マサキは魔法使いになる

いちどめし

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3-6 砕ける希望と見える光明

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「マツオ……マツオヒデトシさんの家です。知りませんか?」
 碧眼が可愛らしく困って、金髪が美しく揺れた。おれはただただ脂汗を拭う。最後の希望は、粉みじんとなって消えうせたらしい。
 松尾秀敏。他でもないおれの親父の名前じゃないか。なんということだ、昨日の夜に魔法使いのことを話していた親父のもとに、ほんとうに魔法使いがやってきてしまった。
「表札を見れば分かるかな、と思ったんですけど、あたし、外国人なので字が読めなくって」
 魔法使いは外国人というところをやけに強調すると、碧眼の視線でおれの家の表札を捉えた。表札というよりはプレートと言った方がふさわしいプラスチック製の表札には、ただ松尾とだけ書いてある。この時ほど、表札にローマ字が書かれていないことを意識したことはないだろう。
 それにしてもこいつは、これだけペラペラと日本語をしゃべりまくっていながら、日本語を、いや漢字を読むことができないのか。
 しめた。うまく騙せば、この魔女を追い払えるんじゃないのか。
「あ、ああ、ああ、松尾さんのお宅ね。ありゃあ、昨日引っ越したよ。ここはほら、今日からおれ、松林の家だよ」
 思い立ったが吉日。早速おれは口から出任せをしゃべりだしていた。今は四時台だか五時台だか知らないけれど、最近は日が長くなってきているのでどのみち空は明るい。
 この嘘では、この家が少女の目的地なのだと認めてしまうことになるけれど、変に他の家だと偽って、そこの住人に道案内をされては目も当てられない。
 ええっ。視線の下のほうで、少女の声が悲嘆に暮れた。少しだけ視線を下げると、色白の顔が本当に残念そうな色を浮かべていた。
「ど、どこにですか?」
「え、ええっと、外国だよ、ほら、なんだっけな、アメ……いや、オーストラリアだったっけ」
 危うくアメリカと言いそうになって慌てて言い直した。魔法使いとはいえ魔法の国の人間であると決まったわけではあるまい。外国人であるという情報しかないこの状況でアメリカでは、こいつの母国である危険があるからだ。しかし、だからといってオーストラリアと言ってしまったのでは、あまり事態は変わらないように思えてしまって、おれは大いに後悔した。
 もっと、マイナーな国名を言えばよかったんじゃないのか。そう思ったところで、学のないおれの頭で、そんなものが咄嗟に出てくるわけがない。
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