凶竜の姫様

京衛武百十

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出逢い

天照とレトラ、その違い

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アンデルセンは続ける。

「マヒルの母親のレトラは、同じくダイナソアンでありながら人間社会にも適応し、マヒルを生み、アカネ達とも<良き隣人>として交流し、<人間の一人>として穏やかな生涯を送ることができた。とは言え、それはすべての個体が同じことをできる根拠にはならない。人間をはじめとした<多様性>を戦略とする生物は、いかなる環境にも、それぞれ適応できる個体を発生させるために敢えて大きな個体差を生じさせる。

多様性を否定することは、人間という種そのものを否定するのと同じなのだ。多様性を否定する者は、自らが<多様性を許容しようとする社会>の中にいるからこそ生きていられているという事実を知らなければいけない。

とは言え、天照あまて斬竜キル自身が望んでいないのであれば無理に人間社会に閉じ込めておくのも、それ自体が多様性の否定につながる。我々は、それを的確に評価する必要がある」

と。それを受けて、

「はい。承知しています、主任」

キャシーは応えた。斬竜を人間社会に留めるか、野生に戻すか、その指針を自分達が示すことになる責任を、彼女は理解している。

だがその時、アンデルセンの回路に特別な信号が届く。

「なんと……! エレクシアが……!? 予定より早いではないか……!」

それこそ人間のように声を上げた。その様子に、キャシーだけでなく、音声が届いていた他の人間の職員達も、

「エレクシア様が……!?」

「エレクシア様がお目覚めになられた……!?」

そう。錬義れんぎも口にしていた<貴人エレクシア>が目覚めたという通知が、アンデルセンに届いたのである。しかしそれは、予定よりも早いものであった。

するとアンデルセンは、

「エレクシア、何故予定を繰り上げた?」

そう問い掛ける。そして、

「ああ、なるほど、竜女帝の血族ともなれば確かに捨て置けないのは分かる。しかし、特に今のところは問題ないように見受けられるが。

……いや、それはまだ早いのでは? ……分かった。手配しよう」

と口にして。

「スケジュールを繰り上げる。斬竜にとっても早々に判定が下される方が彼女の負担も少ないだろう。これより当研究施設は、強攻試験モードに移行する。なに、いつも通りにやればそれでいい。あとはエレクシアに任せておけば上手くやってくれるだろう」

アンデルセンのその言葉を受けて、職員達は各々が担当している部分のチェックを改めて行った。

<強攻試験モード>ともなれば、いろいろと後始末も大変になるからである。

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