった。
「身分の差を否定する発言から、あの男は身分制度を破壊して国を害しようとしている思想犯だと思われていました。敵国や反政府組織とのつながりを探るために泳がされていたのですが、実際はただのロクデナシでしかありませんでした」
「先生はロクデナシなんかじゃないっ!」
「高位貴族に劣等感を持つ低位貴族を煽てて心を掴み、ものにした令嬢達に順列をつけて競い合わせるような男はロクデナシでしかありませんよ。貴女が王太子殿下に近づいたのだって、彼の命令だったからでしょう?」
「そうよ! アタシは一番美人で可愛かったから未来の国母に選ばれたのよ! ほかの女達は学園長みたいなヒヒ爺に売られてたけどね!」
男爵令嬢が自慢げに語る言葉を聞いて、王太子は教室を見回した。
青い顔で俯いている令嬢と、目を丸くして固まっている令嬢がいる。青い顔をしているのは担任教師と仲が良かった令嬢で、目を丸くしているのは担任教師を囲む輪には入っていなかった令嬢だ。
どちらの令嬢も王太子と男爵令嬢の関係を応援し、公爵令嬢に冷たく当たっていた。
「王太子殿下と男爵令嬢の関係をきちんと非難していた公爵令嬢以外の人間は、あの男とともに王家簒奪を企んでいた容疑がかかっています」
「そんなっ!」
だれかの悲痛な叫びが教室に響き渡った。
担任教師が逮捕されて拷問されていると聞いた衝撃で興奮していたらしい男爵令嬢も自分の置かれている状況にようやく気づいたのか、血の気の抜けた顔で椅子に座る。
「まだ学園を卒業する前ということですぐに逮捕はされませんが、明日以降皆さんには近衛騎士による尋問があります。それと……貴女は確実に共犯者ですよね? どうして捕まっていないのだと思います? 王太子殿下に真実を見せるためですよ」
王家の影が合図をすると、教室の外から近衛騎士が数人入ってきて男爵令嬢のところへ向かった。
「子どもに罪はありませんので、貴女の拷問と処刑は出産が終わってからです。それまでは神殿で軟禁され監視されることになっています」
「ちょ! なんなのよ、触らないでっ! 王子っ! 助けてよ、王子っ! アタシを愛しているんでしょう?」
近衛騎士に両腕を掴まれた男爵令嬢が王太子に助けを求める。先ほど『穢れた王家の血なんてどうなってもいい』と叫んだのと同じ口で、だ。
王太子は男爵令嬢から顔を背けた。
彼女が喚き立てながら連行されていった後で、べつの近衛騎士達が入ってきて例の子爵令息を捕縛した。罪状は公爵令嬢に対する殺人未遂だ。これまで逮捕されなかったのは担任教師や男爵令嬢を油断させるためだったという。
「学園長もすでに逮捕済みです。あの男に女を支給されて王太子殿下と男爵令嬢の関係を見て見ぬふりをしていた教師達も尋問中なので、今日からしばらくは私が授業を受け持ちます。……教科書を開いてください」
王家の影の言葉に教科書を開いたものはわずかだった。
教室にいるほとんどの生徒が魂が抜けたような顔で呆けている。
王太子は教科書こそ開いたものの、王家の影が始めた授業の内容が頭に入ってくることはなかった。
3,807
あなたにおすすめの小説
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
貴方もヒロインのところに行くのね? [完]
風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは
アカデミーに入学すると生活が一変し
てしまった
友人となったサブリナはマデリーンと
仲良くなった男性を次々と奪っていき
そしてマデリーンに愛を告白した
バーレンまでもがサブリナと一緒に居た
マデリーンは過去に決別して
隣国へと旅立ち新しい生活を送る。
そして帰国したマデリーンは
目を引く美しい蝶になっていた
比べないでください
わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」
「ビクトリアならそんなことは言わない」
前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。
もう、うんざりです。
そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる