47 / 49
第43話 融合使徒は弱いかもしれなかった
しおりを挟む
「あいつが例の脅威か?」
振り向くと、いつのまにか先輩たちが自分の元へと集まっていた。
まあ、他の敵がいなくなったのでそうしたのだろう。
「おそらくは。あいつが融合使徒でしょう」
「聴いてた割に温厚そうな奴じゃん。負けるかもしんないけど、命の危険はないっぽいね!」
おちゃらけた口調で、別の先輩がそう口にした。
この人、この状況で肝っ玉据わってんな。
「ってかさあ、これ試合続行するの? 審判、逃げちゃったよ?」
先輩がそう続ける。
……それは完全に盲点だったな。試合が中止となっては、そもそも戦うこともできない。
破壊天使の紋章実験も延期となってしまうな。
だが、ここで問題が一つ発生する。
確かに審判が逃げてしまった以上普通に考えて試合中止なのだが、審判は「試合中止」と言い残していってもいないのだ。
つまり、ここで勝手に選手の身で中止になったと判断し、帰ったら場外負けになってしまう恐れがある。
平たく言えば、帰るに帰れない状況となってしまったわけだ。
収納に入って仮眠でも取るか?
いや、審判は俺が収納に入れる事など知らない。
俺が収納の中にいるうちに審判が戻ってきたら、即座に俺は場外判定とされてしまうだろう。
そもそも収納が場内扱いなのか場外扱いなのかも不明だしな。
前例も定義も無いから議論不能だろうけど。
そんなことを考えていると、よく知っている声が響いた。
「審判は私が代わって務めます。試合、続行!」
審判の交代を宣言したのは、サフシヨ様だった。
……それ、ありなのか?
確かにサフシヨ様はどの学院の運営にも関わってはいないけれど、フワジーラ家の最高権力者が聖フワジーラ学院に肩入れする事など、火を見るよりも明らかなはずだ。
いくらでも不正な判定が出そうな気がするんだが。
まあ、フワジーラ家の力を以ってすればどうとでもなるんだろう。
祭政一致と摂関政治のダブルパンチ、マジで半端ないな。
そう言えば、タイラーノ学院の使徒編入の手口も実は結構グレーな線を行ってるって話だったか。
ミットナーモとエノコの選手は全員審判交代前に場外となったし、そこからの文句は特に出ないだろう。
そう言った事情を加味すれば、確かにこの審判交代を強く批判できる人間はどこにもいないのかもしれないな。
見ると、先輩たちはサフシヨ様の発言をうけ、真剣な表情に戻って融合使徒と対峙している。
どうやらやる雰囲気だな。有難い。
☆ ☆ ☆
拮抗は30秒ほどの後、先輩たちの攻撃によって崩れた。
3人とも、それぞれに出せる全速力で融合使徒に向かっていく。
使徒の紋章を手に入れて4日しか経っておらずまだその力に慣れきっていないはずだが、なかなかいい動きをしているな。
それに対し、融合使徒も動く。
「フハハ、3人か。皆一斉に場外まで吹き飛ばしてやる! 技はこうだったな、サイレントヒル!」
融合使徒は、俺の真似をするつもりかのようにサイレントヒルを詠唱した。
だが、俺はその魔法に違和感を覚えた。
条件反射で、鑑定が発動してしまう。
【融合使徒の即死魔法】
効果範囲無いの強さ0.88888以下の人間を皆殺しにする魔法■
……前言撤回だ。
この融合使徒、口では温厚そうな奴を装っていたがとんでもない凶人だった。
すかさず、サフシヨ様の元へ移動し、その手に握られていた青龍偃月刀を奪いとった。
そして、絶対生命維持の月を発動した。
審判の武器を奪って使うなど、どう考えても一発で失格になる行動だ。
だが背に腹は変えられない。人命がかかっているのだ。
……まあサフシヨ様のことだから、この行動は不問にするだろうけど。
即死魔法を受けた先輩たちは、四肢を吹き飛ばしながら場外へと吹っ飛んだ。
絶対生命維持の月が無ければ、木っ端微塵にでもなっていたのだろうか。
「サフシヨ様、後を頼む」
そう言って、俺は青龍偃月刀をサフシヨ様に返した。
これで、絶対生命維持の月の術者はサフシヨ様へと入れ替わり、俺は戦いに専念できるようになる。
「他の選手の怪我は、私が何とか全治させて見せる。だから、心配しないで戦ってきて」
そう言われ、俺は試合へと戻ることになった。
……融合使徒が、危険な奴であることは分かった。
だが、まだそいつが俺より強いのかどうかは判明していない。
つまり、魔神を納得させるには、時空魔法発動の前に少し手合わせをする必要があるだろう。
とりあえず、これだな。
「青酸撃」
すると……融合使徒は痙攣を起こし、悶え出した。
……嘘だろ? これで終わりとか無いよな?
