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第四部
伍長の決断
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ノーラのことについては、トームと私達の問題です。山羊人達は、自分達では面倒見切れないノーラを見捨てた。それを伍長が拾い、そして私達が保護した。
そこでもうノーラの件は決着がついてるんです。だからザフリも何も言わない。トームがノーラとの間で子供まで作って、しかもその子供がこうしてすくすく元気に育っている。トームも幸せそう。だったらこれ以上、何が問題なのですか?
別にノーラを受け入れろとも言っていませんし。無理なら無理だと認めるのも大事です。
でも、今後も似たような事例は出てくるでしょう。だけどその度に、伍長は助けるんでしょうね。
それに今はもう、ノーラはトームがいればだいたい大丈夫です。対処法は私達が伝えました。トームも熱心にそれを学んでくれました。だから私達は少しばかりて手を貸すだけで済んでる。だとしたらまた保護されても、対処できます。
すると、
「おう、帰ったぞ~!」
伍長が帰ってきました。猪人達の集落に行ってたのに。いつもはもっと遅いのに。
そしたら彼の腕に、赤ん坊の姿。猪人の赤ん坊でした。
「え? どうしたんですか? その子」
戸惑う私に、彼はこともなげに、
「ああ、こいつな、目が見えないみたいなんだ。で、要らないって言うから俺がもらってきた」
「は…? もらってきたって、ええ……?」
まさか私がその話をしたからってわけでもないでしょうけど、このタイミングでですか?
「目が見えないって……どうするつもりなんですか? 伍長」
ノーラは、知能の発達が遅れているだけでそれ以外は健康でした。知能も、二歳児程度くらいはあったでしょう。だから最低限のことは教えることもできました。だけど目が見えないとなると、手間はその比ではないでしょう。なのに彼は、
「はあ? 何言ってんだビア樽。視力に頼らない生き物なんざいくらでもいるじゃねえか。生きる上で視力なんてのも絶対に必要ってわけじゃねえんだよ。言っとくがお前、俺が戦ってる時に視力に頼ってると思ってたのか? 俺が灯りもねえところで獣蟲とやり合ってた時に目で見てたとか思ってんのかよ? んなわけねえだろ。音と空気の流れを読む皮膚感覚を磨きゃそれくらいはできんだ。
でもまあ、猪人の連中にゃそれを教えんのはできねえだろうから、俺がやる」
「ええ……?」
私も、店の方にいたトームもメイミィも、裏の物置で商品の管理をしていたラレアトも、そしてザフリも、唖然としてしまいます。
でも、彼がそう言うのなら、そうなんでしょう。さらには、
「こいつは俺とクレアの子として育てる。ついては、俺とクレアとこいつのために家を建てる」
平然とそう言ってのけたのでした。
そこでもうノーラの件は決着がついてるんです。だからザフリも何も言わない。トームがノーラとの間で子供まで作って、しかもその子供がこうしてすくすく元気に育っている。トームも幸せそう。だったらこれ以上、何が問題なのですか?
別にノーラを受け入れろとも言っていませんし。無理なら無理だと認めるのも大事です。
でも、今後も似たような事例は出てくるでしょう。だけどその度に、伍長は助けるんでしょうね。
それに今はもう、ノーラはトームがいればだいたい大丈夫です。対処法は私達が伝えました。トームも熱心にそれを学んでくれました。だから私達は少しばかりて手を貸すだけで済んでる。だとしたらまた保護されても、対処できます。
すると、
「おう、帰ったぞ~!」
伍長が帰ってきました。猪人達の集落に行ってたのに。いつもはもっと遅いのに。
そしたら彼の腕に、赤ん坊の姿。猪人の赤ん坊でした。
「え? どうしたんですか? その子」
戸惑う私に、彼はこともなげに、
「ああ、こいつな、目が見えないみたいなんだ。で、要らないって言うから俺がもらってきた」
「は…? もらってきたって、ええ……?」
まさか私がその話をしたからってわけでもないでしょうけど、このタイミングでですか?
「目が見えないって……どうするつもりなんですか? 伍長」
ノーラは、知能の発達が遅れているだけでそれ以外は健康でした。知能も、二歳児程度くらいはあったでしょう。だから最低限のことは教えることもできました。だけど目が見えないとなると、手間はその比ではないでしょう。なのに彼は、
「はあ? 何言ってんだビア樽。視力に頼らない生き物なんざいくらでもいるじゃねえか。生きる上で視力なんてのも絶対に必要ってわけじゃねえんだよ。言っとくがお前、俺が戦ってる時に視力に頼ってると思ってたのか? 俺が灯りもねえところで獣蟲とやり合ってた時に目で見てたとか思ってんのかよ? んなわけねえだろ。音と空気の流れを読む皮膚感覚を磨きゃそれくらいはできんだ。
でもまあ、猪人の連中にゃそれを教えんのはできねえだろうから、俺がやる」
「ええ……?」
私も、店の方にいたトームもメイミィも、裏の物置で商品の管理をしていたラレアトも、そしてザフリも、唖然としてしまいます。
でも、彼がそう言うのなら、そうなんでしょう。さらには、
「こいつは俺とクレアの子として育てる。ついては、俺とクレアとこいつのために家を建てる」
平然とそう言ってのけたのでした。
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