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第44話 時空魔法、起動
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「う゛っ……ぐああぁぁぁ!」
断末魔の叫び声をあげ、咳き込む融合使徒。
終わったな。普通に肉弾戦に持ち込んでいれば、あるいは融合使徒が優位に立ち、時空魔法の使用を余儀なくされたかもしれない。
だが、初手の攻撃に猛毒を用いてしまったばっかりにその機会を失ってしまった。
あと数分もすれば、死に至ってしまうだろう。
衝撃魔法を詐称して致死魔法を打ち込んでくるような凶悪確信犯だ。
今のうちに場外に落とし、俺の勝利を確定させてから治療することも可能だが、殺しておいた方が世のためだろうな。
時空魔法については……それこそ、本当に宇宙を旅してでもみるか。
恒星系外まで出れば魔神とて文句は言わないだろうし、道中で強敵に出会わないとも限らないからな。
とりあえず、今は結末を見守ろう。
そう思い、異様に長く感じる数分を座して待つことにした。
ところが、だ。
「俺は……こんなところで……負けはしねぇ!」
死は目前と思われた融合使徒が、どういう訳か再び動き出したのだ。
それだけでなく。融合使徒は、フラフラしながらも何とか立ち上がったのだ。
俺は、何か懐かしい感触を覚えた。
「倒したはずの敵が復活する」というケースは、これで2回目だからだ。
もっとも、前回のアタミの時とは何もかもが正反対なのだが。
「自動蘇生か?」
「知らねえよ。俺だって何で生きてんのか分かんねえ。だがなぁ! 俺が生きてる以上は、何としてでもお前の息の音を止めてやるんだ。続き、やるぞ!」
融合使徒はそう言い終わると、千鳥足でこちらに向かってきた。
そのまま殴りかかってくる融合使徒。
俺はそのパンチを防御しつつ、カウンターを決めた。
「ぐぉぁぁぁ!」
再び、融合使徒は場外一歩手前まで吹き飛ばされ、うずくまってしまった。
今度こそ、終わりか。
と、思いきや。
「まだ……まだだ! まだやるぞ!」
再び立ち上がる融合使徒。心なしか、その足取りは先ほどより確かなように思えた。
……気合いだけで、それほどのことが可能なのか?
再び殴りかかってくる融合使徒。
それに対し、俺も再びカウンターで応戦した。
そして感じ取った。
こいつ、やはり最初に立ち上がった時より回復している。
そしてさらに数分待つ。
案の定、融合使徒は再び立ち上がった。
その呼吸は、青酸に侵された者とは思えないほどにゆったりと安定していた。
そして、信じられないことが起きた。
何と、融合使徒はそれまでのフラフラとした動きをするのではなく、空中に跳躍して殴りかかって来たのだ。
空を舞う融合使徒を、目で追う。
そして、分かってしまった。
融合使徒が、こうも幾度となく復活してきた理由が。
絶対生命維持の月、浮かべたままだった。
そういえば、俺が最初にサフシヨ様の絶対生命維持も月を見た時も、治療対象は青酸中毒患者だったな。
あの時は、まだサフシヨ様は使徒の紋章を持っておらず、青酸中毒者の回復はできないでいた。
だが今のサフシヨ様は使徒の紋章を持っている上、俺の解説を聞いたお陰で青酸の正体を詳しく知っている。
だから、パワーアップした絶対生命維持の月で、融合使徒を治療できたのだろう。
サフシヨ様、成長したんだな。
……おっと、感慨に耽っている場合ではないな。
融合使徒の回復の原因が絶対生命維持の月である以上は、融合使徒は本当に完全復活に近いかもしれないのだ。
油断していると、こちらが危ない目に遭ってしまう。
「サフシヨ様、青龍偃月刀を元に戻してくれ!」
俺はまず、回復の原因をサフシヨ様にしまってもらった。
ここからは正々堂々、ガチンコ勝負だ。
「ハイボルテージペネトレイト」
俺は空気中に残存していた青酸を残らず爆発させて目眩しとし、融合使徒の背後に回った。
そして、後頭部に渾身の蹴りを加えようとしたのだが──
「甘いわ!」
何と、融合使徒は俺の攻撃に反応し、足を掴んできたのだ。
……あんまり怪我したく無いし、ここで及第点ってことにするか。
「お前は強い」
俺はそう呟いた。
気持ちの上では、魔神に聞かせて納得させるようなつもりで。
そして、左手の甲の表皮に対し、時空魔法を発動した。
