22 / 92
好きな人と一緒にいたいって、おかしい?
しおりを挟む
「あはは♡」
「ふふふ♡」
田舎暮らしの可愛い女の子達の楽しげな日常を描いたアニメは、とても晴れ晴れとした気持ちにさせてくれる。
『私達もこうだったらな……』ってつい思ってしまうけど、ううん。私はたぶん、今、十分に幸せだと思う。
「ねえ、観音は今、幸せ?」
配信のだけどCMが入るそれだから、CMの間にふとそんなことを尋ねてしまう。すると彼女は、
「う~ん、幸せか不幸かって言ったら、まあ幸せ寄りなんじゃないかな」
って答えてくれた。その上で、
「何だかんだで自分の才能のなさには絶望させられたりもするけど、落ち込んだりもするけど、でも、今日も先生に『伝えたいものがちゃんと伝わってくるいい絵だね』って褒められたんだ。だから諦めずに努力してて良かったって思った」
とも。
彼女は今、ゲームのキャラクターデザインの仕事を目指して、キャラクターデザインを学べる美大に通ってる。何もかも全部自分で手続きして。私は、保護者として必要な書類を用意しただけだ。学費も、奨学金を受けて自分で返すって。
本人がそれだけの覚悟を持ってすることに対して私が何か口出しするのはたぶん違うと思う。
普段の生活は、私の収入と観音のバイト料だけで賄うようにして、ダンナの保険金については、固定資産税とかを払うために使ってる。
現金資産の大半は、相続税の支払いに消えたからね。
世知辛いけど、仕方ない。この家が残っただけでもありがたいよ。
ただ、本音を言わせてもらうと、女二人だけで暮らすには、少々、大きすぎるかな、とは、思う。
私と観音は、ほとんどリビングと寝室しか使ってないし。
私達には、それ以上、必要ないんだ。
ダンナが生きていた頃から、こうだった。
寝室こそ、観音は別にしてたけど、起きてる間はずっと三人でリビングで過ごしてて。それすら、ダンナの癌が判明してからは、観音が私達と一緒の部屋で寝ることを望んでそうすることになって……
私達は、ずっと一緒の時間を過ごすのが苦痛な関係じゃなかった。
むしろ一緒にいる方が安心した。
ダンナは仕事をして、観音はパソコンでアニメを見て、私は本を読んでって、それぞれ勝手なことをしてるんだけど、お互いの気配がそこにあること自体が心地好くてさ。
観音なんて、ダンナと私が結婚した時なんか、十三歳だよ? 中学一年生。普通なら親とか鬱陶しがって自分の部屋にこもりそうなものだけど、全然そんなことなくて。
「平気なの?」
って私が訊いたら、
「平気だよ。でもなんで? 私、お父さんもお母さんも好きだよ? 好きな人と一緒にいたいって、おかしい?」
って逆に訊かれたりもしたな。
「ふふふ♡」
田舎暮らしの可愛い女の子達の楽しげな日常を描いたアニメは、とても晴れ晴れとした気持ちにさせてくれる。
『私達もこうだったらな……』ってつい思ってしまうけど、ううん。私はたぶん、今、十分に幸せだと思う。
「ねえ、観音は今、幸せ?」
配信のだけどCMが入るそれだから、CMの間にふとそんなことを尋ねてしまう。すると彼女は、
「う~ん、幸せか不幸かって言ったら、まあ幸せ寄りなんじゃないかな」
って答えてくれた。その上で、
「何だかんだで自分の才能のなさには絶望させられたりもするけど、落ち込んだりもするけど、でも、今日も先生に『伝えたいものがちゃんと伝わってくるいい絵だね』って褒められたんだ。だから諦めずに努力してて良かったって思った」
とも。
彼女は今、ゲームのキャラクターデザインの仕事を目指して、キャラクターデザインを学べる美大に通ってる。何もかも全部自分で手続きして。私は、保護者として必要な書類を用意しただけだ。学費も、奨学金を受けて自分で返すって。
本人がそれだけの覚悟を持ってすることに対して私が何か口出しするのはたぶん違うと思う。
普段の生活は、私の収入と観音のバイト料だけで賄うようにして、ダンナの保険金については、固定資産税とかを払うために使ってる。
現金資産の大半は、相続税の支払いに消えたからね。
世知辛いけど、仕方ない。この家が残っただけでもありがたいよ。
ただ、本音を言わせてもらうと、女二人だけで暮らすには、少々、大きすぎるかな、とは、思う。
私と観音は、ほとんどリビングと寝室しか使ってないし。
私達には、それ以上、必要ないんだ。
ダンナが生きていた頃から、こうだった。
寝室こそ、観音は別にしてたけど、起きてる間はずっと三人でリビングで過ごしてて。それすら、ダンナの癌が判明してからは、観音が私達と一緒の部屋で寝ることを望んでそうすることになって……
私達は、ずっと一緒の時間を過ごすのが苦痛な関係じゃなかった。
むしろ一緒にいる方が安心した。
ダンナは仕事をして、観音はパソコンでアニメを見て、私は本を読んでって、それぞれ勝手なことをしてるんだけど、お互いの気配がそこにあること自体が心地好くてさ。
観音なんて、ダンナと私が結婚した時なんか、十三歳だよ? 中学一年生。普通なら親とか鬱陶しがって自分の部屋にこもりそうなものだけど、全然そんなことなくて。
「平気なの?」
って私が訊いたら、
「平気だよ。でもなんで? 私、お父さんもお母さんも好きだよ? 好きな人と一緒にいたいって、おかしい?」
って逆に訊かれたりもしたな。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる