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7章

203話 新勢力

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「いやー、助かったわー、配信してるのも許してくれるし」
「まあ、全然いいんですけど……ここから巻き返すんですか?」
「そりゃもちろん、ボスが前にいるからねー」
「クラン内で競争でもしてるんですか?」
「そうそう、うちのクランマスターを倒したら全財産賭けるって勝負でさあ?」

 そういや、配信してる時にこの話するの初めてだったっけ?
 って言うかどれくらいの金額が動くかって知らないって問題はあるんだけど。

『全財産賭けるってすげえな』
『数万くらいのしょぼい賭けだったりするんじゃね?』

 そんな事いうなら今聞いてもいいんだけどねー。この辺はほら、勝ってからのお楽しみだし、なんだったらそういう賭けをしてるって部分で楽しんでるのもあるから、いくらーとかあんまり関係ないと思うわ。
 それにうちのボスだったら、本当は知ってるけど、言ったら面白くないから競争を煽ってるとかもありえそう?

「どんな人なんですか、ボスって」
「んー、黒髪のスーツの似合う人だねー、知ってる人は知ってるかな」

『あー、例のやばい取引してた人か』
『ストーカー行為してまで入ったクランのボス』

 って言うか結構見られてるなあ、そんなに表に出したり、配信で声掛けた事は無かったけど、案外有名人だったりする?
 私自身は凄いなーってくらいにしか思ってない所はあるんだけどさ。

「ちなみに名前は何て言うんですか」
「んー、アカメって人」

 それを聞くと「やっぱり」と言う様にため息が吐き出される。あれ?知り合いですかー?

「どうして、こうもあの人と関係のある人と繋がるのかなあ」
「えー、知り合いなんー?」
「サービス開始初期くらいからのね」

『あ、思い出した、今一緒に走ってるのって前回のイベントで善戦してたマスターだろ』
『ポンコツ、ヤバい相手に出会う(二回目』

 ああ、そうだ、ばりばりの対人イベントの時にちょっかい掛けられて半壊させられたうえに、鍛冶クランの人達とがんがんやってた所だっけ?確か全体でも上位に入ってたクランだっけか。

「まあ、もうあの人に関わったら切っても切れないんですかね……5万もプレイヤーがいるのに遭遇率高すぎですよ」
「どうかなあ、たまたまだと思うけどなあ……普通にやってる時に会う事ないなら会わないと思うけど?」

 うちのボスって基本はソロ活動だから、誰かと組んでどうこうしてるって話も聞かないし、見た事もないんだよね。って言うかPT組んで活動するって想像が出来ない。イベントの時は自分の手札を使う為の手札って感じにPTメンバーを使っている感じだし。

「とりあえず追いつきたいってのは分かりましたが、大分出遅れてるんですけどね」
「序盤で思いっきりダウンさせられたからー……でも、出遅れ組は全員一丸になって追いつこうとしてるから?」

 なんやかんやでやっとテクニカルコースを抜けた辺りなのだが、全くもって小競り合いが起きてはいない。先頭集団は次のエリアの中盤過ぎくらいまで行っているっぽいし、多分ボスもあの辺まで行ってると思うんだよなあ。
 あとこんな後方で小競り合いしてタイムを遅くするってメリットも無いってのもある。ゴールできずに脱落するよりもさっさとゴールした方が良いし、此処で余計な時間を食うのもアホ丸出し。
 遅い連中同士でつぶし合いをして最下位争いって最高に醜い。

『これは勝てんわ』
『って言うか先行する必要ってなくね?』
『難しいな、後ろにいた場合は消耗が少ないから後半に賭けれるけど、勝負所を間違ったら勝てん。かと言って先行逃げ切りは消耗を考えてギリギリ追いつけないラインを維持するんだぞ』

 うちのリスナー、レベル高い気がする。ロードレースや競馬もこういう感じなのかな?どっちにしろ、現状じゃ前者だから、もうあとはゴール前で先頭集団に追いついて有り余った物資を使いごり押すってのが良い所。
 ……いや、それでもこれじゃあボスに追いつけないのか……どっかでこの後続集団を切り離して、飛び出さなきゃいけないってきつくね?

「まあ、どっちにしろ、追いつきたいならこの集団でまとまっていくのが一番ですよ」
「そうかなあ、ずっと追いつけない気がするんだけど大丈夫かなあ」

『ポンコツのくせに真面目な事言ってる』
『どっちにしろ追いつかないと行けないからな、先頭集団からしたらこの位置ってアウトオブ眼中よ』

「後は集団でも先頭の方にそれとなーく行くってのが大事だと思いますよ」
「んー、それじゃあ前に出ればいいんだよね」

 30レベルになった時にボスにあれこれ作って置けって言われておいたので作っておいたものが1つ。
 インベントリからずるっと金属の筒を取り出す。

「いや、こんなとこで使うんですか……?」
「へーきへーき、これ火薬量の少ない奴だから上に投げて思いっきり音鳴らしたらいけるんじゃない?」

『完全な見切り発車』
『幾ら弱い威力だからって見つかってるとヤバいんじゃねえの』

 へーきへーき、何だかんだで私も結構爆薬扱ってるんだから、そんなヘマしないしー?
 で、ついでに覚えておいた生活火魔法で火を付けてっと……あっ。

「……何ですか、今の『あっ』ってのは」
「えへへ落としちゃった」

『やりやがった』
『ポンコツの極み』
『これで爆弾魔確定だな』

「アカメさんに取り扱い注意って言われなかったんですか!」
「だって初めて使うんだからしょうがないじゃん!」
「ちなみにあれ何グラム使ったんですか!?」
「そんな言わんくていいじゃん、たった30gだよ」

 あれ、すっごい顔青ざめてるんだけど?何か凄い無言で無理やりに落とした所から離れてるんだけど……?

「30gでどれくらいの物か分かってないからですよ!ほら、早く!」
「えー、待ってよぉー」

『慌て方がおかしくね?』
『30gって一握りくらいだろ』

 あー、私が初めて作った爆弾がころころと向こうに転がっていく。
 起爆時間どれくらいにしてたかな?このレースの状態なら何かの拍子に火が消えて不発ってのもあり得そうだけど、その辺はどうなってるかはわかんないなー。

「教えるのはいいけど、ちゃんと威力含めて教えておいて欲しいよ!」
「って言うかあれ、どれくらいなの?」
「それは……」

 言いかけてた所で後ろで大爆発。結構な轟音と土煙が上がって、ものすごい騒いでいる。誰がやった、何が原因だ、あーだこーだ。
 
『うっわ……引くわ……』
『このゲームの火力おかしいだろ』

 あー、これはうん、しれーっと前に出た方がいいね。私はなんにもしてませーん。

「アカメさんがどれほど優秀か、思い知りましたよ……」
「分かんないじゃん、もしかしたら自爆してたかもしれないじゃん!」

 そんなにぷりぷり怒らなくてもいいのにー。
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