23 / 92
そんな風に思った以上は
しおりを挟む
夜の十二時をまわり日付も変わったけど、私と観音は、そのままアニメを楽しんでいた。
それと同時にふと昔のことを思い出す。
観音が私の務める保育園に預けられていたのをいいことに、卒園してからも家にまで押し掛けたことを、『気持ち悪い』とか『ストーカーだ』とか言う人もいると思う。
だけど私は嫌がられてまで強引に迫るつもりはなかったよ。
それが出来たのは、それだけ私が観音に信頼されていたという証拠だという自負もある。
私はね、園の子供達も、みんな、<人間以外の動物>としてじゃなく、<人間>として接することを心掛けてたんだ。
だから頭ごなしに怒鳴ることはしないようにしてたし、話しかけてきたらその言葉には耳を傾けるように気をつけてた。
もちろん、何人もの子供を同時に相手しないといけなかったから全然完璧じゃなかったとは思うけど、自分が相手の言葉を聞かないのに、自分のことを相手に聞かせようなんてことはしないように心掛けてた。
だってほら、話も聞いてくれない相手の話とか聞きたくないでしょう? 自分がそうなのに他人には一方的に言うことを聞かせようって、やっぱりおかしいと思うしさ。
だからまあ、割りと一方的に命令するタイプの保育士さんよりは素直に言うことを聞いてくれる子が多かったとは思うかな。
自分が子供だった頃は一方的に頭ごなしに言ってくる相手は好きじゃなかったのに、自分がいざ大人の立場になると、手っ取り早く命令して言うことを聞かせようとするようになるのは、どうしてなんだろうね。
私はそれはおかしいと思うんだよ。自分はそんな大人の言うことを素直には聞きたくなかった。だったら自分がそんなの大人になっちゃったら、子供が言うことを聞いてくれなくても当たり前なんじゃないかな。
どうして、自分が『言うことなんか聞きたくない』って思った大人になって、それで子供が素直に言うことを聞いてくれると、言うことを聞くべきだと思えるのか、私には分からない。
なんて思った以上は、そうならないように努力するのは当然なんじゃないのかな。それを『仕方ない』って言って改めようとしないのは、<甘え>以外のなんだって言うんだろう。
そうして私は、<自分が言うことを聞きたくなかった大人>に自分がなってしまわないように努力したんだ。
もちろん、全部の園児に好かれたわけじゃないけど、少なくとも『私の言うことを誰も聞いてくれなくて困った』なんてことはなかったな。
私の仕事上のストレスは、結局、他の職員との人間関係や、園児の保護者についてだったよ。園児に対してのストレスはそんなになかったと思う。
それと同時にふと昔のことを思い出す。
観音が私の務める保育園に預けられていたのをいいことに、卒園してからも家にまで押し掛けたことを、『気持ち悪い』とか『ストーカーだ』とか言う人もいると思う。
だけど私は嫌がられてまで強引に迫るつもりはなかったよ。
それが出来たのは、それだけ私が観音に信頼されていたという証拠だという自負もある。
私はね、園の子供達も、みんな、<人間以外の動物>としてじゃなく、<人間>として接することを心掛けてたんだ。
だから頭ごなしに怒鳴ることはしないようにしてたし、話しかけてきたらその言葉には耳を傾けるように気をつけてた。
もちろん、何人もの子供を同時に相手しないといけなかったから全然完璧じゃなかったとは思うけど、自分が相手の言葉を聞かないのに、自分のことを相手に聞かせようなんてことはしないように心掛けてた。
だってほら、話も聞いてくれない相手の話とか聞きたくないでしょう? 自分がそうなのに他人には一方的に言うことを聞かせようって、やっぱりおかしいと思うしさ。
だからまあ、割りと一方的に命令するタイプの保育士さんよりは素直に言うことを聞いてくれる子が多かったとは思うかな。
自分が子供だった頃は一方的に頭ごなしに言ってくる相手は好きじゃなかったのに、自分がいざ大人の立場になると、手っ取り早く命令して言うことを聞かせようとするようになるのは、どうしてなんだろうね。
私はそれはおかしいと思うんだよ。自分はそんな大人の言うことを素直には聞きたくなかった。だったら自分がそんなの大人になっちゃったら、子供が言うことを聞いてくれなくても当たり前なんじゃないかな。
どうして、自分が『言うことなんか聞きたくない』って思った大人になって、それで子供が素直に言うことを聞いてくれると、言うことを聞くべきだと思えるのか、私には分からない。
なんて思った以上は、そうならないように努力するのは当然なんじゃないのかな。それを『仕方ない』って言って改めようとしないのは、<甘え>以外のなんだって言うんだろう。
そうして私は、<自分が言うことを聞きたくなかった大人>に自分がなってしまわないように努力したんだ。
もちろん、全部の園児に好かれたわけじゃないけど、少なくとも『私の言うことを誰も聞いてくれなくて困った』なんてことはなかったな。
私の仕事上のストレスは、結局、他の職員との人間関係や、園児の保護者についてだったよ。園児に対してのストレスはそんなになかったと思う。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる