獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

ぶきゃーっ!!

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まあ、伍長がクレアを<恋人>としてではなく<妹>のように見ていることについては本人の問題なので私にはどうしようもありませんが、クレアがトームと一緒に日中の店番をしてくれるようになったことで、次は、夜間のシフトを何とかしないといけなくなりました。

いずれは、四勤三休という形で日をずらして休みを取ってもらおうと考えているんです。

で、夜勤については、さて、誰かいないでしょうか……?

夜が主な活動時間である獣人と言えば、梟人きょうじん山猫人ねこじん、そして鼠人そじんも基本的に夜を中心に活動する種族ですね。

ただ、鼠人そじんは、体が三十センチにも満たないくらいに小さく、しかも梟人きょうじん山猫人ねこじんを強く恐れているので、フロイと一緒にというのはさすがに過酷でしょう。

梟人きょうじんについては、今度はフロイが気まずいでしょうね。

となると、山猫人ねこじんですか……?

瞬間、ニャルソの顔が頭に浮かびました。

『いやいや! 彼はない! 彼だけはない!!』

私は全身に怖気おぞけが走るのを感じながら頭を振りました。あの軽薄で下半身でものを考えているかのような彼が私の傍にいるなど、もはや地獄です。

「大丈夫。僕も彼はないと考えているよ」

少佐は私の気持ちを酌んでくださいますけど、

「別にヤらせりゃいいじゃねえか。減るもんじゃなし」

伍長はそんなことを。

「減るんですよ!! 私の精神が!! すり減るんです!!」

ついそう言い返すと、

「へ…っ」

伍長は鼻で笑いつつ肩を竦めました。

『あ~もう! ホントにこの人は!!』

あまりに大きな声を上げてトームの家にまで届けば怯えさせてしまうので抑えますけど、マジで殴りたい……!! もっとも、私の打撃じゃ、彼にとっては蚊に刺されたほどでもないでしょうね。ただ、彼を殴れは今度はクレアが怒るので、これもナシです。ましてやレータが見てる前では殴れない。

気に入らないことがあればすぐに相手を殴っていいというのは、学習させたくないんです。山羊人やぎじんには、<角相撲>という、紛争解決のためのルールがあります。そのルールに則ってぶつかるのはいいんですが、それ以外で力に頼るのはそれこそただの暴力ですから。

山羊人やぎじんの社会でも、私闘は禁じられています。

大人がルールを蔑ろにしていては、子供が素直にルールに従ってくれるわけないじゃないですか。

すると、少佐が、突然、

「よしよし……」

私を抱き締めて、背中をトントンとしてくれました。

『うぴゃあっ!!』

心の中で、わけの分からない声が出ます。

「しょ、しょ、しょ…少佐……っ!?」

やっとそう声を出したら、

「嫌かい? 嫌だったらやめるけど……」

って。

『ぶきゃーっ!! 嫌なわけないじゃないですか!?』

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