上 下
371 / 2,557
幸せ

因果応報、自業自得(という言葉は、俺は好きじゃない)

しおりを挟む
新暦〇〇二二年十一月八日。



今回、らいが迎えた結末について、俺は、<因果応報>とか<自業自得>という言葉は安易に使いたくなかった。

と言うのも、ここで暮らしてて実感したんだ。

『その結末を招くような原因は確かに作ったかもしれないが、実際にそうなるかどうかは、なってみないと分からない』

ってね。

確かにらいの場合はまさに<因果応報><自業自得>と言える最期を迎えたかもしれないが、これまでに得たデータによると、他の群れで似たようなことが起こった場合、らいと同じようなことをした奴が必ず同じ結末を迎えたかと言うと、実はそうとは限らなかったんだ。

危ういながらも群れをまとめ上げて、しかもボスの座についてから少しずつ鷹揚な態度を見せ始めるようになった例もある。『立場が人を作る』とも言うが、それと似たようなことがボノボ人間パパニアンの社会でも起こるようだ。

それで言うと、今回は、まだたった一ヶ月だった。そこを乗り越えてらいがもしボスに相応しい振る舞いを身に付けて行ったなら、違った結果を招いていたかもしれない。

もちろん既に結果が出てしまった以上、この群れでのケースとしてはそれはただの<たられば>に過ぎない。過ぎないが、現に他の群れではそちらの結末に至った事例も確かにあるんだ。<因果応報>や<自業自得>もなくね。

それはつまり、<因果応報>や<自業自得>なんてもの自体が、フィクションの演出や展開のように必ず起こるものじゃないってことだ。

それに、悪い結果、苦しい結果、厳しい結果を招くのが、<因果応報>や<自業自得>の所為なら、俺の妹の光莉ひかりがあんな最期を迎えなきゃいけなかったのは、何かそういう結果を招く<悪いこと>をしたからだって言うのか?

有り得ない。そんな訳がないじゃないか。あの子があれを発症したのは、まだほんの子供の頃だったんだ。それであんな目に遭わなきゃいけないほどの悪行をしたって言うのか? 子供にできる程度の<悪さ>があれを招いたのなら、この世の人間の殆どが同じ結末を迎えなきゃおかしい筈だ。

でも、現実にはそうじゃない。

<因果応報>や<自業自得>って言葉自体が、ただの憂さ晴らしの為の妄想や願望に過ぎないっていうのを、俺は実感してきたよ。

もしくは、苦しい状況に置かれた人間自身が、自分を納得させる為の<方便>として使うっていうのが本来の使い方なんだろうな。

決して、他人に向かって、

『因果応報だ!』

『自業自得だ!』

って罵るような使い方をする為の言葉じゃないって感じるんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。

ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。

処理中です...