異世界では総受けになりました。

西胡瓜

文字の大きさ
63 / 127
第二章 本部編

61 研究所

しおりを挟む
 アルが出ていって俺とパスカルの二人だけになった。

「アル昨日の今日でもう俺の相談に応えてくれるなんて、やっぱりできる男だよな」

 俺は感心してパスカルにアルの仕事の早さを伝えた。するとパスカルは、驚くことはなく何言ってんだコイツみたいな顔で俺を見てきた。

「何言ってんだ?サタローがその相談をわしにしてきた時からアルには相談しているぞ。サタローがわしの手伝いをすることも既に決まっていたし」
「へ?」

 それってつまりアルが任務に行っている時からアルはこのこと知ってたってことか? 
 じゃあ昨日のその話初耳ですみたいな反応はなんだったんだ。昨日の相談を聞いてもらうために俺がアルに行った行為はなんだったんだよ!

 俺はアルが何をしたかったのかわからずに頭を抱える。パスカルはそんな俺の姿に盛大にため息を吐いていた。

「はぁ、相変わらず騙されやすいな」
「えー、それって…………マジかぁ」

 パスカルの一言にまた言いくるめられてしまったことに気がついた。自分の不甲斐なさにうなだれる。

 ──でもまぁ、アル喜んでたし……いっか

 アルにはあれ以上に世話になってるし、今回のことは水に流すことにした。流されやすい俺も悪いし。
 でも、アルも俺にレオみたいなことしてくるのかと少し彼への警戒心が強まった気がする。

 昨日のことを唸りながら考えていると、パスカルが扉を開けて廊下に出ようとする。

「そんなことどうでもいいから、さっさと仕事場に向かうぞ」
「あっ、うん!」

 パスカルに言われるがまま俺は考えるのをやめて、パスカルの後に続いて廊下に出て彼の後を追った。



◇◇◇



「ここは?」

 パスカルに連れてこられたのは本部から少し離れた場所にある建物だった。周りには花壇がたくさんありいろんな植物が植えられている。建物はレンガ造りで入り口には「魔法軍・研究所」とかかれたドアプレートがかけられている。

「ここがこれからサタローが手伝う場所だ」
「研究所って?」
「ポーションなどの回復薬を生成する研究所だ」
「ここに医療班の隊員がいるのか?」

 隊員がいると言うには少々小さい建物な気がする。それに本部から少し離れているし……

「ここにはいない。ここは研究所であって医療班の隊員たちは別の建物にいる」
「じゃあここは?」
「わしの趣味で作った研究所だ!」
「趣味でってそんなことできんのかよ……」

 パスカルってマジで何者なんだよ。リズたち王族にはタメ口でズバズバ意見するし、趣味で建物建てちゃうし、見た目ショタなのに中身ジジイだし……300歳以上生きてるし、ほんとかどうかも怪しいが……

「人員はわし含めて三名しかいないからサタローも安心して働けるぞ」
「はあ……」

 パスカルの趣味に付き合っている隊員が二名もいると言うことに驚きだ。もしかしてこの研究所にいる隊員は窓際族なのでは?やばい人なのかもとかなり不安になる。
 
 不安になりながら建物を見ていると近くの窓からドッカーン!!! と大きな爆発音が聞こえ窓ガラスが吹き飛び煙が上がっている。

「うぉぉ!!! なんだ!! 事故か!」
「はぁ、またやらかしたか……ほら、さっさと来い」
「えぇぇぇ!?!?」

 盛大に驚く俺に対して、日常の風景のように無反応なパスカル。あんな大爆発が日常茶飯事とか真っ平ごめん被りたい。

 研究所内は入ってみると案外普通の内装だった。パスカルは建物の奥に進んで行く。ドアプレートに「実験室」と書かれたドアを開ける。

 中を覗くとモノの見事にぐちゃぐちゃになっていた。どうやらこの部屋で爆発は起こしたらしい。

「おい、大丈夫か?」

 実験器具や資料などが散乱して人の気配が無いが、どうやら隊員がこの部屋にいるらしい。あんな爆発に巻き込まれてただで済むとは思えないのだが。

 心配そうに部屋の中を覗いていると、散乱した物が少し動き出し二ヶ所からそれぞれ人が出てきた。

「ぷはぁ! いやー大失敗ですね」
「だぁああ!! だから言っただろうがもっと慎重にやれって!!」

 飛び出てきた二人は俺たちの存在に気づいていないようで、いきなり喧嘩を始めている。

 飛び出てきた一人は女の子で爆発によりボサボサになった髪の毛からは渦巻き状のツノと小さな耳が生えている。おそらくレオ達と同じ獣人であることがわかる。

 そんな彼女に怒っているのは色黒の男の子で、耳がソフィさんのように少しだけ尖っているのを見るとダークハーフエルフだと思われる。

「どうすんだよ! パスカルさんにバレたら怒られるぞ!」
「でも急いで掃除すればなんとかなりますよ!」
「いや、無理ですけど」
「「ぎゃぁぁ!!!」」

 パスカルの声に盛大に驚く二人、なんだかコントでも見ている気分だ。二人はゆっくりとパスカルと俺のいる方に顔を向ける。
 二人の顔をしっかり見ることができたが、案の定真っ青な顔をしていた。

「とりあえずさっさと片付けろ!」
「「はいっっっ!!!!」」

 パスカルに言われるがまま二人は急いで立ち上がりせっせと片付けを始めた。
 俺たちは二人の片付けが終わるまで別の部屋で優雅に紅茶を飲みながら待機していた。

 
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...