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第四世代

深編 子供は子供なりに

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新暦〇〇三八年二月二十二日



そうしてしんがのんびりと余生を過ごしている傍らで、萌花ほのかがまさにこれからの命を燃やしていた。

実年齢で三歳。見た目には七歳から八歳くらいに成長してる。パパニアンらしく容易く壁を駆け上って屋根に上り、そこからジャンプ。地球人の子供には決してできない遊び方だな。

そんな萌花ほのかが「きゃあ♡ きゃあ♡」とはしゃいでいても、しんは気にしている様子もない。『そういうものだ』とわきまえているからだろうな。

なるほど萌花ほのかが飛び掛かったりしてくればさすがに黙ってはいられないとしても、

しんが寝てるからね。そっとしておいてあげて」

ひかりが諭すと、

「分かった!」

と元気に返事をしてくれる。ただし、小さな子供は何かに夢中になると分かっていることでも頭からすっぽ抜けてしまうことがあるから、一応、気は付けている。エレクシアやイレーネが常に対応できる状態で待機してくれているんだ。万が一、萌花ほのかが何かのはずみでしんの部屋に転がり込んだりしないようにな。

野性が強いから咄嗟の時には過剰な対処をしてしまう可能性もあるわけで。

普段はおとなしくしていたはずの動物園の猛獣が突然、飼育員に襲い掛かったりということもあるだろう? あれは人間の側が本来の手順を踏まなかったりした時に起こるものらしいな。

それは、人間の側にとっても猛獣の側にとっても不幸だと思う。

なお、萌花ほのかについては、錬慈れんじに対してもあまりちょっかいを掛けないようにひかりに諭してもらってる。パパニアンの力でそんなことをされたら、ただの地球人の赤ん坊と同じ程度の強度しかもたない彼じゃ、容易く壊れてしまうわけで。

その点でも、エレクシアとイレーネは即応体制を取ってくれているんだよ。人間と違って疲れることのないロボットだからできることか。

このことも一応、萌花ほのかは分かってくれてる。

錬慈れんじは壊れやすいからね。優しくしてあげてほしい」

ひかりもそう言ってくれて、萌花ほのかも、

「分かった!」

とは言ってくれてる。これも同じく、興が乗ってきたりしたら頭からすっぽ抜けることがあるだろうから、気を付けないといけない。

子供ってのは<そういうもの>なんだ。分かってても忘れてしまうことがある。

もっとも、ここまでのところは、そこまでの危険はなかった。子供は子供なりにわきまえていたりするんだよな。

残酷な一面を持つのも事実ではありつつ、同時に、大人が思っている以上に物事を考えていたりするんだよ。

だからこそ、大人の想定を上回るようなことをしでかしたりもするんだろうさ。

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