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21章

569話 実力ありきの覆せない運

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「だあー!クッソ疲れる!」

 ライフルを持ったまま線路の横を走りつつ、文句をぶー垂れる。さっさと落石を破壊して通行可能にしたのは良いけど、線路まで変形したからそれの修理をしなきゃならんって事で走っている。結構な勢いで怒られたが、岩は破壊したから、とりあえず直すまで走れって言われた結果がこれ。

「モンスターが外に出たりって事はないみたいだから、洞窟……坑道かな。トラブった所の坑道に入って、中のモンスターぶちのめして、恩を売ってあれこれしてもらおうってクエストだよなあ!」

 リアルで疲れるって訳じゃないけど、こうずっと走ってると精神的にしんどい。移動速度の遅いゲームって大体クソ寄りでストレスたまるし。とは言え、この現状に関しては私の移動速度って言うよりも単純に移動距離が長いってのが問題なんだけど。

「文明の利器が欲しい!なあー!」

 ひたすら走り、ぶーぶーと文句を言いつつ上がり切る。ぜいぜいと息を切らしながら、暫く走ったのちにようやく目的地でもある坑道の入り口に到着して状況を確認。

「あんた、中に入るのか?」
「はあ……はあ……ちょっと、待って……」

 膝に手を付いて息を整える。リアルで走ってる訳じゃないから息が上がってる訳じゃないんだけど、それでもやっぱ精神的に疲れる。移動速度が上がったり、壁を駆け上がれるスキルもあるみたいだし、サブは忍者なんだからそういうの取っておけばよかった。

「そろそろ、3次元的な動きも、出来るように、しよ……」
「で、中に入るのか?」
「入るって…のっ!」 

 ぐっと起き上り、銃を構えた状態で中を覗く。まあいたって普通の坑道、中でモンスターがいたってのを考えると、急に湧いてくる可能性は高い。なのでいつも通りのトラッカーを使用してゆっくりと中に侵入、入り口すぐ30歩目くらいで急に視界が振られ、暗転。





「……いくら脆いからって、急すぎる」

 どの辺まで落ちたのか分からんが、立ち上がって状況を確認。スキル周りは使えるし、特にHPが減っていたりもなし、敵影も無ければ、だだっ広い広場のような所にいる。

「アイテムと装備がごっそりねえな」

 何時ものように銃を構えてと思ったがどこかに落としたのか得物がない。ついでに言えばいつも仕込んでいる銃弾も、ガンベルトごとなくなっている。防具と言うか来ている物はそのままだが、性能が落ちている。

「ちょっと探索しよう」

 とりあえず移動を開始、広場から通路に出て暫く進む。特に光源が無いと言う事もないので通路は明るく、先を見通せる。とりあえず装備やらを回収して、このダンジョンを攻略しないといけない。めんどうな手順を踏ませる……と。

「うーぬ、敵か……」

 通路を歩き、また違う広場の入り口から中を見てどうするかを考える。敵は何ていうかまあ……2足歩行のモグラみたいな奴。あんまり可愛い顔はしていない。

「他に何かあれば……っと?」

 様子を見ているうちに気が付いたことが一つ、2足歩行モグラの近くにハンドガンがぽろっと落ちている。別にそれをどうこうしようという感じもなく、辺りを見回し続けているだけなのもなんか違和感がある。

「なんで動かない?」

 様子を見ているだけで特に移動しているわけでもなく、索敵って感じでもない。それじゃあ、一気に駆け出してハンドガン拾って撃ち倒して次ってのが良い感じか。
 そういう訳で一旦通路に引っ込み、銃が落ちていたポイントを思い出してから一気に広場に入り込んで、銃の所に一直線。まあ勿論モグラもこっちを向いてなんかよくわからん奇声を発しながら突っ込んでくるが、こっちの方が速く到達。スライディングで滑りながらハンドガンを手に取り、手早くコッキングしてから反転、狙いを付けて一発。

「……私の銃じゃねえな、これ」

 ポリゴン状に消えていくモグラを見ながら使った銃を見てまじまじと。一応マガジンを抜いて残弾を確認、とりあえずあと7発は撃てるのでマガジンを戻してもう一度周りを見て他に何かないか見るが、特にない。

「新しい通路が二つ、さて、どっちに行くか……」

 そんな事を言いつつ、とりあえず目についた方の通路に歩いていくと、通路に出る少し前のあたりでモグラが通路から広場へとやってくるので、足が止まる。と、同時にモグラも動かなくなる。

「……まさか」

 少し思いついたので2,3歩後ろに下がってみると、モグラもこちらに距離を詰めてくる。

「ローグライクシステムか」

 こっちが動けば向こうも動く、こっちが止まれば向こうも止まる。ちょっともったいないが一発わざと外してみると、向こうが1歩分こっちに近づいてくる。そういえばPCのゲームで、敵が撃った弾を避けながらアクションするってFPSのゲームがあったっけ。やっぱ色々ゲームをしているとこういう時に混乱しないよね。

「ま、分かってりゃ簡単よ」

 狙いを付けてゆっくりと引き金を絞り、一発。攻撃一回分でカウントされるから向こうも1歩だけしか動かないので、ローグライクにおける遠距離攻撃が如何に強いかってのがよくわかる……はずだった。

「おい、ジャムるってマジか」

 がっつりと排莢部分に銃弾が噛んでしまったのでコッキング、それだけで1歩近づいてくる。こういう時は慌てずにもう一度射撃。次はしっかり命中して倒せたので火力は申し分なし、問題は攻撃成功率って所か。

「これで残り4発、どういう感じに敵がわいてやってくるか次第なのと……ジャムった弾は使えないから完全に撃ち切り用で割り切るか……杖みたいだ」

 色んなローグライクをやって来たからこの手のシステムはお手の物よ。合成までは流石にないと思うので、多分太った商人が出てくる奴の1作目のシステムがベースだと思う。

「……なんにせよ、楽しめるじゃないの」

 こっからは実力と運の勝負って事だ。
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