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第一章 転移編
3 血
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テントの中には俺とパスカルの二人だけとなった。死ぬと宣告してきたパスカルは、誰よりも冷静で少し怖い。
「ふー、さてサタロー調子はどうだ」
俺の体調を気にしながらパスカルはベットに座っている俺に近づいてくる。その顔はやはり無表情で怖い。
「えっと、いいとは言えないですけど……死ぬとは思えない……ゔっ、ゴホゴホ」
体調が良いわけではないが、数時間後に死ぬほどの体調不良ではないと感じた俺は、そうパスカルに伝えようとする。
しかし、急に咳が出て反射的に口を手で抑える。口の中と手にドロッとした気持ちの悪い感触があるのを感じた。
俺は恐る恐る自分の手のひらを見る。
「……血?」
吐血をするなんてドラマでしか見たことがなかった俺はパニックになる。俺は本当に死んでしまうのかと一気に焦りはじめた。
怖くなり恐る恐るパスカルの方を見る。
「はぁ、もう少し保つと思ったがやはり死が迫っているな。話はまずお前の寿命を延ばしてからにするか」
ため息を吐きながらも寿命を延ばすという、非科学的なことを言っている。今の俺にとっては救いの言葉であった。
「そんなこと……出来るのか?」
「あぁ、出来るぞ。お前は単純に体の中に魔力がなくて生きられないだけだからな」
「ま、りょく? ゴホゴホ」
俺が狸寝入りをしている時もギルバードとそんな話をしていたが、どう言う意味なのだろうか。聞こうとした俺だが、咳が止まらず咳をすればするほど、どんどん体調が悪くなっていく。
「説明は後だ……とりあえずアルとギルを呼び戻すか」
そう言ってパスカルは、先程自分で出て行くように言ったアルフレッドとギルバードをテントの中に呼び戻した。
◇◇◇
「どうしたんだ、もう話は終わったのかい?」
「いや、まだだが話の前にサタローが死にそうでな」
「おいおい、吐血してんじゃねーか」
俺の体調をみてアルフレッドとギルバードは心配そうに近づいてきた。
二人を呼ぶことで俺の寿命を延ばすことができるのだろうか。
そもそもこのパスカルという少年が嘘をついてからかっているのかもしれない。
アルフレッドもギルバードもだいぶパスカルを信用しているようだが、なんだか胡散臭い。
「まぁ、説明している時間もないし……アルかギルどちらでも良いからサタローにキスしろ」
「はぁぁ!」
「えっ!」
「ゴホゴホ」
あまりに突拍子のないパスカルの発言に声を出して驚くアルフレッドとギルバード、ついでに俺もむせ込んでしまう。
キ、キ、キ、キスだと!?
前世でファーストキスもまだだったのに、異世界転移して数時間やそこらでキスをするのか。それも前世でもみたこともないようなイケメン二人のどちらかと!
願ってもいないことだし、ゲイの俺からしたら男とのキスには抵抗はない。が、ほぼ初対面の相手にキスするのはさすがに抵抗があるぞ!嬉しいけれども!さっき人を好きになったりしないとか言ってたけど惚れてまうぞ!
死にそうなのに満更でもないと思ってしまう。最低な俺だがイケメン二人の反応が気になりチラッと横目で二人の表情を伺う。
「なんでコイツとキスしなきゃいけねーんだよ!」
ギルバードは、急なキスしろ発言にイラついているようで、パスカルの方を睨み怒鳴っている。そりゃそうだよな……
「キスするとサタローが元気になるのかい?」
アルフレッドは戸惑いながらも、俺の身を案じてくれているようだ。優しい……
なんか少女漫画のヒロインにでもなったようで、死が迫ってこれから天国に行くはずだが、もうここが天国なんじゃないかと思ってしまう。
パスカルは相変わらずの無表情で、二人の対照的な反応に心底どうでも良さそうにしている。
「どっちでも良いから、さっさとキスしろ。軽くなんて言わずにぶちゅーと熱く舌を絡ませる情熱的なディープキスだぞ」
なんなんだそのいかがわしい要求は、俺は今からディープキスされるのか!
