獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

できるか? クレア

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私達は、

『他人が自分を敬わないから自分も他人を敬わない』

などと、『他人の所為』にして自分の行いを正当化するつもりもありません。

『他人がしないから自分もしない』

というのを臆面もなく口にする人は、<大人>と言えるのですか?



「どう? 大丈夫だった?」

毎日の日課として、朝と夜の二回、私は、トームとノーラとレータの様子を確かめに顔を覗かせます。今日も、祭の方の作業を終えてよろずやに戻り、夕食を終え、お風呂に入った後で。

「ダイジョウブ。フタリトモ、ネテル」

扉を開けたトームが、寝室の方に振り返りながら応えました。

「そう。ならよかった」

私もホッとします。今日は少し帰るのが遅くなったから、トームとレータはすでに家に帰ってて、顔を見られなかったんです。昼を担当するトームと夜を担当するフロイとの引継ぎも、すっかり問題なくできるようになっていました。

今後は、さらに<従業員>を増やして、休みをちゃんと取れるようにもしていきたいですね。

「今は、完全に無休で働いてもらってることになるからね」

少佐がそう言うとおり、時々は臨時休業もしますけど原則として年中無休の二十四時間営業の<よろずや>は、現状ではトームとフロイの昼夜二交代での勤務という形になっています。もちろん私達も入るものの、今は祭の準備で特に昼はトームに任せっきりになっているんです。

お客もそんなにひっきりなしにくるわけでもないし、売り上げの管理とかはしなくて済むし、商品の仕入れや加工についてはほとんど私と少佐と伍長でしてるので、そんなに過酷な勤務ではないにしても、さすがに<無休>というのは、ね。

で、クレアにも店を任せることになりました。

これまで、伍長の傍を離れたがらなかったクレアも、<精神的な成長>と共に、夜間の哨戒任務をこなせるようになり、伍長と離れて過ごせる時間が長くなってきたからです。

「どうだ。できるか? クレア」

初めてアルバイトを始めた妹に声を掛けるかのように、伍長がクレアの頭を撫でながら言いました。

「ウン、デキルヨ。ユキ…♡」

嬉しそうにそう言う彼女に、

「偉いな。クレアは」

私への態度とはまるで違って、ものすごく優しそうに笑顔を向けるんです。なんですかね、この違いは。

まあ、彼にとってクレアは本当に妹のような存在なんでしょうけど。<軍の同僚>だった私と違って。

ただ、やっぱり彼女を見る伍長の視線や向けられる態度は、<妹へのそれ>っていう印象なんですよね。

決して、<恋人へのそれ>じゃないんです。

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