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<いい人>でいられるわけがない
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『いい金づるじゃねえか! しっかり捉まえとけよ!』
琴美の両親は、臆面もなくそういうことを口にするタイプの人間だった。だから親しくなれるのも、似たような傾向を持つ人間ばかりだった。
世の中には、
『社会に出たら身勝手で強欲な奴ばっかりだから、そんな奴らと仕事するには<いい人>でいられるわけがない』
的なことを言う者がいるが、それは典型的な、
『他人の所為にしている』
『社会の所為にしている』
ではないのか?
自分が身勝手で強欲な人間に染まっていくことを、<他人の所為><社会の所為>にして正当化しようとしてるだけではないのか?
<自分>を貫くこともできないような人間が、よく言えたものだとは思わないのか?
大森夫妻は<自分>を貫いている。身勝手で強欲で悪辣な人間を相手にしても、逆に自分のペースに巻き込んでしまうことであしらってきた。
まあ、それができる時点でただの<いい人>でないことは確かだろう。相手の悪意や下心や狙いというものをきちんと理解してるからこそそれができるのだから。
世の中で言われる<いい人>は、たいていが<都合のいい人>を指すからだ。大森夫妻は、身勝手で強欲で悪辣な人間にとっては<都合のいい人>ではなかった。
それだけの話である。
そう、<強か>なのだ。だから自分を貫くこともできる。<都合のいい人>では、それは叶わない。<都合のいい人>は、他者の都合に流されがちだからだ。
『流される』のではなく『流れを作る』側にいるのが、大森夫妻だとも言える。そしてそんな両親の姿を見て育った海美神も、<流れを作る側>として順調に育っていた。
<他人の所為>にせず、<社会の所為>にせず、自分を貫く。それができる人間に。
そんな彼女を受け入れることができたから、琴美は海美神と親しくなれた。さらにそんな琴美を受け入れることができたから、煌輝は琴美と親しくなれた。
それができない者は、海美神とも琴美とも親しくなれない。
それだけの話なのだ。
だから、自分が海美神や琴美のような人間と親しくなれないのは、<自分自身の所為>だ。<他人の所為>でも<社会の所為>でもない。そのことを認めない限り状況は変わらない。いつまで経っても他人や社会の所為にして、他の誰かを妬み続けるだけの人生を送ることになる。
まあ、海美神も琴美も、別にそこまで考えているわけではないが。そんなことを考えなくても自然とそれができるのだ。それができる者を手本として生きてきたから。
そうこうしているうちに辿り着いた<ケーキ屋>を見て、
「あれ? これって……?」
琴美が呟いたのだった。
琴美の両親は、臆面もなくそういうことを口にするタイプの人間だった。だから親しくなれるのも、似たような傾向を持つ人間ばかりだった。
世の中には、
『社会に出たら身勝手で強欲な奴ばっかりだから、そんな奴らと仕事するには<いい人>でいられるわけがない』
的なことを言う者がいるが、それは典型的な、
『他人の所為にしている』
『社会の所為にしている』
ではないのか?
自分が身勝手で強欲な人間に染まっていくことを、<他人の所為><社会の所為>にして正当化しようとしてるだけではないのか?
<自分>を貫くこともできないような人間が、よく言えたものだとは思わないのか?
大森夫妻は<自分>を貫いている。身勝手で強欲で悪辣な人間を相手にしても、逆に自分のペースに巻き込んでしまうことであしらってきた。
まあ、それができる時点でただの<いい人>でないことは確かだろう。相手の悪意や下心や狙いというものをきちんと理解してるからこそそれができるのだから。
世の中で言われる<いい人>は、たいていが<都合のいい人>を指すからだ。大森夫妻は、身勝手で強欲で悪辣な人間にとっては<都合のいい人>ではなかった。
それだけの話である。
そう、<強か>なのだ。だから自分を貫くこともできる。<都合のいい人>では、それは叶わない。<都合のいい人>は、他者の都合に流されがちだからだ。
『流される』のではなく『流れを作る』側にいるのが、大森夫妻だとも言える。そしてそんな両親の姿を見て育った海美神も、<流れを作る側>として順調に育っていた。
<他人の所為>にせず、<社会の所為>にせず、自分を貫く。それができる人間に。
そんな彼女を受け入れることができたから、琴美は海美神と親しくなれた。さらにそんな琴美を受け入れることができたから、煌輝は琴美と親しくなれた。
それができない者は、海美神とも琴美とも親しくなれない。
それだけの話なのだ。
だから、自分が海美神や琴美のような人間と親しくなれないのは、<自分自身の所為>だ。<他人の所為>でも<社会の所為>でもない。そのことを認めない限り状況は変わらない。いつまで経っても他人や社会の所為にして、他の誰かを妬み続けるだけの人生を送ることになる。
まあ、海美神も琴美も、別にそこまで考えているわけではないが。そんなことを考えなくても自然とそれができるのだ。それができる者を手本として生きてきたから。
そうこうしているうちに辿り着いた<ケーキ屋>を見て、
「あれ? これって……?」
琴美が呟いたのだった。
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