アルフレッドとギルバードは困惑しながら顔を見合わせる。困惑と言ってもアルフレッドは戸惑いが混ざったようだが、ギルバードは大層嫌なご様子だ。
沈黙が続く──
「私がするよ」
テント内にアルフレッドの声が響いた。
「ふー、さてサタロー調子はどうだ」
俺の体調を気にしながらパスカルはベットに座っている俺に近づいてくる。その顔はやはり無表情で怖い。
「えっと、いいとは言えないですけど……死ぬとは思えない……ゔっ、ゴホゴホ」
体調が良いわけではないが、数時間後に死ぬほどの体調不良ではないと感じた俺は、そうパスカルに伝えようとする。
しかし、急に咳が出て反射的に口を手で抑える。口の中と手にドロッとした気持ちの悪い感触があるのを感じた。
俺は恐る恐る自分の手のひらを見る。
「……血?」
吐血をするなんてドラマでしか見たことがなかった俺はパニックになる。俺は本当に死んでしまうのかと一気に焦りはじめた。
怖くなり恐る恐るパスカルの方を見る。
「はぁ、もう少し保つと思ったがやはり死が迫っているな。話はまずお前の寿命を延ばしてからにするか」
ため息を吐きながらも寿命を延ばすという、非科学的なことを言っている。今の俺にとっては救いの言葉であった。
「そんなこと……出来るのか?」
「あぁ、出来るぞ。お前は単純に体の中に魔力がなくて生きられないだけだからな」
「ま、りょく? ゴホゴホ」
俺が狸寝入りをしている時もギルバードとそんな話をしていたが、どう言う意味なのだろうか。聞こうとした俺だが、咳が止まらず咳をすればするほど、どんどん体調が悪くなっていく。
「説明は後だ……とりあえずアルとギルを呼び戻すか」
そう言ってパスカルは、先程自分で出て行くように言ったアルフレッドとギルバードをテントの中に呼び戻した。
◇◇◇
「どうしたんだ、もう話は終わったのかい?」
「いや、まだだが話の前にサタローが死にそうでな」
「おいおい、吐血してんじゃねーか」
俺の体調をみてアルフレッドとギルバードは心配そうに近づいてきた。
二人を呼ぶことで俺の寿命を延ばすことができるのだろうか。
そもそもこのパスカルという少年が嘘をついてからかっているのかもしれない。
アルフレッドもギルバードもだいぶパスカルを信用しているようだが、なんだか胡散臭い。
「まぁ、説明している時間もないし……アルかギルどちらでも良いからサタローにキスしろ」
「はぁぁ!」
「えっ!」
「ゴホゴホ」
あまりに突拍子のないパスカルの発言に声を出して驚くアルフレッドとギルバード、ついでに俺もむせ込んでしまう。
キ、キ、キ、キスだと!?
前世でファーストキスもまだだったのに、異世界転移して数時間やそこらでキスをするのか。それも前世でもみたこともないようなイケメン二人のどちらかと!
願ってもいないことだし、ゲイの俺からしたら男とのキスには抵抗はない。が、ほぼ初対面の相手にキスするのはさすがに抵抗があるぞ!嬉しいけれども!さっき人を好きになったりしないとか言ってたけど惚れてまうぞ!
死にそうなのに満更でもないと思ってしまう。最低な俺だがイケメン二人の反応が気になりチラッと横目で二人の表情を伺う。
「なんでコイツとキスしなきゃいけねーんだよ!」
ギルバードは、急なキスしろ発言にイラついているようで、パスカルの方を睨み怒鳴っている。そりゃそうだよな……
「キスするとサタローが元気になるのかい?」
アルフレッドは戸惑いながらも、俺の身を案じてくれているようだ。優しい……
なんか少女漫画のヒロインにでもなったようで、死が迫ってこれから天国に行くはずだが、もうここが天国なんじゃないかと思ってしまう。
パスカルは相変わらずの無表情で、二人の対照的な反応に心底どうでも良さそうにしている。
「どっちでも良いから、さっさとキスしろ。軽くなんて言わずにぶちゅーと熱く舌を絡ませる情熱的なディープキスだぞ」
なんなんだそのいかがわしい要求は、俺は今からディープキスされるのか!
アルフレッドとギルバードは困惑しながら顔を見合わせる。困惑と言ってもアルフレッドは戸惑いが混ざったようだが、ギルバードは大層嫌なご様子だ。
沈黙が続く──
「私がするよ」
テント内にアルフレッドの声が響いた。
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