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類は友を呼ぶ
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実際、結人達と大森夫妻および海美神には面識はない。本当にたまたまそれぞれの人生の中で同じような考えを持つに至ったというだけだ。
ただその一方で、大森モータースと、<SANA>の創始者の一人である星谷美嘉とは提携関係にあり、それもあって結人のバモスの改造を依頼することになったのだが、結人はこれについて、
『星谷さんのネットワークの一部らしい』
ということしか知らなかった。なので、<知り合うきっかけ>そのものはないわけでもなかった。なかったが、海美神も琴美もまったく知らずに親交を持つに至った。
ただこれも、海美神が琴美にとって、
『関わってもいいかな』
と思える相手でなければ、それこそただのクラスメイトでしかなく、ほとんど交わることもなかっただろう。海美神の<正しさ>を、
『真面目ぶったウザい奴!』
などと捉えていればどこまでも毛嫌いしていたに違いない。
海美神は別に、自分が信号を守るからといって他の誰かに対しても、
『信号は守らなくちゃいけないよ!』
みたいなことは言わないにも拘らずである。そんなことは言わないのに、勝手に、
『自分だけがルールをちゃんと守る正義の人とか内心じゃ思ってんだろ!』
とか邪推してるのがいるのだ。
だから海美神と深く関われない。<友人>になれない。どこまでも<単なるクラスメイト><単なる顔見知り>で止まってしまう。自身の世界を視界を視野を広げる機会を自ら潰していく。『自分と価値観が合わない』ことで可能性を潰していく。
それだけの話でしかない。
そう、せっかくのチャンスを、自身の狭隘な価値観で摘み取っているのだ。
まさに<自己責任>である。
『類は友を呼ぶ』
という言葉があるが、結局はそういうことなのだろう。すぐ身近に自分にとって有益な者がいても気付かない。知り合えない。親しくなれない。
『自分の周りにはロクな人間がいない!』
などと嘆いていていいのは、自力で世界を広げていくことが難しい子供の内だけだろう。大人になってからも『自分の周りにはロクな人間がいない!』というのなら、それは友が類に呼ばれただけだ。自分自身がその<ロクでもない人間>というだけであろう。
琴美が海美神と親しくなれたのはそれは『琴美だから』であって、煌輝が琴美と親しくなれたのは『煌輝だから』である。他の誰の所為でもない。本人がそれを招いたのだ。
ただ、本来なら親の庇護下にあるはずの琴美の場合、両親が余計なことをしてせっかくの機会を潰してしまうことはあったかも知れない。
海美神について、
『いい金づるじゃねえか! しっかり捉まえとけよ!』
的なことを言われれば、琴美は自ら彼女と距離を置いていただろう。
迷惑をかけないために。
ただその一方で、大森モータースと、<SANA>の創始者の一人である星谷美嘉とは提携関係にあり、それもあって結人のバモスの改造を依頼することになったのだが、結人はこれについて、
『星谷さんのネットワークの一部らしい』
ということしか知らなかった。なので、<知り合うきっかけ>そのものはないわけでもなかった。なかったが、海美神も琴美もまったく知らずに親交を持つに至った。
ただこれも、海美神が琴美にとって、
『関わってもいいかな』
と思える相手でなければ、それこそただのクラスメイトでしかなく、ほとんど交わることもなかっただろう。海美神の<正しさ>を、
『真面目ぶったウザい奴!』
などと捉えていればどこまでも毛嫌いしていたに違いない。
海美神は別に、自分が信号を守るからといって他の誰かに対しても、
『信号は守らなくちゃいけないよ!』
みたいなことは言わないにも拘らずである。そんなことは言わないのに、勝手に、
『自分だけがルールをちゃんと守る正義の人とか内心じゃ思ってんだろ!』
とか邪推してるのがいるのだ。
だから海美神と深く関われない。<友人>になれない。どこまでも<単なるクラスメイト><単なる顔見知り>で止まってしまう。自身の世界を視界を視野を広げる機会を自ら潰していく。『自分と価値観が合わない』ことで可能性を潰していく。
それだけの話でしかない。
そう、せっかくのチャンスを、自身の狭隘な価値観で摘み取っているのだ。
まさに<自己責任>である。
『類は友を呼ぶ』
という言葉があるが、結局はそういうことなのだろう。すぐ身近に自分にとって有益な者がいても気付かない。知り合えない。親しくなれない。
『自分の周りにはロクな人間がいない!』
などと嘆いていていいのは、自力で世界を広げていくことが難しい子供の内だけだろう。大人になってからも『自分の周りにはロクな人間がいない!』というのなら、それは友が類に呼ばれただけだ。自分自身がその<ロクでもない人間>というだけであろう。
琴美が海美神と親しくなれたのはそれは『琴美だから』であって、煌輝が琴美と親しくなれたのは『煌輝だから』である。他の誰の所為でもない。本人がそれを招いたのだ。
ただ、本来なら親の庇護下にあるはずの琴美の場合、両親が余計なことをしてせっかくの機会を潰してしまうことはあったかも知れない。
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『いい金づるじゃねえか! しっかり捉まえとけよ!』
的なことを言われれば、琴美は自ら彼女と距離を置いていただろう。
迷惑をかけないために。
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