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第一章 転移編

4 キス

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 俺とキスをするのがアルフレッドに決まったところで、パスカルは気を利かせてかギルバードと共にテントを出ていった。

 去り際に、

「終わったらすぐ呼ぶんだぞ、あと唾液を飲ませるように濃厚にキスするんだぞ」

と、更にいかがわしい捨て台詞を吐いて出ていった。
 なんなんだあのショタ変態ヤローは!
 俺は本当に体調が悪いのにちょっと興奮してきていた。俺も人のこと言えない変態である。

 座っているのもキツくなっていた俺に気づいたアルフレッドは優しくベッドに寝かせてくれた。

「あの、アルフレッドさんごめんなさい。俺のせいでこんなことになって……」

 なぜキスをすると俺の寿命が延びるのかの理由は分からないが、こんなイケメンの男性が俺なんかとキスしたい訳がない。
 さっきは一人で盛り上がってしまったが、相手のことを考えると申し訳なさが募ってきた。

「いいさ、サタローが生きれるんだったらキスくらいいくらでもするよ」

 出会って数分だというのにアルフレッドは嫌な顔一つせずにそんな優しい言葉を俺に掛けてくれた。これぞ紳士というものなのだろうか。見た目だけでなく中身までイケメンだ。

「じゃあ、目を閉じてサタロー」
「は、はい!」

 アルフレッドはキスするのに慣れているようで優しくリードしてくれた。きっとたくさんの女性と付き合ってきたのだろう。海外ではキスなんてそもそも当たり前なのか。自分のウブさが恥ずかしくなる。

 目を瞑ると数秒後にアルフレッドの柔らかい唇の感触がした。俺は緊張して目を更にギュッと瞑る、それと同時に唇もギュッと閉じてしまっていたらしい。

 アルフレッドは唇を離し少し笑いながら、

「サタロー、口を開けて」

と、優しく囁いてきた。

 俺は恥ずかしくなって少し目を開ける。

「ごめんなさい、俺。こういうの初めてで」

 俺は正直にキスするのが初めてだとアルフレッドに伝えた。するとその言葉に馬鹿にすることもなく、彼は微笑む。

「そっか、私がサタローのファーストキスの相手なんて光栄だな」
「えっ」

 俺はその言葉に盛大に照れて口をポカーンと開けていた。するとアルフレッドは俺が力を抜いたのを見逃さず口づけをして、そのまま俺の口腔内に舌を入れ絡ませてきた。

 俺は咄嗟のことで何が起きたのかもわからず、アルフレッドのなされるがまま口づけをした。

「んぅ──」

 背筋がゾクゾクして何も考えられない。
 頭がぼーっとして心臓がドクドクするのを感じる。うまく息が吸えなくて苦い。頑張って鼻で息をするよう意識するが、生憎初めてのキスで上手くできない。
 しかし苦しさの中に気持ちよさもあってクセになりそうだ。

 初めてだからアルフレッドが上手いのかはわからないが、きっととても上手なんだと思う。

 アルフレッドはパスカルの捨て台詞の通り舌を絡ませながら唾液を俺の中に流し込んで来た。俺もそれを懸命に飲み込んだ。

 どのくらい舌を絡ませていただろう数分ぐらいだと思うが、俺にはとても長く感じた。

「んっ、はぁはぁ──」
「はぁはぁ」

 アルフレッドが俺から口を離すとどちらのものかわからない唾液が糸を引いた。
 俺だけではなくアルフレッドの息も上がっている。

「どうだい、サタロー良くなった?」
「あっ、えっと」

 頭がぼーっとして、アルフレッドが言っている言葉が上手く理解できないでいた。
 俺はゆっくりと自分の体調を確認する。

「あれ、なんか調子が良くなったかも」

 何故だかわからないが、確実に息苦しさもガンガンと響く頭痛も視界がぼやけることも無くなっていた。

「そっか、よかった……パスカルを呼んでくるね」

 そう言ったアルフレッドは、ベッドから離れ何事もなかったようにテントの出口の方に向かっていく。

 やっぱり慣れてるんだなと同じ男としてショックに思ってしまう。今更もっとして欲しかったなんて欲望が込み上げる。
 ファーストキスがこんなイケメンにしてもらえただけでも、最高なことなのに更に求めるなんて強欲すぎる。

 俺はそんな欲深い目でアルフレッドがテントから出るのを見ていた。

──初めてのキスは吐血のせいで鉄の味がした,

 





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