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子供達

使い捨て(ま、代わりはあるからな)

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新暦〇〇〇九年四月二十日。



みずちの件が片付いて一眠りしていた俺は、ガターンッという大きな物音で目が覚めた。ちょうど昼前でそろそろ起きる時間だったから良かったが、まったく、騒々しい。

見れば、家のドアが外れてグラグラと揺れていた。たぶん、子供達が追っかけっこでもして興奮してぶつかったりしたんだろう。見ればほむらの体をさいが撫でていた。その様子は、いつものイチャイチャとは違う印象がある。たぶん、ドアにぶつかったのはほむらで、さいがよしよししてくれてるんだろう。

俺が指示するまでもなくエレクシアがやって来て、ドアをチェックした。

「歪みが許容値を越えてますね。交換します」

と言い放ち、すぐさま予備のドアを持ってきてさっさと付け替えてしまった。

「やれやれ。材料には事欠かないからいくらでも用意できるとは言え、さすがに壊しすぎだな」

かと言って、子供達のこの快活さ、どころかもはや<激しさ>と言った方がいいのか?は野生の世界で生きていくには必要なものだから、人間の基準に押し込める訳にもいかない。ここが人間社会ならそれに適応させる為に<躾>なるものも必要だとしても、ここではむしろ人間の方が異物であって、『郷に入れば郷に従う』必要があるのは俺達の方だからなあ。

だから別に叱ったりもしない。彼らのルールについては結局、母親達の方が詳しいし、他の群れに行った時にそれに即したことを学ばされるだろうから、ほぼ人間と変わらないひかりあかり以外については俺は基本的に口出ししない方針だ。

って、実際には、言っても無駄なのはほまれ達の頃に思い知らされたっていうのが一番だけどな。

怒鳴ろうと殴ろうと、子供達の方が強いからまったく意味がないんだ。それに加えて人間の常識はここではそれこそ通用しない。

で、子供達が家を壊せば黙々と修理するだけだ。

幸い、ドアも窓枠も、ここではそれこそ『腐るほど』手に入る<植物のセルロース>が原料になってるから、コーネリアス号の工作室でどんどん作ってもらってるんだ。

植物を粉砕してそこからセルロースを抽出して薬品と混ぜてレーザーで反応させて固化させると、プラスティックと同等のものになる。純度を高めると透明にもなるし、今あるアクリル製のそれがもし無くなっても代用できる。

そもそも<家>なんてきっちりしたものを作ってそれが壊れたからって気にするのは人間くらいのもんだ。動物が作る<巣>は、何かあったら壊れるのが前提で、それ自体が使い捨てみたいなものだろうからなあ。

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