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第三世代

麗編 <悪>を学ばせてしまう

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しょうがまだようと一緒に行動していた時に襲い掛かってきたヒト蜘蛛アラクネも、ほまれ達と衝突したパパニアンの群れも、そう達を襲撃しようとしたレオンやオオカミ竜オオカミの群れも、りょうと戦ったマンティアンの龍然りゅうぜんも、別に<悪>じゃない。皆、ただ生きるために自分にできることをしようとしていただけだ。

その一方で、きょうがくは、明らかに人間そのものへの<憎悪>を見せていた。これは、例の不定形生物の中に見え隠れする<何者か>の影響だとみられてる。

つまり、<悪>というものは、人間と、人間に準じたある程度以上の知的生命体だけに見られる特徴の一種に過ぎないと考えられるんだろうな。

実際、そういう説を唱える心理学者や生物学者もいるそうだ。

そして、それは、人間を含む知的生命体が、互いに軋轢を拗らせていくことで醸成していったものだっていう気がする。

だってそうだろう? 生まれたばかりの赤ん坊に<邪悪>なんてものがあるか? たしかに赤ん坊は本能に従順だろうから、時には周りの人間にとって不利益なことをするかもしれない。だがそこに<悪意>はないんだ。オカルトやフィクションと現実の区別がつかない者はそこに<悪>を見てしまうかもしれないが、実はそれこそが<悪>の正体なんじゃないだろうか。

本来は<悪の概念>を持たない者にそれを植え付けてしまうという形で。

悪意を持って接してくる輩が、<悪>を学ばせてしまうと言うべきか。

実際、ひかりにもあかりにもまどかにもひなたにも、そしてじゅんにも、明確に<悪>と呼べるものは見えないからな。

俺もシモーヌも、ひかり達に悪意を向けることはしなかった。じゅんは、普通にパパニアンとして育ったものの、パパニアン自身に人間(地球人)のような明確な<悪意>はほとんどない。

確かに<イジメ>があったり、ほまれの群れにいたらいのように好ましくない振る舞いをする者もいるのはいるんだが、だがそれすら、

<生きるために必要なこと>

として行われているだけで、その本質自体から<悪>は感じない。

誰かをイジメることでストレスを転嫁しなきゃいけない状態にないひかりあかりまどかひなたは<イジメ>をしないし、じゅんも、ひかりが彼のストレスを受け止めて労ってくれることでやはり<イジメ>を行わないし、<脅威>から自分や家族を守るため以外で攻撃的になることもない。

<悪の概念>が育ってないんだよ。

俺もシモーヌも悪意を向けなかったし、他に悪意を向けてくる者もいないしで、それを学びようがなかったから。

まあ、幼いうちは、小さな虫や小動物を弄んだりして死なせたりもしてたが、それ自体はやっぱり<悪意>じゃなくてあくまで<好奇心の発露>だったしな。

精神的にはまだ幼児と同じまどかひなたはそういう姿も見せつつも、十分に成長したひかりあかりは、今はそういうことはしないんだ。

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