振り向くと、いつのまにか先輩たちが自分の元へと集まっていた。
まあ、他の敵がいなくなったのでそうしたのだろう。
「おそらくは。あいつが融合使徒でしょう」
「聴いてた割に温厚そうな奴じゃん。負けるかもしんないけど、命の危険はないっぽいね!」
おちゃらけた口調で、別の先輩がそう口にした。
この人、この状況で肝っ玉据わってんな。
「ってかさあ、これ試合続行するの? 審判、逃げちゃったよ?」
先輩がそう続ける。
……それは完全に盲点だったな。試合が中止となっては、そもそも戦うこともできない。
破壊天使の紋章実験も延期となってしまうな。
だが、ここで問題が一つ発生する。
確かに審判が逃げてしまった以上普通に考えて試合中止なのだが、審判は「試合中止」と言い残していってもいないのだ。
つまり、ここで勝手に選手の身で中止になったと判断し、帰ったら場外負けになってしまう恐れがある。
平たく言えば、帰るに帰れない状況となってしまったわけだ。
収納に入って仮眠でも取るか?
いや、審判は俺が収納に入れる事など知らない。
俺が収納の中にいるうちに審判が戻ってきたら、即座に俺は場外判定とされてしまうだろう。
そもそも収納が場内扱いなのか場外扱いなのかも不明だしな。
前例も定義も無いから議論不能だろうけど。
そんなことを考えていると、よく知っている声が響いた。
「審判は私が代わって務めます。試合、続行!」
審判の交代を宣言したのは、サフシヨ様だった。
……それ、ありなのか?
確かにサフシヨ様はどの学院の運営にも関わってはいないけれど、フワジーラ家の最高権力者が聖フワジーラ学院に肩入れする事など、火を見るよりも明らかなはずだ。
いくらでも不正な判定が出そうな気がするんだが。
まあ、フワジーラ家の力を以ってすればどうとでもなるんだろう。
祭政一致と摂関政治のダブルパンチ、マジで半端ないな。
そう言えば、タイラーノ学院の使徒編入の手口も実は結構グレーな線を行ってるって話だったか。
ミットナーモとエノコの選手は全員審判交代前に場外となったし、そこからの文句は特に出ないだろう。
そう言った事情を加味すれば、確かにこの審判交代を強く批判できる人間はどこにもいないのかもしれないな。
見ると、先輩たちはサフシヨ様の発言をうけ、真剣な表情に戻って融合使徒と対峙している。
どうやらやる雰囲気だな。有難い。
☆ ☆ ☆
拮抗は30秒ほどの後、先輩たちの攻撃によって崩れた。
3人とも、それぞれに出せる全速力で融合使徒に向かっていく。
使徒の紋章を手に入れて4日しか経っておらずまだその力に慣れきっていないはずだが、なかなかいい動きをしているな。
それに対し、融合使徒も動く。
「フハハ、3人か。皆一斉に場外まで吹き飛ばしてやる! 技はこうだったな、サイレントヒル!」
融合使徒は、俺の真似をするつもりかのようにサイレントヒルを詠唱した。
だが、俺はその魔法に違和感を覚えた。
条件反射で、鑑定が発動してしまう。
【融合使徒の即死魔法】
効果範囲無いの強さ0.88888以下の人間を皆殺しにする魔法■
……前言撤回だ。
この融合使徒、口では温厚そうな奴を装っていたがとんでもない凶人だった。
すかさず、サフシヨ様の元へ移動し、その手に握られていた青龍偃月刀を奪いとった。
そして、絶対生命維持の月を発動した。
審判の武器を奪って使うなど、どう考えても一発で失格になる行動だ。
だが背に腹は変えられない。人命がかかっているのだ。
……まあサフシヨ様のことだから、この行動は不問にするだろうけど。
即死魔法を受けた先輩たちは、四肢を吹き飛ばしながら場外へと吹っ飛んだ。
絶対生命維持の月が無ければ、木っ端微塵にでもなっていたのだろうか。
「サフシヨ様、後を頼む」
そう言って、俺は青龍偃月刀をサフシヨ様に返した。
これで、絶対生命維持の月の術者はサフシヨ様へと入れ替わり、俺は戦いに専念できるようになる。
「他の選手の怪我は、私が何とか全治させて見せる。だから、心配しないで戦ってきて」
そう言われ、俺は試合へと戻ることになった。
……融合使徒が、危険な奴であることは分かった。
だが、まだそいつが俺より強いのかどうかは判明していない。
つまり、魔神を納得させるには、時空魔法発動の前に少し手合わせをする必要があるだろう。
とりあえず、これだな。
「青酸撃」
すると……融合使徒は痙攣を起こし、悶え出した。
……嘘だろ? これで終わりとか無いよな?
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説
星の記憶
鳳聖院 雀羅
ファンタジー
宇宙の精神とは、そして星の意思とは…
日本神話 、北欧神話、ギリシャ神話、 エジプト神話、 旧新聖書創世記 など世界中の神話や伝承等を、融合させ、独特な世界観で、謎が謎を呼ぶSFファンタジーです
人類が抱える大きな課題と試練
【神】=【『人』】=【魔】 の複雑に絡み合う壮大なるギャラクシーファンタジーです
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル
14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった
とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり
奥さんも少女もいなくなっていた
若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました
いや~自炊をしていてよかったです
世界一の治癒師目指して頑張ります!
睦月
ファンタジー
神のミスにより異世界で暮らすこととなった花道香織は、医師になるという夢を叶えるべく、治癒師の道を歩み始めた。
チート過ぎるAIサポーターのアイに振り回されつつ、香織はこの世界を旅しながら多くの命を救っていく。
タイトル変更しました。
旧題:夢破れた医学生は異世界で治癒師を目指す
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる