ハズレガチャの空きカプセル

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
101 / 108

類は友を呼ぶ

しおりを挟む
 実際、結人ゆうと達と大森夫妻および海美神とりとんには面識はない。本当にたまたまそれぞれの人生の中で同じような考えを持つに至ったというだけだ。
 ただその一方で、大森モータースと、<SANA>の創始者の一人である星谷ひかりたに美嘉みかとは提携関係にあり、それもあって結人のバモスの改造を依頼することになったのだが、結人はこれについて、
『星谷さんのネットワークの一部らしい』
 ということしか知らなかった。なので、<知り合うきっかけ>そのものはないわけでもなかった。なかったが、海美神も琴美もまったく知らずに親交を持つに至った。
 ただこれも、海美神が琴美にとって、
『関わってもいいかな』
 と思える相手でなければ、それこそただのクラスメイトでしかなく、ほとんど交わることもなかっただろう。海美神の<正しさ>を、
『真面目ぶったウザい奴!』
 などと捉えていればどこまでも毛嫌いしていたに違いない。
 海美神は別に、自分が信号を守るからといって他の誰かに対しても、
『信号は守らなくちゃいけないよ!』
 みたいなことは言わないにも拘らずである。そんなことは言わないのに、勝手に、
『自分だけがルールをちゃんと守る正義の人とか内心じゃ思ってんだろ!』
 とか邪推してるのがいるのだ。
 だから海美神と深く関われない。<友人>になれない。どこまでも<単なるクラスメイト><単なる顔見知り>で止まってしまう。自身の世界を視界を視野を広げる機会を自ら潰していく。『自分と価値観が合わない』ことで可能性を潰していく。
 それだけの話でしかない。
 そう、せっかくのチャンスを、自身の狭隘な価値観で摘み取っているのだ。
 まさに<自己責任>である。
『類は友を呼ぶ』
 という言葉があるが、結局はそういうことなのだろう。すぐ身近に自分にとって有益な者がいても気付かない。知り合えない。親しくなれない。
『自分の周りにはロクな人間がいない!』
 などと嘆いていていいのは、自力で世界を広げていくことが難しい子供の内だけだろう。大人になってからも『自分の周りにはロクな人間がいない!』というのなら、それは友が類に呼ばれただけだ。自分自身がその<ロクでもない人間>というだけであろう。
 琴美が海美神と親しくなれたのはそれは『琴美だから』であって、煌輝ふぁんたじあが琴美と親しくなれたのは『煌輝だから』である。他の誰の所為でもない。本人がそれを招いたのだ。
 ただ、本来なら親の庇護下にあるはずの琴美の場合、両親が余計なことをしてせっかくの機会を潰してしまうことはあったかも知れない。
 海美神について、
『いい金づるじゃねえか! しっかり捉まえとけよ!』
 的なことを言われれば、琴美は自ら彼女と距離を置いていただろう。
 迷惑をかけないために。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十
現代文学
古隈明紀(こぐまあきのり)は、四十歳を迎えたある日、妻と娘に捨てられた。元々好きで結婚したわけでもなくただ体裁を繕うためのそれだったことにより妻や娘に対して愛情が抱けず、それに耐えられなくなった妻に三下り半を突き付けられたのだ。 財産分与。慰謝料なし。養育費は月五万円(半分は妻が負担)という条件の一切を呑んで離婚を承諾。独り身となった。ただし、実は会社役員をしていた妻の方が収入が多かったこともあり、実際はコグマに有利な条件だったのだが。妻としても、自分達を愛してもいない夫との暮らしが耐えられなかっただけで、彼に対しては特段の恨みもなかったのである。 こうして、形の上では家族に捨てられることになったコグマはその後、<パパ活>をしていた女子高生、大戸羅美(おおとらみ)を、家に泊めることになる。コグマ自身にはそのつもりはなかったのだが、待ち合わせていた相手にすっぽかされた羅美が強引に上がり込んだのだ。 それをきっかけに、捨てられたおっさんと拾われた(拾わせた)女子高生の奇妙な共同生活が始まったのだった。      筆者より。 中年男が女子高生を拾って罪に問われずに済むのはどういうシチュエーションかを考えるために書いてみます。 なお、あらかじめ明かしておきますが、最後にコグマと大虎はそれぞれ自分の人生を歩むことになります。 コグマは結婚に失敗して心底懲りてるので<そんな関係>にもなりません。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

佳奈子がつづる、四季ごとの ’ ほっこりポエム ’

リチャード・ウイス
現代文学
季節の移り変わり・・美しいです。それとともに、西村佳奈子さんがつくった、心がほっこりする詩を、わたくしリチャードが選者となりご提供いたします。彼女の詩では、ちょっとしたことが、嬉しさや喜びでつづられています。 で、佳奈子さんとは・・だれなの? そうお思いになる方も多くいらっしゃいましょう。彼女は、私 リチャードウイスが書いた小説「それでもあなたは銀行に就職しますか~彰司と佳奈子の勉強会~」に毎回でてくる、入社五年目の銀行OL。素敵な方です。

春秋花壇

春秋花壇
現代文学
小さな頃、家族で短歌を作ってよく遊んだ。とても、楽しいひと時だった。 春秋花壇 春の風に吹かれて舞う花々 色とりどりの花が咲き誇る庭園 陽光が優しく差し込み 心を温かく包む 秋の日差しに照らされて 花々はしおれることなく咲き続ける 紅葉が風に舞い 季節の移ろいを告げる 春の息吹と秋の彩りが 花壇に織りなす詩のよう 時を超えて美しく輝き 永遠の庭園を彩る

第一機動部隊

桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。 祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

処理中です...