425 / 804
ロボット忍者、アリシアの街角忍法帳
岩丸ゆかり、不機嫌になる
しおりを挟む
こうして<メイトギアショー>の会場での捜索が進む中、千堂アリシアは夜の街を散策していた。
『華やかな街ですね。ただ、本当に緑が少ない』
情報としては持っていたものの、JAPAN-2と比べても本当に緑が少ないことに、アリシアは妙な関心をしていた。JAPAN-2も実は決して『緑が多い』部類には入らないものの、街路樹はすべての道路に植えられ、生垣を塀代わりに用いている建築物も多く公園も至る所にあって、どこにいても緑は目に止まるのだ。
が、ここ、ニューオクラホマの中心部付近には、街路樹さえまばらである。開発当初から、緑地は緑地でまとめて、街中は、オフィス内に観賞植物を飾ったり、スクリーンに自然の風景を映し出す程度でよいと当時は考えられていたらしい。だから、外壁に埋め込まれたスクリーンに自然の風景を映しているビルも多い。
とは言え、やはりそれだと何かが違うのだ。さりとて、初めは宇宙服なしでは人間が生存することさえできなかった火星に、せめてもの癒しとして大型スクリーンで地球の自然を映し出したことがはじまりとなっているその手法を『火星特有の文化である』と考えている者もいるという。なので、頭ごなしに否定するのも違うのかもしれない。
いずれにせよ、その独特の雰囲気が、アリシアには新鮮に思えた。データとしては知っていても、
『実際にこうして目にするのとはやはり違いますね……』
そんな風にも思う。
一方、同じ頃、岩丸ゆかりも、街の中を歩いていた。
『なんであれが売ってないのよ…! ニューオクラホマ産じゃなかったの……!?』
そんなことを考えながら不機嫌そうにのしのしと歩道を進む。
彼女の言う<あれ>とは、ゆかりお気に入りのスナック菓子であった。彼女はそれを一日一回食べないと機嫌が悪くなるという癖があった。
しっかりとした甘み旨味がありながら低カロリーで、
『<夜のおやつ>にピッタリ!』
と宣伝されているものだった。それを製造している製菓会社とその工場がニューオクラホマにあり、彼女はニューオクラホマであればてっきりどこにでも売っているものだと思っていたのだ。
が、それは彼女の勘違いである。アメリカ由来のニューオクラホマの住人達は、確かに健康志向の者達であれば低カロリーの食品を意識して選ぶものの、全体としての傾向は、
<高カロリーかつ食べ応えのあるもの>
を好み、決して主力商品になるようなものではなかったのだ。ゆえに、それなりに商品の数を揃えている店舗でないと置いておらず、安ホテルの売店程度では、置いていないところも多かったのだった。
『華やかな街ですね。ただ、本当に緑が少ない』
情報としては持っていたものの、JAPAN-2と比べても本当に緑が少ないことに、アリシアは妙な関心をしていた。JAPAN-2も実は決して『緑が多い』部類には入らないものの、街路樹はすべての道路に植えられ、生垣を塀代わりに用いている建築物も多く公園も至る所にあって、どこにいても緑は目に止まるのだ。
が、ここ、ニューオクラホマの中心部付近には、街路樹さえまばらである。開発当初から、緑地は緑地でまとめて、街中は、オフィス内に観賞植物を飾ったり、スクリーンに自然の風景を映し出す程度でよいと当時は考えられていたらしい。だから、外壁に埋め込まれたスクリーンに自然の風景を映しているビルも多い。
とは言え、やはりそれだと何かが違うのだ。さりとて、初めは宇宙服なしでは人間が生存することさえできなかった火星に、せめてもの癒しとして大型スクリーンで地球の自然を映し出したことがはじまりとなっているその手法を『火星特有の文化である』と考えている者もいるという。なので、頭ごなしに否定するのも違うのかもしれない。
いずれにせよ、その独特の雰囲気が、アリシアには新鮮に思えた。データとしては知っていても、
『実際にこうして目にするのとはやはり違いますね……』
そんな風にも思う。
一方、同じ頃、岩丸ゆかりも、街の中を歩いていた。
『なんであれが売ってないのよ…! ニューオクラホマ産じゃなかったの……!?』
そんなことを考えながら不機嫌そうにのしのしと歩道を進む。
彼女の言う<あれ>とは、ゆかりお気に入りのスナック菓子であった。彼女はそれを一日一回食べないと機嫌が悪くなるという癖があった。
しっかりとした甘み旨味がありながら低カロリーで、
『<夜のおやつ>にピッタリ!』
と宣伝されているものだった。それを製造している製菓会社とその工場がニューオクラホマにあり、彼女はニューオクラホマであればてっきりどこにでも売っているものだと思っていたのだ。
が、それは彼女の勘違いである。アメリカ由来のニューオクラホマの住人達は、確かに健康志向の者達であれば低カロリーの食品を意識して選ぶものの、全体としての傾向は、
<高カロリーかつ食べ応えのあるもの>
を好み、決して主力商品になるようなものではなかったのだ。ゆえに、それなりに商品の数を揃えている店舗でないと置いておらず、安ホテルの売店程度では、置いていないところも多かったのだった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~
オイシイオコメ
SF
75歳のおじいさん「ひろし」は思いもよらず、人気VRゲームの世界に足を踏み入れた。おすすめされた種族や職業はまったく理解できず「無職」を選び、さらに操作ミスで物理攻撃力に全振りしたおじいさんはVR世界で出会った仲間たちと大冒険を繰り広げる。
この作品は、小説家になろう様とカクヨム様に2021年執筆した「VRおじいちゃん」と「VRおばあちゃん」を統合した作品です。
前作品は同僚や友人の意見も取り入れて書いておりましたが、今回は自分の意向のみで修正させていただいたリニューアル作品です。
(小説中のダッシュ表記につきまして)
作品公開時、一部のスマートフォンで文字化けするとのご報告を頂き、ダッシュ2本のかわりに「ー」を使用しております。
望郷の満月
とまと屋
SF
祖父が死んだ。
わけあって長く会いに行けなかった私は、長期休暇を利用して祖父が過ごしていた廃街を訪れる。
そこで私は、祖父がどうして滅びゆく町にこだわっていたのかを知る。
昨年、秋をテーマにしたコンテスト用に書き始めたものの、グダってしまった作品をなんとか完成させて供養です。
憲法改正と自殺薬
会川 明
SF
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とはいっさい関係ありません。
憲法改正後の日本、国家による自殺薬の配布から十数年が経った。
斉藤寛と楠瀬ツキミは幼なじみだ。
二人は仲睦まじく育った。
しかし、二人の終わりは唐突にやって来る。
攻撃と確率にステ振りしていたら最強になりました
りっくり
SF
〜あらすじ〜
ゲーム知識ゼロの日比谷悠斗(ヒビト)が友達の成瀬友哉(トモ)に誘われて、ゲーム《グレイド・リヴァー・オンライン》を始めることになったのだが、トモはお母さんの機嫌が悪いから今日はプレイできないと言い出します。
ヒビトは仕方なく一人でゲームをすると決心し、下調べをせずゲームプレイを行います。
ゲームを始めてすぐにヒビトは美人プレイヤー月城玲奈(ツキナ)に最初に出会い、いろいろな情報を教えてもらいながらプレイをすることになります。そしてツキナはヒビトを見たときから一目ぼれをしてしまったみたいで、リアル情報を教えて欲しいという無理なお願いを了承してくれます。
リアル情報をお互いに交換して、親睦を深めた二人はフィールドに行きレベ上げを行うことに……。
魔法犯罪の真実
水山 蓮司
SF
~魔法犯罪~
現代社会において数多くの技術が発展し、人々の日常生活を支えているネットワーク。
そのネットワークと共に少しずつ人類にも変化が見られてきている。
生まれながらにして天性の才能で幼少期から使える人がいれば、数か月から数十年と個人の能力によって体得する人がいるといわれる『魔法』である。
その魔法によって人間にとって更に新しく促進していき技術を編み出していこうと前向きに考える人がいる一方、これを異なる方法で用いて利益を得ようと悪用して犯罪を企む組織や集団がいるこの現代社会である。
その犯罪を未然に防ぐために、警視庁の最高位である警視総監が独立組織を設立して選抜されし者がその犯罪に立ち向かう。
あらゆる犯罪に立ち向かう中には、文字通り命懸けの任務が含まれているが、それをものともせずこなしていく精鋭を揃えて事件を一掃していく。
人々にも様々な力が備わり多方面で作用し、一層目まぐるしく変化する世界の中で今、日常で起こる犯罪、魔法によって起こる犯罪、その両局面で巻き起こる犯罪の追求、精鋭メンバーが織りなす心理追求アクションがここに開幕する。
フォルスマキナの福音
れく
SF
いじめられていた主人公・時風航汰はある日、夜の学校に呼び出され、そこで現実とは思えない光景を見てしまう。近未来の七賀戸町で起こる機械生命体と突然変異種との戦い。
※処女作「幽霊巫女の噂」と同一舞台・近未来設定のお話です。
宇宙狂時代~SF宝島~
万卜人
SF
遥か未来、「地球」は伝説の星となっていた。地球には宇宙最大の「宝」が眠るという伝説が広まっていた。そんな時代、「原型」の少年、ジムはスクラップの山から宇宙船を発見する。その宇宙船にはキャシーという女の子が百年の眠りについていた。
そのキャシーを狙う宇宙海賊シルバー。はたして伝説の星「地球」に眠る宝とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる