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13章

345話 歳の差あれど、中身は一緒

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「諦めないって大事だな」
「何言ってんのよ、予定通りだって」

 雪山の向こう側、ぽっかりと開いている洞窟の前で焚火をして暖を取りつつ、一服と一杯いれながらどうするかを相談中……と、言ってもダンジョンアタックするってのは既に決まっているのでその前の休憩なだけでもある。
 それにしてもこのダンジョンを見つけるまで結構紆余曲折あったよ。普通にクレバスにはまって死にかける、どっかの誰かが派手にやらかしたのか雪崩が起きて巻き込まれる、モンスターにやられる事は無かったが、環境的にヤバかった時が表よりも多かったわ。
 
「でも楽しかっただろ」
「ぬかせ」

 状態異常の確認をし、焚火を消してから早速のダンジョンアタック。そういえば2人で組んでどこかに行くって初めてじゃないかな。




 松明が必要かなと思ったがそんな事もなく、なんていうか氷河の中を見れますってツアーとかによくある、水色の明らかに冷たいですって氷の中を進んでいくようなダンジョンになっている。勿論だが、足元も氷、壁も氷、天井も氷なのでアイゼンは外せない。
 防寒に関しては風がなく外よりは寒くはないが、元が氷なので全体的にひんやりとしている状態になってはいる。とりあえずの問題としては足元の氷だな、アイゼンがしっかり刺さってないと滑って転んで余計な隙を生むわけだし、なんだったらすっころんでダメージって可能性もある。外のときは雪がクッションになっていたので特に問題もなくそのまま行動できていたが、氷はかてえ。冬場のほうが骨折するやつ多いんだよな、雪国だと。

「防寒はコート一枚でも問題なさそうね」
「転ぶのだけが問題か」
「前衛のあんたがすっころぶとカバーしにくいんだから、気をつけなさいよ」
「言われんでもわかってる」

 相変わらずの感じでそのままダンジョンの探索を開始する。中のモンスターも相変わらず代わり映えがしないのだが、沸きの量とアクティブの度合いが外よりもきつめの設定にされているので、そこも注意する点といえば注意する点だろう。
 やばそうなのはサメ……ではなく、オークのほうが多いのでそっちのほうが気をつける対象になっているのは外と違うところのひとつか。外のときはオークの索敵が甘いので簡単に逃げられたのだが、逃げ場のないダンジョンじゃ倒さないといけない場合が出る。

「オークの対処は?」
「散々やってきたから問題ない、サメの不意打ちだけが不安要素だろうな」
「そう?あんたの槍のリーチがあるんだから、前に突き出して待っていればよくね?」
「正面からならいけるか」
「まあ、だめだったら死ぬ前に口の中に銃突っ込んでぶっ放すわ」

 やられた時にやった反撃だな、下手したら死ぬ可能性は高いけど前もいるし、まあどうにかなるだろ。

「……で、目的は?」
「ダンジョン内にある採掘ポイントだけど、氷しか取れなかったらどうしよっか」
「ロックで楽しめるから、それはそれでありだな」
「アル中まっしぐらやんけ」
「ゲームじゃ幾ら飲んでも肝臓は悪くならん」

 もっともらしいことを言っているが、ただのアル中だよ。なんだったら幾らでも飲めるから無限に楽しめるみたいな感じににかっと笑っている。
 
「後は火炎瓶や爆弾はつかえないか。上にツララとかできてるし、下手に崩して頭に刺さったらしゃれにならん」
「リアルじゃ本当に死ぬんだったか」
「毎年十人くらいは死んでるねー、暖かい日に軒下に行ってそのままとかなー」

 雪や氷ってマジで死ぬからなあ、軒下には近づかないって鉄則を守れない小学生あたりは結構怪我してるし、最悪死んでる。
 ゲーム内としては火炎瓶の熱、爆破物の振動でツララが落ちて、避けようがないのに範囲攻撃を貰うってのは本当に余計なダメージよ。