0.03秒ごとに、表皮の時間を1日戻す。
フレームレート約30コマ毎秒の破壊天使の紋章、始動だ。
断末魔の叫び声をあげ、咳き込む融合使徒。
終わったな。普通に肉弾戦に持ち込んでいれば、あるいは融合使徒が優位に立ち、時空魔法の使用を余儀なくされたかもしれない。
だが、初手の攻撃に猛毒を用いてしまったばっかりにその機会を失ってしまった。
あと数分もすれば、死に至ってしまうだろう。
衝撃魔法を詐称して致死魔法を打ち込んでくるような凶悪確信犯だ。
今のうちに場外に落とし、俺の勝利を確定させてから治療することも可能だが、殺しておいた方が世のためだろうな。
時空魔法については……それこそ、本当に宇宙を旅してでもみるか。
恒星系外まで出れば魔神とて文句は言わないだろうし、道中で強敵に出会わないとも限らないからな。
とりあえず、今は結末を見守ろう。
そう思い、異様に長く感じる数分を座して待つことにした。
ところが、だ。
「俺は……こんなところで……負けはしねぇ!」
死は目前と思われた融合使徒が、どういう訳か再び動き出したのだ。
それだけでなく。融合使徒は、フラフラしながらも何とか立ち上がったのだ。
俺は、何か懐かしい感触を覚えた。
「倒したはずの敵が復活する」というケースは、これで2回目だからだ。
もっとも、前回のアタミの時とは何もかもが正反対なのだが。
「自動蘇生か?」
「知らねえよ。俺だって何で生きてんのか分かんねえ。だがなぁ! 俺が生きてる以上は、何としてでもお前の息の音を止めてやるんだ。続き、やるぞ!」
融合使徒はそう言い終わると、千鳥足でこちらに向かってきた。
そのまま殴りかかってくる融合使徒。
俺はそのパンチを防御しつつ、カウンターを決めた。
「ぐぉぁぁぁ!」
再び、融合使徒は場外一歩手前まで吹き飛ばされ、うずくまってしまった。
今度こそ、終わりか。
と、思いきや。
「まだ……まだだ! まだやるぞ!」
再び立ち上がる融合使徒。心なしか、その足取りは先ほどより確かなように思えた。
……気合いだけで、それほどのことが可能なのか?
再び殴りかかってくる融合使徒。
それに対し、俺も再びカウンターで応戦した。
そして感じ取った。
こいつ、やはり最初に立ち上がった時より回復している。
そしてさらに数分待つ。
案の定、融合使徒は再び立ち上がった。
その呼吸は、青酸に侵された者とは思えないほどにゆったりと安定していた。
そして、信じられないことが起きた。
何と、融合使徒はそれまでのフラフラとした動きをするのではなく、空中に跳躍して殴りかかって来たのだ。
空を舞う融合使徒を、目で追う。
そして、分かってしまった。
融合使徒が、こうも幾度となく復活してきた理由が。
絶対生命維持の月、浮かべたままだった。
そういえば、俺が最初にサフシヨ様の絶対生命維持も月を見た時も、治療対象は青酸中毒患者だったな。
あの時は、まだサフシヨ様は使徒の紋章を持っておらず、青酸中毒者の回復はできないでいた。
だが今のサフシヨ様は使徒の紋章を持っている上、俺の解説を聞いたお陰で青酸の正体を詳しく知っている。
だから、パワーアップした絶対生命維持の月で、融合使徒を治療できたのだろう。
サフシヨ様、成長したんだな。
……おっと、感慨に耽っている場合ではないな。
融合使徒の回復の原因が絶対生命維持の月である以上は、融合使徒は本当に完全復活に近いかもしれないのだ。
油断していると、こちらが危ない目に遭ってしまう。
「サフシヨ様、青龍偃月刀を元に戻してくれ!」
俺はまず、回復の原因をサフシヨ様にしまってもらった。
ここからは正々堂々、ガチンコ勝負だ。
「ハイボルテージペネトレイト」
俺は空気中に残存していた青酸を残らず爆発させて目眩しとし、融合使徒の背後に回った。
そして、後頭部に渾身の蹴りを加えようとしたのだが──
「甘いわ!」
何と、融合使徒は俺の攻撃に反応し、足を掴んできたのだ。
……あんまり怪我したく無いし、ここで及第点ってことにするか。
「お前は強い」
俺はそう呟いた。
気持ちの上では、魔神に聞かせて納得させるようなつもりで。
そして、左手の甲の表皮に対し、時空魔法を発動した。
0.03秒ごとに、表皮の時間を1日戻す。
フレームレート約30コマ毎秒の破壊天使の紋章、始動だ。
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