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3-5 誰をお探し?
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「ええっと、あたしがこんな所に立っているのには、ちゃんとした理由がありまして――」
質問なんかしていないというのに、金髪ときたら勝手に喋りだした。なんということだろう、おれは突破口を開くよりも先に、こいつの心を開いてしまったようだ。
「マツオさんっていう方のお宅を探しているんです」
目眩がした。このまま倒れてしまえばいいのに、とすら思った。しかしおれの身体ときたらなかなかどうして頑丈で、くらりときたのを堪えると、そのまま再び直立してしまう。
マツオ。それがもし苗字だったのなら、まさしくおれの家のことである。この少女は、めでたく目的の家を探し当てたのだ。
「地図を見て来たんですけれど、あんまり細かく書かれていなくって……なんとかここまではたどり着いたものの、マツオさんってこの家でいいのかなぁっ、て。立ち往生していたところなんです」
金髪碧眼は、顔にそぐわない流麗な日本語でそう言うと、おれの自宅を示してみせた。ああ、立ち往生って、外国人が使ってるよ。立ち往生は外来語だったのかな。タチオージョー。
「この、この家かぁ」
まさしくこの家がマツオさんのお宅なのである。この魔法使いが最後の最後で迷ってくれていたということは、不幸中の幸いとしか言いようがないだろう。
「まっ、マツオって……、ふぁ、ファーストネーム?」
彼女の言う「マツオ」が、松尾のことでは決してあって欲しくなかった。だからこそ、藁よりもすがりがいのないものだとは分かっていながらも、おれは「マツオ」が下の名前であることを願うしかないのだ。
下の名前って、ファーストネームで合っているっけ。おれが考えていると、少女はいいえ、と首を振り、ファミリーネームです、とおれの心配が解決するよりも前に告げてしまった。
「ファミリーネームって、ええっと日本語で」
自分で横文字を出しておきながら情けない。それだって、相手が金髪碧眼なのだから仕方がないじゃないか。
少女はきょとん、とした様子で、苗字ですよと様子を伺うように言った。おれの質問があまりにも初歩的だったので、いぶかしんでいるのだろう。
質問なんかしていないというのに、金髪ときたら勝手に喋りだした。なんということだろう、おれは突破口を開くよりも先に、こいつの心を開いてしまったようだ。
「マツオさんっていう方のお宅を探しているんです」
目眩がした。このまま倒れてしまえばいいのに、とすら思った。しかしおれの身体ときたらなかなかどうして頑丈で、くらりときたのを堪えると、そのまま再び直立してしまう。
マツオ。それがもし苗字だったのなら、まさしくおれの家のことである。この少女は、めでたく目的の家を探し当てたのだ。
「地図を見て来たんですけれど、あんまり細かく書かれていなくって……なんとかここまではたどり着いたものの、マツオさんってこの家でいいのかなぁっ、て。立ち往生していたところなんです」
金髪碧眼は、顔にそぐわない流麗な日本語でそう言うと、おれの自宅を示してみせた。ああ、立ち往生って、外国人が使ってるよ。立ち往生は外来語だったのかな。タチオージョー。
「この、この家かぁ」
まさしくこの家がマツオさんのお宅なのである。この魔法使いが最後の最後で迷ってくれていたということは、不幸中の幸いとしか言いようがないだろう。
「まっ、マツオって……、ふぁ、ファーストネーム?」
彼女の言う「マツオ」が、松尾のことでは決してあって欲しくなかった。だからこそ、藁よりもすがりがいのないものだとは分かっていながらも、おれは「マツオ」が下の名前であることを願うしかないのだ。
下の名前って、ファーストネームで合っているっけ。おれが考えていると、少女はいいえ、と首を振り、ファミリーネームです、とおれの心配が解決するよりも前に告げてしまった。
「ファミリーネームって、ええっと日本語で」
自分で横文字を出しておきながら情けない。それだって、相手が金髪碧眼なのだから仕方がないじゃないか。
少女はきょとん、とした様子で、苗字ですよと様子を伺うように言った。おれの質問があまりにも初歩的だったので、いぶかしんでいるのだろう。
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