1,532 / 2,557
第三世代
灯編 六本足のキューピッド
しおりを挟む
新暦〇〇三五年七月二十日
そうして、ケイン、イザベラ、キャサリンの三人が正式に加わり、ビクキアテグ村はまた少し大きくなった。それを見て、灯が言う。
「なんか、私も子供が欲しくなってきたかな」
なるほど確かに、ルコアをはじめとして、未来、黎明、素戔嗚、ケイン、イザベラ、キャサリンと、大人三人に対して子供が七人という構成で、しかもみんな、安心して暮らせているんだ。
するとビアンカも、
「今は私も子供達のことで手一杯だから、少佐のこと、任せてもいいよ」
と、内心では決して穏やかじゃないのは事実だとしても、それでも『灯なら』ってことでそう言ってくれた。
これまでにも何度も言ってきたことだが、野生における<ハーレム>は、
『雄が複数の雌をはべらせている』
わけじゃない。あくまで、
『複数の雌が優れた雄を共有してる』
だけなんだ。決して雄にとってばかり都合のいい仕組みじゃない。それを勘違いした地球人があれこれ言ってるだけでしかない。だから、久利生をビアンカと灯が共有するのは、ここじゃ何の不思議もない。
『何人もの女性をはべらせて不快だ!』
なんて戯言もここには届かない。地球人の価値観を押し付けるのはやめることだ。
ここにいる<地球人>は、俺一人。他は全員、<朋群人>なんだよ。朋群人には朋群人の常識が生まれつつあるんだ。野生がすぐ傍にあるそれがな。
何千年か後にはまたそれも変わってくるかもしれないが、少なくとも今は、ビアンカは久利生を灯と共有することを選んだ。その選択に難癖を付ける権利は誰にもない。
「さあて、そういうことなら、久利生、覚悟してもらうからね」
ニヤアとどこか凶悪さも感じさせる笑みを浮かべつつ言った灯に、
「お手柔らかに頼むよ。僕は本当は小心者なんだ」
久利生は苦笑いを浮かべる。
父親としては娘のそういうのに対して複雑な心境がないと言ったら嘘になるが、これも結局は<地球人の感覚>でしかないからな。野生の動物はそんなこといちいち気にしないだろう。
で、ケイン達のための<育児室>に連なる<前室>だったものを今度は、
<久利生と灯の愛の巣>
へと作り変えて、いよいよそういうことになったってわけだ。
順の時と同じように、なんだかんだと周りを取り持つだけで自分は、ってことになるのかとも思ったが、ある意味、灯自身にとっても、
<年貢の納め時>
ってことだったのかもしれないな。
後で聞いた話だと、実は、來を見送った時にはそのつもりだったらしい。ただそれでも、どこか踏み切れなかったそうだ。『ビアンカの二人目の子が来たらその時に……』とか考えて、先延ばしにしようとも。
快活で大胆なように見える灯にも、そういう一面があるってことだ。
なのに、次に来たのはなんとケイン達だったという。本当に思いがけないことがおこる世界だよ。それを思うと、いろいろ吹っ切れたというのもあったらしい。
その踏ん切りを付けさせてくれたケイン達は、ある意味じゃ、
<キューピッド>
だったのかもしない。
<六本足のキューピッド>
だな。
そうして、ケイン、イザベラ、キャサリンの三人が正式に加わり、ビクキアテグ村はまた少し大きくなった。それを見て、灯が言う。
「なんか、私も子供が欲しくなってきたかな」
なるほど確かに、ルコアをはじめとして、未来、黎明、素戔嗚、ケイン、イザベラ、キャサリンと、大人三人に対して子供が七人という構成で、しかもみんな、安心して暮らせているんだ。
するとビアンカも、
「今は私も子供達のことで手一杯だから、少佐のこと、任せてもいいよ」
と、内心では決して穏やかじゃないのは事実だとしても、それでも『灯なら』ってことでそう言ってくれた。
これまでにも何度も言ってきたことだが、野生における<ハーレム>は、
『雄が複数の雌をはべらせている』
わけじゃない。あくまで、
『複数の雌が優れた雄を共有してる』
だけなんだ。決して雄にとってばかり都合のいい仕組みじゃない。それを勘違いした地球人があれこれ言ってるだけでしかない。だから、久利生をビアンカと灯が共有するのは、ここじゃ何の不思議もない。
『何人もの女性をはべらせて不快だ!』
なんて戯言もここには届かない。地球人の価値観を押し付けるのはやめることだ。
ここにいる<地球人>は、俺一人。他は全員、<朋群人>なんだよ。朋群人には朋群人の常識が生まれつつあるんだ。野生がすぐ傍にあるそれがな。
何千年か後にはまたそれも変わってくるかもしれないが、少なくとも今は、ビアンカは久利生を灯と共有することを選んだ。その選択に難癖を付ける権利は誰にもない。
「さあて、そういうことなら、久利生、覚悟してもらうからね」
ニヤアとどこか凶悪さも感じさせる笑みを浮かべつつ言った灯に、
「お手柔らかに頼むよ。僕は本当は小心者なんだ」
久利生は苦笑いを浮かべる。
父親としては娘のそういうのに対して複雑な心境がないと言ったら嘘になるが、これも結局は<地球人の感覚>でしかないからな。野生の動物はそんなこといちいち気にしないだろう。
で、ケイン達のための<育児室>に連なる<前室>だったものを今度は、
<久利生と灯の愛の巣>
へと作り変えて、いよいよそういうことになったってわけだ。
順の時と同じように、なんだかんだと周りを取り持つだけで自分は、ってことになるのかとも思ったが、ある意味、灯自身にとっても、
<年貢の納め時>
ってことだったのかもしれないな。
後で聞いた話だと、実は、來を見送った時にはそのつもりだったらしい。ただそれでも、どこか踏み切れなかったそうだ。『ビアンカの二人目の子が来たらその時に……』とか考えて、先延ばしにしようとも。
快活で大胆なように見える灯にも、そういう一面があるってことだ。
なのに、次に来たのはなんとケイン達だったという。本当に思いがけないことがおこる世界だよ。それを思うと、いろいろ吹っ切れたというのもあったらしい。
その踏ん切りを付けさせてくれたケイン達は、ある意味じゃ、
<キューピッド>
だったのかもしない。
<六本足のキューピッド>
だな。
0
お気に入りに追加
175
あなたにおすすめの小説
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる