獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

どこで線を引こうとも

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こうして一日を終え、睡眠を取り、また翌日に備える。

人生とは、この繰り返しでもあるのでしょう。睡眠も休息も必要なロボットとは根本的に違います。

なのに、地球人の社会では、

『ロボットに過重労働を課すな!』

『ロボットにも権利を!』

というようなことを訴える人達がいます。なるほど確かに人間によく似た姿をしたメイトギアなどが傷付いたりしているところを見ると私もいい気分はしませんが、だからといって、人間と同じように扱うのはおかしいはずなんです。

だってロボットは苦痛を感じないから。痛覚センサーや触覚センサーは備えられていますけど、でもそれを<苦痛>と感じるかどうかは別の話なんです。

ロボットは、ロボットに搭載されたAIは、痛覚センサーからもたらされる信号を、ただの<データ>としか認識できないのですから。

痛覚センサーを備えているのは、<人間が感じる痛み>を察知するためです。

『このようにされると人間は痛みを感じる』

と理解するために備えられているだけであって、

『人間に痛みを与えないためには痛覚センサーが反応しない接し方をしなければいけない』

と考えられるようにするのが目的なんです。本当に痛みを感じているわけじゃない。なにしろロボットには<命>がそもそもないから、

『苦痛によって生命の危機を察知する』

必要がそもそもない。生物が<苦痛>を感じるのは、自身の生命に危機が迫っていることを認識するためなんです。

データさえ残っていればボディが何度破壊されようとも新しいそれに交換してしまえば済むロボットと生物を同列に考えること自体が、そもそもおかしい。

これは、

『道具を大切にする』

こととは根本的に違う話です。

身を守る道具であるはずの銃を大切にするあまり、必要な時に使わずに自分が命を落としていたら何の意味もないじゃないですか。本末転倒の極みでしょう。

しかも、『ロボットにも権利を』と訴える人達のほとんどが、同じくAIを備えているはずの<家電製品>や<自動車>については、権利を求めたりしない。

自動車なんて、搭載されているAIの性能そのものは、ロボットと同等以上のものなんですよ? と言うか、<自動車型のロボット>なんです。単に、<人型のロボット>のような形では人間とコミュニケーションを取らないというだけで。

もう、これだけでも明らかに矛盾しているのが分かる。

一部の<過剰な動物愛護を訴える人々>や<生き物を殺すなと訴える人々>と同じですよね。<守るべきもの><保護するべきもの>と<それ以外>を、自分達の勝手な解釈で線引きしている。

いえ、ある程度のところで線を引く必要があるのは分かるんです。ただ、

『どこで線を引こうとも所詮は<人間のエゴ>でしかない』

のは理解しないといけないでしょうねというだけのことで。

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