良い武器(斧)を見つけるために仕方なく勇者と魔王討伐に一緒に行ってあげる

ルーナ

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一夜明けて……

「んで、これからどーすんのよ」
「ツーリスを経由して王国へ向かおうと思う」
「まぁ妥当ね……てかそれしか道ないものね」
「山道や森の中を歩きで抜けないといけないから、ここから一週間くらいかかる。タイミングよく馬車があればいいけど、こんな山奥じゃ行商人もめったに来ないだろうし」
「そうね、行商人は三ヶ月に一回来るか来ないかだし」
「そもそもガルム将軍の事も王国で聞いたんだ。だから一度報告に戻りたいし、王国で魔王退治に行ってくれる人が新たにいるかもしれない」

こんな辺境なところなんてよっぽどの物好きか、行商人しかいない。

「それでこんな山奥に来たわけね。わざわざ辺鄙なところまでご苦労なことね」
「僕は王国の出身で、この国を誇りに思っている。勇者として選ばれたのは本当に奇跡と思っている。けど僕は兵士ではないからね。平民だけど世界の為ならと思うとこれくらいへでもないよ」

レオンの素直な発言にリリムは少し見直した。勇者を笠に着た馬鹿かと思っていたけどそうではなかったらしい。

「ふーん、口は悪いけど素直なのね」
「ああー、あの件については本当に申し訳なかった」

横から口を挟まずにニヤニヤしていたガルムが口を開いた。

「仲良くなったな、良い事じゃ」

となにやら腕を組み頷きながら話にガルムが混ざる。

「やめてよお父さん。私ヒューマンに興味ないから」
「ガルム殿おやめください、僕も少童女には興味ないんです、僕は年上の、ぐへっ!」
「ちょっと、あんた失礼ね。私は大人!立派なレディなんだから!」
「リリムよ、レディはそんなに暴力的ではないと思うぞ……」
「そうかしら?オホッ、オホホホホッ!」

笑ってごまかそうとするが。

「良いパンチだった」
「あんた表に出なさい!」

はあ、一人増えただけで随分賑やかになったもんだとガルムは思った。いや、喧嘩する対称が自分から勇者に変わっただけで、元々賑やかだったなと結論に至り、少し寂しくもあった。

歳をとってからの子供は可愛い。ドワーフであるガルムにとっても例外ではなかった。鍛冶にも興味があったが、防衛や人を守ることに生を見出したガルムは王国の軍隊に所属し、徐々に頭角を現した。仕事一本で女っ気がなかったため、婚期を逃してしまった。それでも幼馴染がずっと待っていたらしく、めでたく結ばれリリムが生まれた。

幼いリリムを残し妻は死んでしまった。まだ乳飲み子であったリリムを男ひとつで育て上げたのだ。愛情が深くないわけがない。

そんなリリムは自分に似た性格になってしまったが、決して頭が悪いわけではない。仕事上の関係で軍略などの本も沢山あったがリリムは小さい時より様々な本を読んできた。まあ、結果選んだのは戦闘狂と斧フェチなのだろうが。

それにスキルも関係があった。リリムはユニークスキルを三つ持っていた。一つは種族特性の鉱石鑑定。二つ目は剛力。三つ目刃土魔法。種族特性として存在するユニークスキルである。土と親和性が高いと言われるドワーフ。そんな中でも極僅かな人しか持たない土魔法は非常に稀有な存在である。それプラス個人スキルで斧技がある。鍛冶も出来る為、スキルだけ見ればかなりすぐれたドワーフであるとわかる。

ガルムには鍛冶には興味があったのだが、鉱石鑑定がなかった。いや、ユニークスキルはもっていなかった。つまり鍛冶をするにしてはふりである為、ガルムの場合興味があるのは鍛冶以外では戦闘しかなかったと言えよう。

幸いにも斧技、剣技、弓技、槍技と各武器へのスキル習得が早く、戦闘面においてまんべんなく武器を使うことが可能であった。それと何かに騎乗しても安定して戦うことが出来る操騎術。強さにおいて差がある場合、相手の動きを鈍らすことが出来る威圧も持っている。当然上手に武器を扱えることから部下への指導も的確に教えることが出来、戦闘面では威圧やドワーフとして腕力が高い為、圧倒的破壊力を持っており将軍となることが出来た。それに種族的に見るとガルムは平均より身長が高かった事も要因になったのかもしれない。

スキルだけ比べると……

リリム:鉱石鑑定
    剛力
    土魔法
    斧技
    鍛冶

ガルム:斧技
    剣技
    槍技
    弓技
    操騎術
    威圧

リリムは非戦闘技能があるが、ガルムは戦闘技能に偏っている。

思わず喧騒に身をゆだね、考え事にふけっていたガルムは慌てて周囲を見回すと武器を持って外に出ようとする娘と勇者を視界に収めることが出来た。すぐに視界から出て表へ出て行ってしまったのだが。

「あの、バカどもめ」

ガルムは一瞬にして勇者とて普通の人なんだと認識を改めた。きっと20年も生きていないのだろう。自分はその約十倍生きている。子供が二人いる感覚に近いなとの結論に至った。

よし、こんなところで油を売らず、さっさと旅立ってしまえ。さっき少し感慨深く思ってしまった自分が情けなく思った。

「はぁ、いくつになっても変わらんもんじゃ」

ガルムは斧を肩に担ぎ、外へ向かって大声を出した。
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