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11章

300話 不遇からの優遇

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 全然攻撃通らないでやんの。
 ファイアエンチャントした銃の攻撃に関しては、エンチャントした分のダメージは入ってるみたいだけど、微ダメだったので殆ど効果無し。
 流石にLv35の相手なのでHPは高いし、呪詛のダメージも、弱いとは言え、魔法防御のない私には刺さりまくっている。ついでにランダム状態異常が色々出てくるのも厄介で、耐性を上げていない私にはやっぱり刺さりまくり。
 HPポーションをちびちび飲みながら距離を取って魔法弾と呪詛の撃ち合いをするわけだが、やられて分かる貫通系攻撃の嫌な部分よ。FWSを使って散々やっていた私が何を言ってんだって話になるのだが、こういうちょーっとした搦め手相手に対して弱い気がするな。
 この間のボスモンスターもそうだったけど、分離やHPゲージ2本以上持っている敵が出てきそうなんだよなあ。
 ああ、そうそう、何でこうのんびりと考えているっていう話なんだけど、絶賛石化中で行動不能状態になっている。これ、視界が固定されているし、動けないし、メニューも開けない。代わりにあと何秒で石化が解けますって表示が常にあるな。
 で、石化している状態は一応無敵状態になってるらしく、強力な物理攻撃で粉々にされない限りは大丈夫そうだ。

(なーんて思ってるとだいたいはそうなるんよね)

 視界の端にちらちらとドレイクセットが見えるので、多分破壊されるかな。
 死霊に関しては完全に石化からの回復待ちで思いっきり待機しているし、完全に詰んでるわ、これ。

(ドレイクが殴りに来ない、そのうえで石化が解けてからの次の呪詛なり魔法攻撃に耐えて反撃は魔法を連打って所かなあ……)

 んー、どうしたものか。せめてもう少しカッコいいポーズのままで石化したかった。座って一息ついた所で食らってそのまま固まってるとか間抜けにも程がある。
 何て事を考えていたらそろそろ石化解除10秒前。トータルで1分も固まるってどんだけ強力なんだよ、この状態異常。そういえばパーティ全員を固める魔法なんてものがあったっけか、あれはいまだに使い所がよくわからんけど、とにかく現状をどうにかしないと行けないのが今の一番の問題だよ。



「なーんて、うまい事いけば良かったんだけどねー」

 クランハウスの2F、いつもの椅子に座りながら葉巻をふいーっと吹かしつつ、わしゃわしゃとサイオンの頭を撫でまわしてストレス発散。
 あの石化の解除5秒前、ドレイクに見つかってそのままフルスイングで攻撃されて真っ二つ、HPゲージが割れるような音がすると共にあっという間にこっちに戻された。
 
「状態異常と魔法防御、合わせて自分の武器の調達……んー……」

 わしゃわしゃ撫でまわしてくしゃくしゃになったサイオンの髪を整えながら金髪エルフの作業場に。
 ……うーん、今日はいないっぽい、結構リアルが忙しい時があるって言っていたし、其れかもしれない。
 だったらこういう時は、あいつの師匠に頼むのがいつものパターン。



「ってわけだから防具作って」
「アカメちゃん、折角菖蒲ちゃんがいるのに使ってあげないのぉ?」
「いい防具作ってくれるんだけど、まだまだなのよねー……あと仕上げに結構時間掛かるのも」
「職人気質が強いとしょうがないのよねぇ……それで、どんなのほしいわけ」
「状態異常耐性、魔法防御、ステータスアップなんてあったらすっごい助かる」
「うーん、ちょーっと難しいわね……魔法防御はどうにかなるけど、状態異常とステアップは裁縫じゃ組み込みがねぇ」

 裁縫じゃなきゃ良いって事は、そうだな錬金……じゃないな、細工か?
 こう、色々と耐性のあるものをしっかりと編み込んだり、装飾として付与したり、ってイメージ。
 って言うか、此処に来てついにゴリマッチョもカバーできない領域に入ってくるとは。

「マジかー……じゃあ、いつも通りの今より強い防具とかは」
「ごめんねアカメちゃん、其れ以上になると、ね?」

 親指と人差し指で輪っかを作ってこっちに見せつけてくる。
 うん、まあ、金がいるってのは当たり前だし、いつもしっかり払ってやってるじゃないの。

「とりあえず幾らいる?」
「……ちょっと思ったんだけど、その耐性ってのは常に必要なわけ?」
「んー……一時的と言えば一時的な物だけど、なんかあるん」
「アカメちゃん、料理、興味ない?」
「そーいや、最近インスタントばっかだな」

 今日の晩御飯も手抜きだし、もうちょっと人らしい食事を……。

「ちがうわよぉ、料理アイテムってあるじゃない?あれで一時的に強化するってのは?」
「あー……その発想は無かった」
「色々あるみたいだし、見てきたらどう?強めの防具は用意したげるから、ほーら、いったいった」

 そのまま背中をぐいぐいと押されてクランショップを追い出される。地味に防具も用意してくれるってのが優しい奴だわ。

 それにしても料理か、所謂バフ系アイテムって今まで使った事が無いから、発想すらなかった。ゲームバランスって言うかゲームテンポが悪くなるからって消された満腹度の変わりにバフ効果が付く、単純に使えるアイテムとして転生したおかげで、ガンナーと全く反対で超不遇から一気に超優遇職になった数少ない奴。羨ましすぎて嫉妬するわ。

「……料理人でも探して、囲ってやるのもいいかもねー」

 葉巻を揺らして楽しそうにしつつ露店巡りを開始する。
 
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