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7章

204話 同盟決裂

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「随分と余裕があるようで」
「そうか?」

 自分で作った酒を傾けながら、犬と忍者と爺で先に進んで行く。先頭集団後方辺りにいるので大きい戦いは起きないので余裕は結構ある。何だったら隣で手放し運転しながらティータイムに洒落込んでいるいる奴が言う事ではないが。

「もうちょっと緊迫するもんじゃないのかえ」
「まだ仕掛けるには早いですし」
「まあ、そうであるな」

 名前も児雷也とがっつり忍者ネーム。黒装束だし、楽しんでいるのは確かだな。忍者と蛙なんて改めて思うのだが、がっつりと忍者だな。

「現状、ここで戦って落ちる位ならもう少し詰めてから一気呵成に出るのが良いだろう」
「利害の一致と言う事ですか……あ、紅茶飲みます?」
「拙者は緑茶主義である」

 小競り合いは何個かあるので、それを避けたり、防いだりと言う事はしながらではあるのだが、序盤の血気盛んに戦うと言うのはもうない。まあ老体に鞭打つわけではないが、激しいゲームプレイと言うのは多少なりと大変なので良い事だが。

「ふむ、料理スキルでも取って、のんびりゲームを進めるってのもいいのう」
「ああ、いいですね、大体の攻略が終わったらそういうのも楽しみの一つかもしれません」
「……達観し過ぎたゲームプレイではなかろうか?」

 レベルは上げてるが、何だかんだでアカメの所で酒造なり、自宅で野菜の栽培をのんびりするってのは人によっては楽しくないだろうけど、自分でやるのは楽しいで問題ない。達観と言うよりも一つの楽しみ方だと思う訳だ。
 とは言え、今はそのアカメの事を全員でボコりに行くと言う目標があるが、それはどちらかと言うとイベントに便乗したクランイベントと言う感じだな。あまり野蛮な事……いや、前回巻き込まれて野蛮な事はしていたな。

「当たり前だが二人は勝ちを狙ってイベントに参加してるんだろ?」
「私はそうですね……「勝つ」って事が好きですし「一位」と言うのも好きなので」
「拙者は付き添いであるな、その付き添いの人物がいないと言う状態になったのだが」
「儂の場合はうちのクランマスターと戦えればいいからな、途中離脱するかもしれんのは先に言っておく」
「アカメさんですか……私はもうあんまり戦いたくはないですけど」
「確か悪魔の名前だったか、そのアカメ殿は」

 悪魔って……いや、そもそもどうして知っているのかが問題になる。アカメを知っている奴がそう話していると言う事なんだろう。それにしても悪魔か、人使いに関しては鬼畜や魔王とか言われてる方がしっくりくるのだが、誰が言ってるのやら。

「おや、そんなにツボに入りましたか」
「誰が言ってるか知らんが、悪魔は優しすぎるなと思ってな」

 知らない間に笑っていたようだ。実際一緒にいたら悪魔何て生易しいと言う事が良く分かるのだが、知らないと言うのは面白いし、あだ名も合わせて面白かった。

「拙者も聞いた話だから何とも言えぬが、黒髪で赤い目で睨んで無茶ぶりしてくると?」

 それを聞いてガウェインと儂でくつくつと笑う。

「まあ、誰から聞いたが知らんが、間違っていないとは言い切れん」
「味方にしたら頼もしく、敵にしたら厄介ってのもありますけど、良い人ですよ」

 実際に会ったらそんな事言えないんだろうけど、此処はぼやかしておいた方が面白いだろうな。
 このイベントが終わったら合わせてに行くってのもいいかもしれん。

「さて、と……そろそろ前に出ますか」
「まだ良いんじゃないのか、この位置順であっても追いつけるはずでは?」
「コースを見ると中盤だからな、そろそろ順位を上げておいた方があとあと楽になるはずだ」

 紅茶を飲み干し一息ついたガウェインと、妙に納得した顔をした児雷也の顔つきが少し変わったな。そろそろ前に行ってアカメを探さんと……と、思っていたら横方向の方で爆音が起きる。
 結構な音をさせているが、大体20~40gの火薬量だろうな。

「向こうにいるかもしれん」
「む、悪魔退治であるか」
「……どうですかね、別ルートからの合流組だとは思いますが、位置的には私達と同じか少し後ろの所でしょうし、アカメさん以外が爆薬を使うと言う線は?」
「二人程心当たりはあるが、儂とアカメで前回のイベントで散々爆破したと言うのもあるから、ちょっと生産出来るのは2、3発持っててもおかしくはない」

 ガンナー自体の人口も増えているので、黒色火薬を製造できるのは爆弾の1つや2つ作れていてもおかしくはない。多分と言うか本人だったらこんな所で使うのか?と言う疑問も残る。
 どちらにせよ、今抜けて他人だった場合は取り返しが利かない可能性が非常に高い。今この3人で徐々に追い上げている状態なのに、1人になって、確定ではない事を確かめに行くのはリスクと釣り合っていない。
 なんだったらダメだった時にもう一度ここに戻ってこれるのか?と言う問題もある。やはり勝負所はラストまで温存しておくのがベストか。

「どうします?私は付き合ってもいいですけど」
「拙者悪魔は専門外故遠慮しておきたい」
「此処で未確認の事にリスクを冒すほど愚かではないのでな、そういった冒険が好きな奴はもう向かってるだろう?」

 まさかそんな、見たいな顔をしていればもう数発爆発音と銃声が響いてくる。どうやら思い切り戦闘が開始されたようだ。
 それにしてもあの爆発音を聞いてアカメだと思って突っ込んでいくクラン員はいないだろう……いや、心当たりが3人はいるな。血気盛んなのはいいが、その後どうするかまでは考えていないか。

「何だかんだでそれでバランスを取っているんでしょうね、暴走しやすいアカメさんを良い感じに十兵衛さんがカバーしている、みたい」
「持ちつ持たれつ、ですな」
「なに、ちょっと付き合いが長いだけよ、あいつに関しては便利な酒造担当くらいにしかおもってはおらんさ」

 それに甘えてあれこれ要求していると言うのはあるのだが、何だかんだで信用と信頼はされているはずだ。
 とにかく、あの爆発はアカメが原因ではないだろうと踏んだので確認にはいかない。そもそもここからでも聞こえる怒号と戦闘音が物語っているのだが、策なしに突っ込んで良い所ではない。
 ……アカメに影響されたせいか、この辺の立ち回りの仕方もだいぶ染まってしまった気がする。

「おっと……そろそろ次のエリアに入りますよ」
「地雷原、テクニカル、合流……次は何であるか」
「どうやら、どこぞの髭親父と同じ事のようですよ」

 「?」のついたパネルがちらりと見える。成程、あれでアイテムでも引くんだろう。もしかしたら追加で特殊能力が取れるかもしれないが……いや、まて。

「先着順、と言う訳ではなさそうですが……取り合いにはなるかと」

 試しに一番前に走っていたガウェインが「?」パネルを使ってみると消耗品に。次に児雷也が引けば特殊能力が付与された。儂も1枚貰ったが、加速装置と言う名の消耗品が引けたので終った。

「……恨みっこ無し、それでいいか」
「是非も無し」
「中々運営も嫌らしいイベントをしてくれますね」

 今まで協調していた他のプレイヤーも出方を伺い始めている。協調プレイをさせた所で誰を出し抜いていくか……人間の心理とかそう言う事以前に、人として疑うイベントになってきたぞ。
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