「モンスターさえどうにかなればいい観光名所ね」
「ダンジョンは流石に鑑賞モードは使えないらしいからな……と、オークだな」
「素手なら余裕じゃね」
「油断するなよ」

 素手のオークがのしのしと歩いてきて髭親父に一発殴りかかるので、それを槍の柄で受けてからそのまま振り下ろしの攻撃を繰り出すが、分厚い皮膚に阻まれてそこまで深くは切りつけられない。
 攻撃をもらってオーク自体はぶもーっと鳴き声を発してさらに攻撃、と思いきやスレッジハンマーの形で握って地面をごんごんとたたき始める。

「……上への防御ってどうしよっか」
「やってみる、攻撃を任せるぞ」
「あいよ」

 ぐらぐらと揺れ、上にあったツララが落ちてくるので、髭親父が槍を頭上で高速回転させ、硬質な音をさせながら防御をするので、追撃に来るオークに対しては私がCHで足止め射撃。
 流石に何発も入れなきゃ倒せない相手ではあるが、足に当てるとヒットストップがかかり、侵攻を少しずらせられる。大体パーティ組んでいるときにいつもやっているパターンの攻撃。
 ツララ自体は一回落ちたら暫くは発生しないようなのでその間にオークの撃破を狙いにいく。このときやばいのはあの地面を叩く攻撃で他のモンスターがリンクしてこっちに来るのも含めてかな。

「止めたぞ」
「ああ」

 怯んで一旦止まったオークがまた動き出すのにあわせて髭親父の突き攻撃。スクリューというかひねりを加えた抉るような一撃で右肩を吹き飛ばす。

「ひゅー、やるう」
「良いから追撃」
「わかってるわかってる」

 右肩を吹き飛ばされ、体勢を戻しにかかるので左膝を狙ってCHで打ち抜き、がくんと体勢が崩れて正面、大体まっすぐ槍を構えると頭に当たる位置に落ちてくるので髭親父がさらに追撃して頭に一発。全年齢のゲームなのでスプラッタにはならないが、ポリゴンの粒子が飛び散り、切断面はモザイクがかかるように荒いポリゴンで隠されるのだが、そのまま前のめりに倒れて全体が粒子上になって消滅していく。

「ランサーとして強いのに何であんなに酒造をやってるのやら」
「ランサーは実益、酒造は趣味、だからな」
「ふーむ……とりあえずオークの特殊行動含めて浅いところで見れたのは行幸」
「もうツララはできているな、うまいことやればこっちも使えるかもしれんぞ」
「寒冷地仕様で皮が厚いのもネックかもね、あいつ裸足だったわ」
「水でもまいてやるか」

 なんだかんだでえぐいことを思いつくな。氷に水をうすーく伸ばしてぴったり張り付かせるって中々考え付かないわ。思いっきり冷えた鉄をくっつけて引き剥がすってのも今思いついたけど、それはそれでえぐいわ。

「下手に撒くと滑りよく突っ込んでくるかもしれないから状況見つつ、やれるならやってみよっか」
「攻撃手段と突破手段が多いことに越した事はないだろうからな」
「ま、それもそうねー、ツララの生かし方もこのダンジョンをクリアするのに必須かもしれんし、久々にダンジョンくると楽しいわ」
「それは何より」

 上を見ればもう新しいツララができているので、ここのダンジョン特有のギミックってことか。こういうのを駆使しないと一方的に使われるから、いい感じに生かしておきたい。
 
「細かいモンスターがいるならツララ殲滅できそうかな、オークは面の皮厚いから特攻みたいな感じにやってきたしねー」
「汎用系のモンスターってのはそこそこ苦戦するように設定されてるってことだろう、2体同時あたりもやておきたい」
「あー、そうね、複数戦闘のパターンも見つけたいね」

 しばらく歩きつつ回復を入れながらどう対処しようかと相談するのだが……いや、目的はそっちじゃなくね。
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