61 / 126
半端者か
しおりを挟む
『やっぱり女としての魅力が足りないからかなあ……』
今日は首尾よく早々に獲物を捕らえられたので昼過ぎには家に戻り、家の近くを流れる沢で水浴びをしつつ自分の体に触れながら、イティラはそんなことを考えていた。
ウルイが自分を女性として見てくれないのは、やはり<女の魅力>が足りないからだと。
しかし、ウルイの反応を見ているからそう感じるだけで、実はイティラ自身の発育は順調で、確かに成熟した<大人の女性>ほどではなくても、すでに色香を放ちつつあった。ましてや今は、水に濡れた毛皮が滴を滴らせながらぴったりと体に張り付き、女性らしさを得つつある体のラインがはっきりと浮き出ている。
まるで、芸術品のような、思わず目が奪われそうになるほどの美しさがある。
しかも、ウルイがまったく気にしていないので逆にイティラの方も意識していないのだが、実際には意図して<慎み深く>していないと普通の男性なら十分に惑わされる程度には、<女性としての匂い>を放ってもいるのだ。
この世界では基本的に十五歳前後で成人の仲間入りを果たすことになるので、十三くらいともなればすでに婚約者や結婚を前提に付き合っている相手がいてもなにもおかしくないという事情もある。
要するに、
『ウルイが普通じゃない』
というだけなのだ。五歳かそこらでこの森に捨てられたイティラでさえ、ウルイが普通じゃないことは何となく察している。
が、先日はじれったさについ感情的になってしまったものの、イティラ自身が<普通>ではなく、なのにそんな普通じゃない自分を受け入れてもらっていることで、ことさら強くその点を責めるつもりもなかった。
『そんなことで怒られたってウルイも困るよね……』
ウルイから気遣いや相手を敬うことを学んだ彼女は、そういう風に考えることもできる。
とは言え、
『いったいどうしたらウルイをその気にさせることができるんだろ……』
なんてことも考えてしまう。
が、その時、
「!?」
馴染みのない<気配>を察し、イティラは沢から飛び出して身構えた。彼女に送れて舞った滴がキラキラと光を放ち、彼女を彩っているかのようだ。
けれどそんな美しさとは裏腹に、イティラの表情は険しい。その彼女が視線を向ける先、イティラとウルイの家に向かうのとは反対側の斜面に、<何か>がいる。
ただ、イティラには覚えのある<匂い>だった。
『獣人……っ!?』
そう。獣人の匂いだ。しかし、キトゥハとは明らかに違う。別の知らない獣人の匂い。
すると、斜面の茂みの中から、
「お前、何でそんな姿をしている……?」
硬い口調で詰問する声。
若い、声変わりして間もない感じの、成人になったばかりかどうかという男の声。
「……」
おそらく、人間でも獣でもない姿をしているイティラを訝しんで問うてきたのだろうとは察せられるものの、彼女はそれには応えなかった。応える気になれない問い掛け方だったからだ。
するとその声の主は、
「そうか、半端者か……」
明らかに嘲りが込められた口調で、呟いたのだった。
今日は首尾よく早々に獲物を捕らえられたので昼過ぎには家に戻り、家の近くを流れる沢で水浴びをしつつ自分の体に触れながら、イティラはそんなことを考えていた。
ウルイが自分を女性として見てくれないのは、やはり<女の魅力>が足りないからだと。
しかし、ウルイの反応を見ているからそう感じるだけで、実はイティラ自身の発育は順調で、確かに成熟した<大人の女性>ほどではなくても、すでに色香を放ちつつあった。ましてや今は、水に濡れた毛皮が滴を滴らせながらぴったりと体に張り付き、女性らしさを得つつある体のラインがはっきりと浮き出ている。
まるで、芸術品のような、思わず目が奪われそうになるほどの美しさがある。
しかも、ウルイがまったく気にしていないので逆にイティラの方も意識していないのだが、実際には意図して<慎み深く>していないと普通の男性なら十分に惑わされる程度には、<女性としての匂い>を放ってもいるのだ。
この世界では基本的に十五歳前後で成人の仲間入りを果たすことになるので、十三くらいともなればすでに婚約者や結婚を前提に付き合っている相手がいてもなにもおかしくないという事情もある。
要するに、
『ウルイが普通じゃない』
というだけなのだ。五歳かそこらでこの森に捨てられたイティラでさえ、ウルイが普通じゃないことは何となく察している。
が、先日はじれったさについ感情的になってしまったものの、イティラ自身が<普通>ではなく、なのにそんな普通じゃない自分を受け入れてもらっていることで、ことさら強くその点を責めるつもりもなかった。
『そんなことで怒られたってウルイも困るよね……』
ウルイから気遣いや相手を敬うことを学んだ彼女は、そういう風に考えることもできる。
とは言え、
『いったいどうしたらウルイをその気にさせることができるんだろ……』
なんてことも考えてしまう。
が、その時、
「!?」
馴染みのない<気配>を察し、イティラは沢から飛び出して身構えた。彼女に送れて舞った滴がキラキラと光を放ち、彼女を彩っているかのようだ。
けれどそんな美しさとは裏腹に、イティラの表情は険しい。その彼女が視線を向ける先、イティラとウルイの家に向かうのとは反対側の斜面に、<何か>がいる。
ただ、イティラには覚えのある<匂い>だった。
『獣人……っ!?』
そう。獣人の匂いだ。しかし、キトゥハとは明らかに違う。別の知らない獣人の匂い。
すると、斜面の茂みの中から、
「お前、何でそんな姿をしている……?」
硬い口調で詰問する声。
若い、声変わりして間もない感じの、成人になったばかりかどうかという男の声。
「……」
おそらく、人間でも獣でもない姿をしているイティラを訝しんで問うてきたのだろうとは察せられるものの、彼女はそれには応えなかった。応える気になれない問い掛け方だったからだ。
するとその声の主は、
「そうか、半端者か……」
明らかに嘲りが込められた口調で、呟いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる