44 / 92
私だってなんでこんなに
しおりを挟む
役所に婚姻届と養子縁組届を出して三人で<家>に帰ると、
「おかえり、お母さん」
観音が笑顔でそう言ってくれた。
「……ただいま……」
って応えたけど、そこでまた込み上げちゃってさ。
「なんだよ、お母さんってば、泣き虫だなあ」
笑われちゃった。
「うっさい…! 私だってなんでこんなに泣けてきちゃうのか分かんないんだよ!」
ついそんな風に言っちゃって。
するとそんな私と観音を、彼が、穏やかに見守ってくれてた。
で、それから三ヶ月後、 改めて私と彼と観音の三人だけで結婚式を挙げたんだ。
盛大な 結婚式 なんて要らなかったからね。と言うか、本当は結婚式そのものも要らなかったんだけど、観音がさ、
『お母さんのウエディングドレス姿、見てみたいなぁ』
って言うからさ。『形に拘る』っていうよりも、とにかく観音の要望に応えただけかな。
私と彼が式を挙げたそこは、教会が運営している小さな結婚式場で、私達がしたような小規模な結婚式を専門に執り行っている所だった。
そこで一番安いプランを選んだから、ウェディングドレスも、これまでにも何度もリースされた、最新の流行からは外れたものだったらしいけど、私自身その辺がよく分からなかったし、ドレス選びの時にそこにあったものの中で一番好みに合うシンプルなものを選んで着付けてもらった。
メイクの方も私にとってはすごくて、ここまでの人生の中で一番時間がかかったメイクだったと思う。
それくらい丁寧にしてくれて、鏡を見ると、もう完全に別人だった。私自身が見たことのない私がそこにいた。
だけど、私としてはそれが気恥ずかしくて、まともに見てられなかったけどね。
後から見返したら余裕で<黒歴史>ってのになりそうだなって正直思ったよ。
なんだかいたたまれなくて、
『今からでも中止して逃げ帰りたいな』
って考えてたら、
「お時間です」
って言われて、もう逃げられなくて、正直、十分に覚悟も決められないまま控え室から連れ出されちゃって式場に放り出されちゃった。
祭壇に立つ神父の前には、真っ白なタキシード姿の彼。
『これが馬子にも衣装ってやつかな』
とか思っちゃった。なんかもうバシッと決めちゃっててさ。私のことを優しい目で見てるんだよ。
私の方は 係の女性に促されて<ウエディングロード>?を歩かされて。いやはや、マジで<公開処刑>ってやつだと思った。二度と経験したいとは思わなかったよ。
参列者の席には 観音の姿。そしたらまた、私の ウエディングドレス姿を見た彼女が、
「綺麗だよ、お母さん」
って 。いやいや! 恥ずかしくって死ねるってこんなの!
これって結局、ただの<見世物>だよね!?
私にはそうとしか感じられなかった。
ま、嬉しくなかったわけじゃないけどさ。
「おかえり、お母さん」
観音が笑顔でそう言ってくれた。
「……ただいま……」
って応えたけど、そこでまた込み上げちゃってさ。
「なんだよ、お母さんってば、泣き虫だなあ」
笑われちゃった。
「うっさい…! 私だってなんでこんなに泣けてきちゃうのか分かんないんだよ!」
ついそんな風に言っちゃって。
するとそんな私と観音を、彼が、穏やかに見守ってくれてた。
で、それから三ヶ月後、 改めて私と彼と観音の三人だけで結婚式を挙げたんだ。
盛大な 結婚式 なんて要らなかったからね。と言うか、本当は結婚式そのものも要らなかったんだけど、観音がさ、
『お母さんのウエディングドレス姿、見てみたいなぁ』
って言うからさ。『形に拘る』っていうよりも、とにかく観音の要望に応えただけかな。
私と彼が式を挙げたそこは、教会が運営している小さな結婚式場で、私達がしたような小規模な結婚式を専門に執り行っている所だった。
そこで一番安いプランを選んだから、ウェディングドレスも、これまでにも何度もリースされた、最新の流行からは外れたものだったらしいけど、私自身その辺がよく分からなかったし、ドレス選びの時にそこにあったものの中で一番好みに合うシンプルなものを選んで着付けてもらった。
メイクの方も私にとってはすごくて、ここまでの人生の中で一番時間がかかったメイクだったと思う。
それくらい丁寧にしてくれて、鏡を見ると、もう完全に別人だった。私自身が見たことのない私がそこにいた。
だけど、私としてはそれが気恥ずかしくて、まともに見てられなかったけどね。
後から見返したら余裕で<黒歴史>ってのになりそうだなって正直思ったよ。
なんだかいたたまれなくて、
『今からでも中止して逃げ帰りたいな』
って考えてたら、
「お時間です」
って言われて、もう逃げられなくて、正直、十分に覚悟も決められないまま控え室から連れ出されちゃって式場に放り出されちゃった。
祭壇に立つ神父の前には、真っ白なタキシード姿の彼。
『これが馬子にも衣装ってやつかな』
とか思っちゃった。なんかもうバシッと決めちゃっててさ。私のことを優しい目で見てるんだよ。
私の方は 係の女性に促されて<ウエディングロード>?を歩かされて。いやはや、マジで<公開処刑>ってやつだと思った。二度と経験したいとは思わなかったよ。
参列者の席には 観音の姿。そしたらまた、私の ウエディングドレス姿を見た彼女が、
「綺麗だよ、お母さん」
って 。いやいや! 恥ずかしくって死ねるってこんなの!
これって結局、ただの<見世物>だよね!?
私にはそうとしか感じられなかった。
ま、嬉しくなかったわけじゃないけどさ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鬼母(おにばば)日記
歌あそべ
現代文学
ひろしの母は、ひろしのために母親らしいことは何もしなかった。
そんな駄目な母親は、やがてひろしとひろしの妻となった私を悩ます鬼母(おにばば)に(?)
鬼母(おにばば)と暮らした日々を綴った日記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる