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第三幕

フィクションっていうのはね、目を逸らしてもなくならない<現実>とは違うんだよ。スルーしようと思えばできるんだ。ちゃんとそれをわきまえることが

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『そう言えば『すっきりしない』で思い出したんだけど、最近は本当にフィクションのキャラの言動に対する嫌悪感みたいのが露骨になってきた気がする。

まあ、『気がする』だけで昔からそうだったのかもしれないけどさ。

前にもたぶん言ったけど、それも結局は、『フィクションと現実の区別がついてない』って話なんだよね。

とは言え、主人公や味方に『ウザい』のがいると共感できないっていうのは、確かにあるかもしれない。

でもさ、異世界物なんかだと特にそうだと思うんだけど、たとえば主人公が、<こっちの世界ではウザがられるタイプ>だったとしても、転移なり転生なりした先の住人達が、主人公のウザさなんか目じゃないくらいにブっとんだ性格してたり言動だったりしたら、逆に主人公のウザさなんて埋没しちゃうんじゃない?

空気を読まないタイプの前向きさで周囲をウザがらせてた人だって、それこそ単に、<気合が上滑りしてるだけの未熟な若造>ってことになったりしない? 

あまり好ましくない意味で使われる時の<天上天下唯我独尊>を絵に描いたような傲岸不遜なキャラクターとか、やけに芝居がかった物言いや仕草で胡散臭さ全開のキャラクターとか、他人を上手く利用して意のままに操ってやろうという態度を隠そうともしないキャラクターとか、そういうのが普通にいる世界じゃ、たぶん、<現実世界で『ウザい』と言われてる人>程度じゃ、歯が立たないよ。きっと。

むしろ私なんかには、<そういうとんでもない連中を相手にただただ必死で対抗しようとしてる健気さ>に見えちゃうかな。<未熟であどけない子供>なんだよ。特に、その主人公が未成年だったりしたらね。どうしても親目線で見ちゃう。『あ~…頑張ってんだけどスベってんな~』って感じでさ。

ただ、自分の嫌な部分を、ダメな部分を見せられてるって解釈しちゃう人には、なるほど辛いかな。

私としては、そういうタイプの主人公は嫌いじゃないよ。『頑張れ』って応援したくなっちゃう。

逆に、スカしたタイプは、まあ、それなりに年齢がいってればなるほど経験がそういう態度を取らせるんだなとも思えるんだけど、若い人だと、『あいたたたたた…!』って思っちゃって、ちょっと苦手かもしれない。

だからそういうのはそもそも見ないんだよ。

もし、主人公の成長を描くタイプの物語で、だから最初のうちはその感じになってるって話だったら、完結して、<そういう話>だって分かってから見るよ。興味が湧けばだけど。

フィクションっていうのはね、目を逸らしてもなくならない<現実>とは違うんだよ。スルーしようと思えばできるんだ。

ちゃんとそれをわきまえることが、フィクションの楽しみ方だと私は思う』



フィクションについては僕はあまりよく分からないけど、<作り話>と現実とを混同することの不合理さについては、僕にも分かる気がするな。

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