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そう考え始めると

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矢を作っているウルイの手つきはさすがに熟練の域に達しているようで、ほとんど魔法のように矢ができていく。彼にとっては生きるために必要な作業だったから本人も意識しないうちにできるようになっただけだが。

ただこれも、矢に向いている木などについては、先述の<知人>から教わった知識ではある。

そうしてイティラが食事の用意をしている僅かな時間の間に三本の矢を作ってみせて、

「できたよ」

彼女がそう声を掛けるとすぐに作業を終えて、食事になった。

メニューは、山菜と干し肉を一緒に煮て僅かな塩で味付けしただけの鍋に、蛇肉の串焼きという、相変わらずただ生きるためだけの<餌>同然のものではあるが、料理については<知人>も似たようなものだったので、他に知らなかった。

一方、イティラも、家族と共にいた時にはそれこそ<残飯>のようなものしか与えられておらず、彼女も<まともな食事>をいうものを知らなかったというのもある。

森に捨てられてからはそれこそ生きた小動物を丸かじりするか、自生している果実を生のまま食うだけだったし。

それでも、ウルイと一緒に食事をしている時の彼女の表情は、何とも言えないくらいとても穏やかだった。

誰が見ても、

<幸せそうな表情>

だっただろう。

実際、彼女は幸せだった。ウルイに出逢うまで、こんな安らいだ気持ちになったことなどなかった。だから、美味しいものが食べられるとか、綺麗な服が着られるとか、楽しい遊びができるとか、そういうものが一切なくても、彼女にとっては毎日が楽しかった。

ウルイと一緒にいられるだけで幸せだった。

それだけだ。それ以上は何も望んでいない。

けれど……

けれど、ウルイはそう思っていなかった。

自分は望んで今の生活を選んだから、それに不満はない。しかし、イティラのことは、

『こいつは、親に捨てられて仕方なく今の生活をしてるだけだ……』

と思っていた。

『こいつだって本当はもっと美味いものが食いたいだろうし、綺麗なあたたかい家に住みたいだろうし、友達とかも欲しいんじゃないのか……?』

そんな風に考えてしまう。

だけど自分は、それを用意してやれない。それを用意してやれない自分がこいつの面倒を見てるのは、間違ってるんじゃないか……?

そう考え始めると、胸が掻き毟られるような気分になる。

だからもうこれ以上は……

『あいつを見付けられさえすれば……

今も同じところにいればいいが……』

そんなことを考えつつ、こんな、到底<食事>とは言えないものを嬉しそうに食べているイティラをまともに見ることができず、ウルイは俯いたまま胃に流し込むようにして食べたのだった。

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