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そんな風に思った以上は

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夜の十二時をまわり日付も変わったけど、私と観音かのんは、そのままアニメを楽しんでいた。

それと同時にふと昔のことを思い出す。

観音かのんが私の務める保育園に預けられていたのをいいことに、卒園してからも家にまで押し掛けたことを、『気持ち悪い』とか『ストーカーだ』とか言う人もいると思う。

だけど私は嫌がられてまで強引に迫るつもりはなかったよ。

それが出来たのは、それだけ私が観音かのんに信頼されていたという証拠だという自負もある。

私はね、園の子供達も、みんな、<人間以外の動物>としてじゃなく、<人間>として接することを心掛けてたんだ。

だから頭ごなしに怒鳴ることはしないようにしてたし、話しかけてきたらその言葉には耳を傾けるように気をつけてた。

もちろん、何人もの子供を同時に相手しないといけなかったから全然完璧じゃなかったとは思うけど、自分が相手の言葉を聞かないのに、自分のことを相手に聞かせようなんてことはしないように心掛けてた。

だってほら、話も聞いてくれない相手の話とか聞きたくないでしょう? 自分がそうなのに他人には一方的に言うことを聞かせようって、やっぱりおかしいと思うしさ。

だからまあ、割りと一方的に命令するタイプの保育士さんよりは素直に言うことを聞いてくれる子が多かったとは思うかな。

自分が子供だった頃は一方的に頭ごなしに言ってくる相手は好きじゃなかったのに、自分がいざ大人の立場になると、手っ取り早く命令して言うことを聞かせようとするようになるのは、どうしてなんだろうね。

私はそれはおかしいと思うんだよ。自分はそんな大人の言うことを素直には聞きたくなかった。だったら自分がそんなの大人になっちゃったら、子供が言うことを聞いてくれなくても当たり前なんじゃないかな。

どうして、自分が『言うことなんか聞きたくない』って思った大人になって、それで子供が素直に言うことを聞いてくれると、言うことを聞くべきだと思えるのか、私には分からない。

なんて思った以上は、そうならないように努力するのは当然なんじゃないのかな。それを『仕方ない』って言って改めようとしないのは、<甘え>以外のなんだって言うんだろう。

そうして私は、<自分が言うことを聞きたくなかった大人>に自分がなってしまわないように努力したんだ。

もちろん、全部の園児に好かれたわけじゃないけど、少なくとも『私の言うことを誰も聞いてくれなくて困った』なんてことはなかったな。

私の仕事上のストレスは、結局、他の職員との人間関係や、園児の保護者についてだったよ。園児に対してのストレスはそんなになかったと思う。

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